チョコレートに想いを込めた春、君が消えた

「なあ、あれどうする?」
 放課後になると、奏に声をかけられた。

「警察に渡せばいいだろ」
 立ち上がって、二人で体育館に行く。
「お、奏、早いな」
 体育館に入ると、泉先生に声をかけられた。

「体育館倉庫、今開けてもいいですか」
 俺が言うと、泉先生はまばたきをする。
「ああ。どうした?」
「体育の時、見たものがあって」
 奥に入って、跳び箱を開ける。ロープがない。
「は」
 嘘だ。確かに見たのに。

「なんで跳び箱なんか開けてんだ。何もないだろ」
 泉先生がそばに来て、跳び箱を元に戻す。頭に血が上って、俺は泉先生の腕を掴む。
「お、お前が殺したのか」
「何の話だ」
 奏が俺と泉先生の間に入る。

「留喜落ち着け。泉、俺こいつ送るから部活遅れる」
「わかった」
 俺の手を引いて、奏は歩き出す。
「離せよ! 見逃すのか」
 体育館から出たところで、俺は腕を振りほどく。奏は慌てて首を振る。
「泉じゃない」
 どうして。
「何で言い切れる。あいつが処分したんだろ」
「そうかもな。でも絞殺なんて、泉はしないだろ。そんな頭良くない」
 確かに。泉先生は凶器なんて使わなそうだ。すごく真っすぐな人に見えるし。
「確かにものじゃなく手を使いそうだけど」
「だろ? 素直すぎんだよ、教師向いてない」
 くすくすと奏は笑う。あ。奏での後ろに泉先生がいる。
「体育は似合ってるだろ」
「え、あ、はい! ……聞こえてた?」
「向いてなくて悪かったな」
 奏は背中を叩かれてしまう。やっぱり、そうなると思った。
「いって!」
「奏、また明日」
 手を振ると、奏は首をかしげる。

「一人で帰れるのか」
 今日はいろいろあったからな。
「うん。今は一人がいい」
 部屋でゆっくり和哉のことを考えたい。

「留喜? どうした」
 その日の放課後、俺は家に帰ると、すぐに押し入れに行った。そこにあるロープを触っていると、兄さんが声をかけてきた。

「兄さん、これで人殺せる?」
「は」
 兄さんは目を見開いて、俺からロープを奪う。顔が青い。
「和哉を殺した凶器が、見つかった」
「そ、そうなのか」
 兄さんはそっと、俺の手を触る。あれ。俺の手が震えていた。

「でも、すぐなくなった。なんで、俺何もわかんない。もしバレー部の奴だったら……」
「ちがうよ、それだけは絶対」
 しっかりと首を振って、兄さんは俺を抱きしめてくれる。
「頼むから一人で走るな。俺は味方だから」
「うん。兄さんと奏のことは信じてる」
 その二人しか、信じられない。