春、君が消えて、アイツに惹かれた

「じゃあ奏はエースになれるはずだったのに久遠に譲ったのか?」
「そ。話し合いしてた時期に久遠が俺の靴を隠したり体操着を便器に突っ込んだりするようになって。部活行けなくなって、当分はガリアと遊んでた。そしたら和哉が家に尋ねて来てくれたんだ」

 やっていることが陰湿すぎる。

「和哉は何で気づいて」
「体育館で着替えてる時、俺が震えてたから」
 そういうのは気づきそうだな、和哉は周りをよく見ているから。

 泉先生が貸してくれた水筒を開けて、奏はホットコーヒーを飲む。

「話してくれてありがと」
「あぁ。久遠何か言ってた?」
「言ってたんだけど、閉じ込めの犯人かはわかんない」

 首を振ってから俺は下を向く。

「何かあったのか?」
「久遠が、奏と泉先生ができてるって」
 目を見開いて、奏は勢いよくむせる。
「ゴホゴホ! は? 意味わかんねぇ」
 奏の顔が真っ赤だ。

「俺もわかんない。その水筒が泉のだから言ってて」
「ああ、すげー飛躍してるじゃん。泉が俺なんか相手にするわけないのに」

 ん? 奏の言葉がひっかかる。

「奏、その言い方は」
「あっ! んー俺泉好きなんだよ。尊敬してる。あと、少しそういう目で見てる」
 奏は慌てて口を抑えて、下を向く。
 恋愛感情があったのか。
「そうなんだ」
 すぐに顔を上げて、奏は大きな声で突っ込む。

「やっ、恋人にしたいわけじゃねぇよ? ただ気になるっていうか……優しいし」
「うん、わかってる」
 頷いて、俺は立ち上がる。鞄を肩にかけた。

「帰るのか?」
「うん。ちゃんと寝てて。久遠のことはもう少し調べとくから」
「ありがと、また明日」
 奏に手を振って、俺は家に帰った。