体育祭で全校生徒の前でキスしたし、下の名前で呼んでとか言ったし…うん、気持ち抑えきれないよねぇ…磯村ならそうだよねぇ。
3年4組の教室で磯村は俺の席に座り、膝の上に俺を乗せている。後ろから腰あたりに手を回していて、濱家は隣の席にいる。
「…。」
ニコニコ顔の磯村に言う。
「そろそろ予鈴なるよー、帰りなよぉ」
「愛しの彼女とギリギリまで一緒いたいよなぁ」
「ですです!」
校内での磯村はより大胆になり、タイミングさえ合えば俺に会いに…触れに来る。
「じゃ、帰りまーす!」
「お疲れー」
磯村が出て行き、濱家は自分の席に戻ろうと立ち上がる。
「ラブラブ過ぎて、目の前でヤりださないか心配だわ」
「そこまで盛ってないからー」
「あはは、余裕だな」
席に戻って行く濱家。
「…。」
盛るも何も…キス止まりなんだよねぇ。まだ付き合って1ヶ月ちょいだし、別にいんだけどさ。
今日は磯村と一緒に帰る日。並んで歩く俺たちは手を繋いでいる。
「今度の水曜日、ウチでテスト勉強しません?」
「え、お邪魔して大丈夫なのぉ?」
「もちろんですよ。その日は親も仕事で遅い日なんで、気楽に来てください」
「うん、ありがとぉ」
これは…。
帰宅し、部屋で1人考える。
親のいない日に家に行くということは…そうことだよねぇ。ついに磯村も大人の階段を登る覚悟ができたのかぁ。
水曜日の放課後。制服姿のまま、磯村の家に向かう。自転車を押して歩く磯村の横で、俺は少しソワソワしている。
経験があるとはいえ、抱かれる側は初めてだしなぁ。磯村も緊張してんのかな。
チラッと磯村の顔を見た。
「お邪魔しまぁす」
磯村の家につき、2階へ上がっていく。
ガチャ…。
「飲み物とか取ってくるんで、適当に座って待っててください」
「あ、うん。ありがと」
部屋を軽く見渡した。
ザ・男子って感じの部屋だぁ。
しばらく経ち、小さなローテーブルで勉強をしていると磯村が「ふぅー、一旦きゅうけーい」
と後ろにゴロンと仰向けで寝転んだ。
「佑さんも休憩しましょうよー」
「この問題解いたらねぇ」
「…。」
磯村はぐわっと起き上がり、後ろにくっつき、腰に手を回した。首に顔を埋め、すーっと匂いを嗅ぐ。
「何してんの」
「癒しをチャージしてるんです」
再び吸ってくる。
「…。」
シャーペンを置き、体ごと磯村の方へ向いた。
「俺もきゅーけー」
目が合い自然とキスをする。何度かキスをし、磯村は俺の首筋にキスをした。見つめ合い、二の腕あたりに手を添えてくる磯村。
…あ、この感じは押し倒され…
ぎゅーっ、磯村は強く抱きしめる。
…え。
「よし、充電完了です!」
そう言うと最後に軽く頬にキスして、自分のいた場所にもどる。
ーあれ…。
「ほんとに送らなくて大丈夫ですか?」
「バス停すぐ近くだし大丈夫。今日はありがとぉ。お邪魔しましたー」
バスの車内で、ぼーっと外を眺める。
キスはしたけど、勉強して健全に終わったんだけど…。もしかして俺、魅力ない?。
次の日、体育の授業に向けグラウンドに出てきた俺と濱家、その他4組の生徒たち。
「ねー濱家ー」
「ん、なに?」
「俺って、かわいいー?」
「は?」
「背がないから色気ないもんなぁ」
「色気に背は関係なくね?」
「…。」
「たすくさーーん!!」
校舎の方を向くとベランダから磯村が大きく手を振っている。ひらひらと手を振り返した。
あーかわいいー。無邪気な笑顔の磯村は、本当にかわいい。
「曽根っちより磯村のほうが可愛げあるな」
「えー俺だってあるしー」
…もしかして、俺が抱く方なのかな!?抱かれ待ちだったとか!?
