春、君が消えて、アイツに惹かれた

 
 髪が真っ白だ。鏡を見ながら、手で粉を落とす。飯田先生が撫でてくれたことが頭によぎる。相談しようかな。でも急がしかったら迷惑だよな。
 肩まである黒髪を整えて、耳にかける。

 顔は粉がついていなかった。チャイムが鳴った。慌てて教室に戻る。

 嫌な予感がして、移動教室を終えた俺は下駄箱に行く。
「うげ!」
 スニーカーの中にミミズがいた。気持ち悪い! 中庭に行って、ミミズを逃がす。
『二度あることは三度ある』なんて言葉が頭を過る。三回で終わるのか?

 ロッカーの隙間に紙が挟んである。取ったら『死ね』と書かれていた。胸糞悪い。
 教室の椅子の上に『金魚のふん』と書かれた紙が貼ってある。紙を剥がして、ゴミ箱に放り込む。
 
 体育の授業が終わったら、制服が盗まれていた。
「窃盗じゃねぇか」
 俺の机の中を探しながら、奏は苦虫を噛み潰す。
「廊下見てくる」
 そう言って、俺はトイレに走った。奏は前便器に体操着があったって言っていたから、もしかしたら。ダメだ、どこのトイレにもない。
 久遠の鞄の中? でも久遠って俺のこと嫌いなんだよな。それなのに鞄の中にしまうのか? 

「はあ」

 スニーカーを履いて、中庭を見に行く。ここにもない。後見ていないのはウサギ小屋か。まさか。嫌な想像が頭を過る。ウサギ小屋まで走った。
 ウサギ小屋の奥に、糞まみれの制服があった。
「うえっ」
 奇麗に、皺ひとつ作らないで畳んだはずのそれは、ぐしゃぐしゃでありとあらゆるところから汚い匂いがする。