チョコレートに想いを込めた春、君が消えた


 学校に着くと、クラス表を飯田先生から渡された。国語担当だ。髪は黒くて短い。スーツがよく似合っている。

「おはよう、日高。不登校にならなくてよかった」

「なりませんよ」

 始業式なんて、出る意味ない。和哉がいないと退屈だし。でも犯人の手がかりを見つけられるかも。

 クラス表に目を通す。和哉は何組だ。手から力が抜けて、紙を落とす。だから、いないんだって。

「一組なの? 俺二組なんだけど」
「僕も一組!」
「うっそ、俺だけ離れてるし」

 大勢の同級生が、わあわあ騒いで教室に向かっていく。踏まれてシワができたそれを、下駄箱のそばのゴミ箱に、飯田先生は捨てる。

「日高、大丈夫か?」

 新しいクラス表を飯田先生が渡してくれる。

「あ、すみません」

 手が震えてしまう。寒い。雪山の中にいるみたいだ。

「保健室行くか? 落ち着いたら教室行けばいいから」

 顔色が悪かったのかもしれない。

「いや。歩けます」

「はぁ。強がるなよ、泣きたいなら泣け」

 背中を撫でられてしまう。涙腺が緩む。さっき、泣き止んだばかりだから。

「誰がこんなとこで……うぅ、なんで、かずはここにいない、去年は隣にいて、ルルって」

 飯田先生が俺の涙を拭ってくれる。

「そうだな。よく来たな、本当に。お前は偉いよ」

 廊下を見ながら、飯田先生の服を掴む。

「……何でみんな笑ってんだ、他殺なのに」

「お前みたいなのもいる、少ないけど」

 俺は顔を上げる。

「何で学校、休校になんないんです」

「生徒は野間だけじゃないから。カメラの設置と見回りの強化で再発を塞ぐそうだ」

 野間は和哉の名字だ。

「死んでから強化すんなよ」 

 つい本音が漏れる。
 生き返らないんだよ。

「そうだな。教室行けるか? お前、俺のクラスだけど」

 クラス表を指差して、飯田先生は首をかしげる。

「はい。でもちょっと、どこかで休みます」

「あまり思い詰めるな」

「無理だ、そんなの」 

 掠れた声で呟く。飯田先生は雑に頭を撫でてくれる。