中間テストも終わり、文化祭に向けた準備が始まった。文化祭委員が勢いよく叫ぶ。
「朝も昼休みも放課後も、全力で準備すっからな!!」
うちの学校は文化祭が1日しかない。そのため、生徒も教師もその1日に全てを懸けている。うちの文化祭は毎年レベルの高い内容で、他校や保護者からも人気だ。
10分休憩中、スマホを見た。
磯村に言っとかないとー。
ーあ、ちょうど連絡来てる。
『文化祭の準備が忙しくなるみたいで
明日から一緒に登下校できません(T ^ T)』
どこのクラスもそうだよねぇ。
『同じくー。お互い準備がんばろー』
数日後、教室で文化祭準備中、用事から戻ってきた濱家が話しかけてくる。
「おい、曽根っち」
「なーに?」
「お前の彼氏どうにかしろよ」
「?」
「さっき、たまたま渡り廊下で会ったら、何で佑さんと一緒じゃないんですか、会うなら部長じゃなくて佑さんがよかった、とか言ってケンカ売ってきたんだけど!」
「あははー磯村なら言いそー」
「あいつの曽根っちへの愛やべーな。まじで卒業したら大丈夫なのか心配になるわ」
卒業しないで、とか駄々こねそー。
「曽根っちは寂しくならなさそう」
「まー年上だからねぇ」
「余裕だな」
次の週。朝のホームルーム中、俺は机に伏せていた。
平日は文化祭準備、土日はバイトでタイミングが合わず、結局2週間近く会えてない…。
5時間目の文化祭準備中、木下が話しかけてきた。
「夏休みにユーベルのカラオケ行った子たちも文化祭来てくれるらしい」
「へー」
「お前、関係ないみたいた顔してるけど、曽根とペアになった子が会いたがってるらしいぞ?」
…あー歌う前に帰っちゃったやつか。
「勝手に抜け出して怒ってるのかと思った」
「むしろ逆で、知る時間がもっとほしくなったみたい」
顔もあんま覚えてないんだよねぇ。
「そこの暇そうな曽根!準備室に使えそうなもんあるか確認してこい!」
文化祭委員が指示してくる。
「暇じゃないんですけどー。みんなと仲良く作業してるんですけどー。それにその雑な指示なんなのー」
「文句言うな!」
仕方なく準備室へ向かう。
「人使い荒いんだからぁー」
鍵の開いている準備室に入ると、段ボールや画用紙、木材など幅広い物が乱雑に置かれている。
「相変わらず物置だなぁ」
模擬店の看板や装飾に使えるもん探そうかなー。電飾ないかな…。
少し経つと、ガラガラーとドアが開いた。ドアの方を向くと磯村が1人立っていた。
「え、佑さん!?」
「わー偶然じゃーん」
「えー!最高のサプライズです!」
いつものように笑顔で喜んだ磯村。
…なんかすごく久々な感じする…。
すーっ、と引き寄せられるように磯村の前に行き、肩あたりにおでこが当たるように寄り掛かる。
「え!?…佑さん?」
「平気だと思ってたんだけどさぁ…会えないだけで…めっちゃ磯村不足」
「え…」
…思ってたより年上の余裕なかった。こんな愛しい彼氏置いていくとか無理じゃない?
「俺、卒業できないかも…」
ぎゅっと磯村を抱きしめた。
突然の俺の甘えモードに戸惑う磯村は、嬉しさもあり天を見上げ硬直している。
…いつもなら抱きしめ返してくるのに。
ちゅ、自分からキスをした。何度かキスをしていると廊下から話し声が聞こえる。
「佑さんっ…ちょっ、ストップ…」
俺はやめようとしない。話し声が近づいてくる。
「んっ…!!」
磯村は横を向きキスをやめた。話し声は準備室の前を通り過ぎていく。
「やめなくてよかったのに…」
「いや、見られたらどうするんですか!」
「全校生徒の前でキスしたし、教室でも密着してんのに、今さらなんなのー」
「そうですけど…」
「…?」
「オ、オレ、戻りますね!」
「あ、うん…」
文化祭当日。校内は生徒や他校生などで賑わう。俺は午前中にクラスの模擬店(ホットドッグとポテト)のレジ係、濱家は調理係をする。
「お釣りでーす」
他校の生徒対応中、磯村が同じクラスの友達と買いに来た。
「佑さん!お疲れ様です。二つずつお願いします!」
「お疲れー。600円でーす。すぐ出来るから少しずれて待っててー」
磯村が商品を受け取り、移動しようとしていると「曽根くん、今日話せる時間ある?」
カラオケでペアになったユーベルの女子がレジで声をかけてきた。周りに他のユーベル女子もいる。
「磯村?行くぞ」
「あ、うん」
「10分だけでいいから!ね!!」
「レジ番終わるの30分後だけど、それでいいなら」
面倒だけど、カラオケのこと謝らないとだしねぇ。
「ありがとう!じゃあ、30分後にまたここに来るね!」
