チョコレートに想いを込めた春、君が消えた


 その日の放課後。奏は部室棟にある同級生のロッカーを開け、中を見た。俺が飯田先生に頼んで、鍵を借りた。

「ここはない」

 奏は肩を落とす。

 証拠じゃなくてもいいから、珍しいものが見つかって欲しい。

「女子は白だと思う、和哉から話しかけることないし」

「俺も。しかし、よく鍵もらえたな」

「和哉のロッカーを開けたいって伝えた」

 嘘ではない。

「悪だなぁ、留喜も」

「あいつのためなら、悪魔にだってなる」

 和哉のロッカーの鍵を開ける。教科書、俺と和哉の写真、たくさんのポッキーの箱とじゃがりこ。

「多いだろ、じゃがりこ六個にポッキー三つって」

「かわい」

 思わず声に出してしまう。いつも食べてたもんな。それでも太らないのが、少し羨ましかった。

「え。留喜、もしかして」

 奏が振り向く。聞こえたよな。

「好きだったよ、ずっと」

「……そうか」

 奏はそれしか言わなかった。そのことに、すごく救われた。

「奏のロッカー開けていいか」

 唾を飲み込んで言う。

「いいけど、見たくないものあるかも」

 ロッカーを開けて、中に入っていた漫画をめくる。パラっと写真が落ちる。慌てて拾う。

「え、これ……」

 体育館にいる奏が、手足をしばられ何人かの男達に殴られている。

「ほら、あった。気にすんな、もう一年の前の話だから」

 写真をポケットにしまって、奏は作り笑いをする。

「バスケ部、いんの辛いのか」

「まっさか。和哉がいじめ止めてくれたんだぜ? それからは平和」

「その前は? お前、本当に大丈夫なのか」

 奏は表情を崩さない。

「もちろん。毎日楽しい」

 ダメだ。嘘かわからない。

「奏俺は……和哉よりは頼りないけど、でも何かあったら絶対お前を守るから」

 それくらいしか言えない、今は。

「ありがとう、覚えておくな」

 奏はウィンクをする。きっと喜んでいる。

「バレーとダンスと吹奏楽も白」

 ロッカーを見渡しながら言う。

「バスケは俺以外見なくていいだろ」  

「いや。念のため」

 結局、見つかったのは奏の写真だけだった。

「もう帰るか」

 奏が言う。十九時前だ。これ以上調べるのはやめた方がいい。