チョコレートに想いを込めた春、君が消えた


 翌日、奏は学校に来なかった。ホームルーム前に、風邪を引いたと連絡が来る。ロッカーの暗証番号と写真に映っている久遠の特徴も一緒に送られてきた。
 昼休みになったので、奏のロッカーを開けて写真を確認する。

 がたいの良い坊主の男が奏を殴っていて、他の二人が奏の手足を掴んでいる。坊主が久遠か。奏が送ってきた内容と特徴が一致する。写真をポケットにしまって、ロッカーを閉める。

 尾行は放課後からすればいい。お昼、誰と一緒に食べよう。奏大丈夫かなあ。電話を掛けたくなった。身体に障るといけないからやめとくか。

 教室に戻って、鞄からお弁当袋と水筒を取り出す。
 一人で食べるのは寂しい。でも、奏以外に仲良くなったクラスメイトいないんだよな。
 教室を出て、屋上に繋がる非常階段に向かう。階段に座って、お弁当が包んであるナプキンをほどく。
 お弁当は本当に兄さんが作ってくれた。俺がまたキッチンに立てるのは何時なんだ。気持ちが沈んでしまった。慌てて首を振って、お弁当箱を開ける。

 炒飯にトマト、サラダ、卵焼き。あと冷凍食品がいくつかある。スマホをいじりながら食べる。

 ……寂しい。和哉が足りない。いってもたってもいられなくて、早々にお弁当を食べて体育館へ向かう。

「日高じゃん。どうしたんだよ」

 ジャージを着た同級生がいた。バレーボールを宙に投げて、サーブの練習をしている。

 床に転がったバレーボールを掴む。

「和哉は? 和哉はどこにいんだよ」

「え、日高、和哉は……」

 何を言っているんだ、俺は。

「ごめん、最近少し可笑しくて」

 床に座って縮こまる。

「みんなそうだよ。日高だけじゃない」

 背中を撫でられた。

「和哉に、会いたい」

 チャイムが鳴ってしまう。

「あ、俺教室行くから」

「うん」

 同級生が去っていく。

 虚無感がすごくて立ち上がれない。足って、どうやって動かすんだっけ。

 元気なふりができたらよかったのに。なんでできないんだよ、馬鹿。


 放課後まで座り込んでいるわけにはいかない。教室に戻らないと。和哉も奏もいないのに?


 誰かがいなくたって、立って勉強して家に帰らないといけない。でもそんなのすごく億劫だ。

「日高? よかった、探したんだぞ」
 体育倉庫にいたら、ドアが開いて飯田先生が入ってくる。

「あ、先生」
「もう放課後だぞ? あんまりサボるな、心配する」
 足を崩して床に座っている俺の隣に、先生は腰を下ろす。
「先生、なんで和哉はいない」
 下を向いて呟く。こんなこと言ってどうするんだよ。先生だって困るだろ。

「そうだな……少し、旅に出たんだよ。だからお前が本当に必要としてる時、また現れる」
 俺は思わず顔を上げる。
「……嘘つき」
 先生が抱きしめてくれる。声を押し殺して、俺は泣いた。