他の女子に、やったねーとか言われながら嬉しそうに去って行く。
調理がひと段落した濱家が話しかける。
「今日、磯村と回る時間あんの?」
「それがさー、日中は時間合わなくてぇ。だから後夜祭一緒に見ることにしたぁ」
「そっか。じゃあ、俺らと回るか」
「よろしくねーん」
レジ番が終わった。
「濱家、俺10分だけユーベルの子と話さないとで。先に行っててー」
「はいよ」
模擬店近くを見ると、そわそわしながら待っていた。
「ごめん、お待たせー」
「ううん。わざわざありがとね」
「色々見たり買ったりしたのー?」
「さっきチュロス買って、友達は今ステージ見に行ってる」
「そうなんだぁ」
適当に校内を歩きながら話をした。
「カラオケの時、いきなり帰ってごめんね」
「全然大丈夫だよ!またみんなでご飯やカラオケ行けたらいいね、って話してて」
「へーそうなんだぁ」
あ…。
磯村のクラスがしているお化け屋敷前を通る。
「お化け屋敷してるんだ!曽根くん、怖いの大丈夫な人?」
「うーん、あんま好きじゃないかなー」
「そっか」
「そろそろ友達のとこ戻ったほうがいいよね?ステージまで送るよー」
「あ、ここで大丈夫だよ!あのさ…良かったら今度2人で遊ばない?」
「えっとぉ…」
「たすくーっ!!」
前から地元の奴ら数人がやって来る。
「あ、やっほー」
女子を見る友達たち。
「え、彼女!?」
「ちがーう」
「あ、じゃあ私行くね!また今度」
空気を読み、会釈して去って行った女の子。
「彼女可愛いじゃん」
「だから違うからー」
「まぁ、佑は俺らの方が好きだもんなー!」
悪ふざけで戯れて抱きしめられる。
「もぉ、離し…っ」
後ろを見ると磯村がいた。
ーえ…。
悲しそうな顔をしている磯村は、何も言わず背を向け立ち去る。
「ちょっ…!」
え、いつから居た!?…待って待って。女子に言い寄られて、男子に抱きつかれて…俺、めちゃくちゃ最低なやつみたいに思われた?
「ほら、行こうぜ!さっき濱家くんにも会ったし一緒に回るべー!」
「ええええ」
友達に勢いよく連れられ、追いかけられなかった。
その後、磯村と会う事もなく、一般公開の時間が終わった。
外が暗くなってきて、生徒と教師のみの後夜祭の時間が迫ってくる。後夜祭が行われる体育館へ生徒たちがぞろぞろ移動していた。
校舎内で行き交う人混みの中、磯村を探していながらスマホで電話をかけた。
…出ない。連絡すればいいと思って、待ち合わせ場所決めてなかった…。
磯村の行きそうな場所…あ、たぶん…。
あんな顔初めて見た。…こんなに会いたくなるのも、こんなに必死に追いかけるのも、お前が初めてなんだよ。だからさ、なるべく笑顔でいてほしい…。
…ガチャ、屋上のドアを開けると磯村の姿があった。もう夕日は沈みかけている。
3年4組の教室で磯村は俺の席に座り、膝の上に俺を乗せている。後ろから腰あたりに手を回していて、濱家は隣の席にいる。
「…。」
ニコニコ顔の磯村に言う。
「そろそろ予鈴なるよー、帰りなよぉ」
「愛しの彼女とギリギリまで一緒いたいよなぁ」
「ですです!」
校内での磯村はより大胆になり、タイミングさえ合えば俺に会いに…触れに来る。
「じゃ、帰りまーす!」
「お疲れー」
磯村が出て行き、濱家は自分の席に戻ろうと立ち上がる。
「ラブラブ過ぎて、目の前でヤりださないか心配だわ」
「そこまで盛ってないからー」
「あはは、余裕だな」
席に戻って行く濱家。
「…。」
盛るも何も…キス止まりなんだよねぇ。まだ付き合って1ヶ月ちょいだし、別にいんだけどさ。
今日は磯村と一緒に帰る日。並んで歩く俺たちは手を繋いでいる。
「今度の水曜日、ウチでテスト勉強しません?」
「え、お邪魔して大丈夫なのぉ?」
「もちろんですよ。その日は親も仕事で遅い日なんで、気楽に来てください」
「うん、ありがとぉ」
これは…。
帰宅し、部屋で1人考える。
親のいない日に家に行くということは…そうことだよねぇ。ついに磯村も大人の階段を登る覚悟ができたのかぁ。
水曜日の放課後。制服姿のまま、磯村の家に向かう。自転車を押して歩く磯村の横で、俺は少しソワソワしている。
経験があるとはいえ、抱かれる側は初めてだしなぁ。磯村も緊張してんのかな。
チラッと磯村の顔を見た。
「お邪魔しまぁす」
磯村の家につき、2階へ上がっていく。
ガチャ…。
「飲み物とか取ってくるんで、適当に座って待っててください」
「あ、うん。ありがと」
部屋を軽く見渡した。
ザ・男子って感じの部屋だぁ。
しばらく経ち、小さなローテーブルで勉強をしていると磯村が「ふぅー、一旦きゅうけーい」
