チョコレートに想いを込めた春、君が消えた

「奏?」

 翌朝。え、あれ?
 おかしい。奏の体育館履きが下駄箱にある。昨日は俺が学校に来たくらいの時に、体育館履きから靴に履き替えていたのに。

「朝練きつすぎ」「体育館暑すぎだろ」なんて、バスケ部の奴らと言いながら。

 ドンドン!

 下駄箱の隅にある、掃除用具入れから音がする。

「は、え?」

 恐る恐る近づく。

 ドアノブの下にある金具に、南京錠が付いている。誰かが閉じ込められている。

「あ、日高! 奏見なかったか? また朝練サボってて」

 泉先生の声がして、後ろに振り向く。

「か、奏は……いないんですか?」

「え、あぁ。てっきり日高といるのかと思ったんだけど」

 ドアノブを掴んで、揺らす。

「おい奏! いるならドアを叩け!」

 叩かれてしまう。嘘だろ。どうして。

「は、そこにいるのか?」

 泉先生の掠れた声が響く。

「先生、ここの鍵は?」

「職員室だ。すぐ取ってくる」

 泉先生が走り出す。

 渡された鍵で、俺はドアを開けた。

「奏!」

 心配で大きな声が出る。

「はぁ……留喜がいてよかった。暗くて寒くて、死ぬかと」

 奏が寄りかかってくる。その瞬間に俺の手や背中が濡れる。
「寒い? え……な、なんだこれ」

 掃除用具入れの中に二十個の保冷剤がある。袋が開いているものが三、四個あった。奏の息が白い。体操着がびしょびしょになっている。

「乗れ! 保健室行く」

 このままだと風邪を引いてしまう。一体誰がやったんだ。奏への悪意がデカすぎる。

 奏をおんぶして走った。保健室にある替えの着替えを奏に着せる。

 暖房もつけないと。くっそ。最悪だ。どうしてこんなことになる。