春、君が消えて、アイツに惹かれた

「留喜、あいつら追う?」

 奏が小声で聞いてくる。

「そうするに決まってる」
 
 五◯六号室に、久遠達は入っていく。

「何してるかわかんない」

 ドアの中央にあるガラスから、中を覗き込む。

「え? 留喜、あいつらリュック持ってない?」

 奏が呟いてしまう。なんだって? カメラに映っていたのと同じのか?

「え、どこに映って。あっ」

 丸いソファの上に白と赤と黒のリュックが置いてある。

 奏の手を引いて、俺は自分達のカラオケルームに行く。


「奏、あれどれが誰のかわかる?」

 部屋に入ってから、俺は尋ねる。ソファに座って、奏は考えこむ。


「たぶん赤が久遠……久遠、ペンケースとかも赤だった」

 カメラに映っていたのは赤ではない。久遠が友達のリュックを借りてやった?

「ありがと。カメラに映ってたのって紺色なんだよな」

 カラオケルームに紺色のはなかった。久遠達じゃない? いやそう考えるのは早計か。リュックを何個も持っているやつもいるし。わざと違うのを持ってきているのかも。

「紺って誰が好きだったんだ? 思い出せない」

「スニーカーとリュックの色同じ奴いない?」

 奏を見ながら言う。その可能性はあるよな。

「いるかもしんない。明日学校で調べる」

 目を合わせて頷き合ってから、俺と奏はカラオケルームを出る。

「あの三人、また喫煙所いる」

「録画して泉に教えるか」

 スマホを取り出して、奏はカメラを起動する。

 久遠がドアの方を見る。

 ドアが開いてしまった。

「おい、なに撮ってんだクズ」

 久遠が奏の手を掴んでしまう。修一や秀樹も俺達のそばに来る。

「退部しろ、久遠。泉に慕われてて、バスケも上手い奏と部内でいじめをしたりサボりを何度かしたりしてるお前じゃ、どっちが信用されるかわかるだろ」

 久遠の手を奏から離れさせる。カメラを止めて、奏は俺の後ろに隠れる。

「あぁ? 調子のんなよ、金魚のふんが」

 久遠が俺の胸ぐらを掴む。

「そっちこそ一人じゃ大したこともできないくせに威張るな!」

 久遠の手を振り解いた。

「久遠、動画消してもらわないと」

「わかってんだよ!!」

 久遠が俺の手を掴む。

「こっち来いよ、日高。遊ぼうぜ」

「お前が日高って呼ぶな、クズ」

 久遠を睨んでから、後をついていく。