春、君が消えて、アイツに惹かれた


 六月だ。久遠達が停学になって一か月が経った。

「久遠達が学校来るのって、今日だよな」
 鞄を机に置いてから、奏と言葉を交わす。

「今朝会った。バスケ部退部すんだって」
 よかった。
「それなら安心」
「な。やっと平和だ」
 奏とハイタッチをする。

 ドアが開いて、飯田先生が教室に入ってくる。
「おはよ。いずがもう二度と部活休むなって言ってたから、守れよ?」
 飯田先生が奏を見ながら言う。
「はい!」
 奏の声が響く。
 飯田先生の顔が見れない。下を向いて授業の用意をする。

「留喜ちゃーん」
「え? なんですかそれ!」
 ちゃん付け? 思わず顔を上げる。
「お、反応した。おはよう」
「おはようございます」
 声が小さくなってしまう。
「ちっちぇ」
 教卓の前に行って、飯田先生はホームルームを始める。

 なんだよ、留喜ちゃんって。

「やたら仲良くなったよなー」
 ホームルームが終わると、奏はそんなことを言いながら教室を出る。一限は移動教室だ。

「誰が」
「お前と飯田先生」
「仲良くないし。からかわれてるだけ」
 否定してから教室を出る。
 にやっと奏は笑う。
「その割によくお菓子もらってんじゃん」
「あれは俺を元気づけようとやってくれてるだけ」
 顔が熱くなる。

「毎日?」
「うるさい! 先行くから!」
 教室について、ドアを開けた。教室について、ドアを開けた。その瞬間、頭に何かが降ってくる。
「ケホケホ!」
 白い粉が舞って咳き込む。黒板消しだ。

「え、留喜? 大丈夫か」
「うん。誰が」
 あ。思い当たる奴が独りだけいる。

 奏が振り向いて、辺りを見る。

「久遠どこ行った」

「復讐か。性格悪」

 思わず呟く。やっと大人しくなったと思ったのに。

「首絞めてやりたい」

 物騒なことを言ってしまう。

「俺はなぶり殺してやりてぇ。留喜、チャイム鳴る前に落としてくれば?」

「そうする」

 教科書を奏に預けて、走ってトイレに行く。