と後ろにゴロンと仰向けで寝転んだ。
「佑さんも休憩しましょうよー」
「この問題解いたらねぇ」
「…。」
磯村はぐわっと起き上がり、後ろにくっつき、腰に手を回した。首に顔を埋め、すーっと匂いを嗅ぐ。
「何してんの」
「癒しをチャージしてるんです」
再び吸ってくる。
「…。」
シャーペンを置き、体ごと磯村の方へ向いた。
「俺もきゅーけー」
目が合い自然とキスをする。何度かキスをし、磯村は俺の首筋にキスをした。見つめ合い、二の腕あたりに手を添えてくる磯村。
…あ、この感じは押し倒され…
ぎゅーっ、磯村は強く抱きしめる。
…え。
「よし、充電完了です!」
そう言うと最後に軽く頬にキスして、自分のいた場所にもどる。
ーあれ…。
「ほんとに送らなくて大丈夫ですか?」
「バス停すぐ近くだし大丈夫。今日はありがとぉ。お邪魔しましたー」
バスの車内で、ぼーっと外を眺める。
キスはしたけど、勉強して健全に終わったんだけど…。もしかして俺、魅力ない?。
次の日、体育の授業に向けグラウンドに出てきた俺と濱家、その他4組の生徒たち。
「ねー濱家ー」
「ん、なに?」
「俺って、かわいいー?」
「は?」
「背がないから色気ないもんなぁ」
「色気に背は関係なくね?」
「…。」
「たすくさーーん!!」
校舎の方を向くとベランダから磯村が大きく手を振っている。ひらひらと手を振り返した。
あーかわいいー。無邪気な笑顔の磯村は、本当にかわいい。
「曽根っちより磯村のほうが可愛げあるな」
「えー俺だってあるしー」
…もしかして、俺が抱く方なのかな!?抱かれ待ちだったとか!?
中間テストも終わり、文化祭に向けた準備が始まった。文化祭委員が勢いよく叫ぶ。
「朝も昼休みも放課後も、全力で準備すっからな!!」
うちの学校は文化祭が1日しかない。そのため、生徒も教師もその1日に全てを懸けている。うちの文化祭は毎年レベルの高い内容で、他校や保護者からも人気だ。
10分休憩中、スマホを見た。
磯村に言っとかないとー。
ーあ、ちょうど連絡来てる。
『文化祭の準備が忙しくなるみたいで
明日から一緒に登下校できません(T ^ T)』
どこのクラスもそうだよねぇ。
『同じくー。お互い準備がんばろー』
数日後、教室で文化祭準備中、用事から戻ってきた濱家が話しかけてくる。
「おい、曽根っち」
「なーに?」
「お前の彼氏どうにかしろよ」
「?」
「さっき、たまたま渡り廊下で会ったら、何で佑さんと一緒じゃないんですか、会うなら部長じゃなくて佑さんがよかった、とか言ってケンカ売ってきたんだけど!」
「あははー磯村なら言いそー」
「あいつの曽根っちへの愛やべーな。まじで卒業したら大丈夫なのか心配になるわ」
卒業しないで、とか駄々こねそー。
「曽根っちは寂しくならなさそう」
「まー年上だからねぇ」
「余裕だな」
次の週。朝のホームルーム中、俺は机に伏せていた。
平日は文化祭準備、土日はバイトでタイミングが合わず、結局2週間近く会えてない…。
5時間目の文化祭準備中、木下が話しかけてきた。
「夏休みにユーベルのカラオケ行った子たちも文化祭来てくれるらしい」
「へー」
「お前、関係ないみたいた顔してるけど、曽根とペアになった子が会いたがってるらしいぞ?」
…あー歌う前に帰っちゃったやつか。
「勝手に抜け出して怒ってるのかと思った」
「むしろ逆で、知る時間がもっとほしくなったみたい」
顔もあんま覚えてないんだよねぇ。
「そこの暇そうな曽根!準備室に使えそうなもんあるか確認してこい!」
文化祭委員が指示してくる。
「暇じゃないんですけどー。みんなと仲良く作業してるんですけどー。それにその雑な指示なんなのー」
「文句言うな!」
仕方なく準備室へ向かう。
「人使い荒いんだからぁー」
鍵の開いている準備室に入ると、段ボールや画用紙、木材など幅広い物が乱雑に置かれている。
「相変わらず物置だなぁ」
模擬店の看板や装飾に使えるもん探そうかなー。電飾ないかな…。
少し経つと、ガラガラーとドアが開いた。ドアの方を向くと磯村が1人立っていた。
「え、佑さん!?」
「わー偶然じゃーん」
「えー!最高のサプライズです!」
いつものように笑顔で喜んだ磯村。
…なんかすごく久々な感じする…。
すーっ、と引き寄せられるように磯村の前に行き、肩あたりにおでこが当たるように寄り掛かる。
「え!?…佑さん?」
「平気だと思ってたんだけどさぁ…会えないだけで…めっちゃ磯村不足」
「え…」
…思ってたより年上の余裕なかった。こんな愛しい彼氏置いていくとか無理じゃない?
