チョコレートに想いを込めた春、君が消えた

「担任って忙しいのかな」

 ドアが閉まったのを見てから俺は呟く。

「飯田先生のことか」

 奏の声に頷く。

「うん。料理部は朝練ないから、何かやることが朝にあったのかと思って」

「かもなぁ」

 奏が呟く。

「鞄取ってくる。ゆっくりしてて」

 俺は椅子から降りる。

「留喜……今日暇? 授業戻んないで、夕方まで俺の家いて欲しい」

「あ、わかった。飯田先生に説明しておく」

 事件のことを奏と話したかったからちょうどよかった。

「ありがと」
 
 頷いている奏の頭を撫でる。

 え、あれ?

「ご、ごめん!!」

 思わず声が出る。なんで撫でてしまったんだろう。いつもの元気さがない奏を励ましたかったから? でもそれなら、さっきみたいに背中を叩いたらいいんじゃないのか。どうして。

「いや。気にしてない」

 奏の言葉にホッとする。俺は一体、何を考えていたんだ?

「教室行ってくるから、ちゃんと休んでて」

 奏が頷くのを見てから駆け出す。

 どうしてこんなに、次々と変なことばかり起こるんだ。俺達は犯人探しをしているだけなのに。まるで、なにも調べるなと言われているみたいだ。

「はぁはぁ」

 ドアを開けて、教室に足を踏み入れる。教卓の前にいた飯田先生が、ぽかっと俺の頭を叩く。

「奏助けたのはいいけど、お前まで授業サボるな」

「すみません。俺奏と一緒に帰ります。心配なんで」

 飯田先生がため息をつく。

「そんなことが理由で帰れると思うか? トイレ掃除、一週間分な」

 長くないか。

「三日でなんとかならないですか」

 目を見開いてから、飯田先生はニヤッと笑う。

「もっと増やしてやろうか」

「結構です、さよなら!」

 廊下側の列にある、奏の鞄を取って走り出す。

「日高! 止まれ」

 大きな声に驚いて、足を止める。

「な、なんですか」

 頼むから、説教なら後にしてくれ。

「お前は元気でいろよ。料理部のみんなが待ってるって」

 また戻れるのかな。まだ手遅れじゃない?

「ありがとうございます」

 お辞儀をして、俺は教室を出る。