チョコレートに想いを込めた春、君が消えた


 服をヒーターのそばに置いてから、奏はベッドに座り込む。

「さみい。少し寝てる」

 ブレザーを脱いで、奏の肩にかける。

「わかった。先生がいなくてよかった。色々説明しにくいし」

「はぁ。すげー怖かった」

 布団にくるまって、奏は呟く。そっと俺の手を握ってくる。

 握り返して、奏の瞳から溢れている涙を拭う。奏が目を閉じては開ける。落ち着かないよな。

「今日はもう帰ろう。制服と鞄は取ってくるから」

「あぁ。留喜、一緒に帰ってくんない」

 勢いよく頷く。

「そのつもりだ」

「ありがと。犯人、バスケかバレーの奴かも。俺が体育館で朝練してんの、そいつらと泉しか知らない」
 
 奏が頭から布団を被る。

「いつから閉じ込められてた?」

 布団をゆっくり動かして、顔を出すよう促す。そっと顔を出して、奏は下を向く。

「一階のトイレで体操着に着替えて、下駄箱に行ったらだから、たぶん六時くらい」

「は? 二時間あそこにいたのか?」

 俺が学校に着いたのは八時過ぎだ。最悪なことをしてしまった。もっと早く来るべきだった。

「あぁ。バスケ部、部活中スマホ禁止だからロッカーに鞄ごと入れてて。マジ馬鹿した」

 そんなことないだろ。

「俺が来る前に、誰かに知らせようとしなかったのか」

「したけど、ドア叩いても怖とか何かが動いてるって言うだけで」

 誰も人がいるなんて思わないか。俺も泉先生に声をかけられてなかったら、通り過ぎていたかもしれない。

「犯人の顔は?」

「見てない。パーカーのフード被ってサングラスとマスクしてて」

 変装に力が入りすぎている。

「奏を昔いじめた奴じゃ」

「それは俺も思ってる。俺、当分部活休む」

 安心して、息を吐く。

「うん、それがいいと思う。また何があるかわかんないし」

 保健室のドアが開く。

「奏、いるか?」

 泉先生の声だ。