「俺、卒業できないかも…」
ぎゅっと磯村を抱きしめた。
突然の俺の甘えモードに戸惑う磯村は、嬉しさもあり天を見上げ硬直している。
…いつもなら抱きしめ返してくるのに。
ちゅ、自分からキスをした。何度かキスをしていると廊下から話し声が聞こえる。
「佑さんっ…ちょっ、ストップ…」
俺はやめようとしない。話し声が近づいてくる。
「んっ…!!」
磯村は横を向きキスをやめた。話し声は準備室の前を通り過ぎていく。
「やめなくてよかったのに…」
「いや、見られたらどうするんですか!」
「全校生徒の前でキスしたし、教室でも密着してんのに、今さらなんなのー」
「そうですけど…」
「…?」
「オ、オレ、戻りますね!」
「あ、うん…」
文化祭当日。校内は生徒や他校生などで賑わう。俺は午前中にクラスの模擬店(ホットドッグとポテト)のレジ係、濱家は調理係をする。
「お釣りでーす」
他校の生徒対応中、磯村が同じクラスの友達と買いに来た。
「佑さん!お疲れ様です。二つずつお願いします!」
「お疲れー。600円でーす。すぐ出来るから少しずれて待っててー」
磯村が商品を受け取り、移動しようとしていると「曽根くん、今日話せる時間ある?」
カラオケでペアになったユーベルの女子がレジで声をかけてきた。周りに他のユーベル女子もいる。
「磯村?行くぞ」
「あ、うん」
「10分だけでいいから!ね!!」
「レジ番終わるの30分後だけど、それでいいなら」
面倒だけど、カラオケのこと謝らないとだしねぇ。
「ありがとう!じゃあ、30分後にまたここに来るね!」
他の女子に、やったねーとか言われながら嬉しそうに去って行く。
調理がひと段落した濱家が話しかける。
「今日、磯村と回る時間あんの?」
「それがさー、日中は時間合わなくてぇ。だから後夜祭一緒に見ることにしたぁ」
「そっか。じゃあ、俺らと回るか」
「よろしくねーん」
レジ番が終わった。
「濱家、俺10分だけユーベルの子と話さないとで。先に行っててー」
「はいよ」
模擬店近くを見ると、そわそわしながら待っていた。
「ごめん、お待たせー」
「ううん。わざわざありがとね」
「色々見たり買ったりしたのー?」
「さっきチュロス買って、友達は今ステージ見に行ってる」
「そうなんだぁ」
適当に校内を歩きながら話をした。
「カラオケの時、いきなり帰ってごめんね」
「全然大丈夫だよ!またみんなでご飯やカラオケ行けたらいいね、って話してて」
「へーそうなんだぁ」
あ…。
磯村のクラスがしているお化け屋敷前を通る。
「お化け屋敷してるんだ!曽根くん、怖いの大丈夫な人?」
「うーん、あんま好きじゃないかなー」
「そっか」
「そろそろ友達のとこ戻ったほうがいいよね?ステージまで送るよー」
「あ、ここで大丈夫だよ!あのさ…良かったら今度2人で遊ばない?」
「えっとぉ…」
「たすくーっ!!」
前から地元の奴ら数人がやって来る。
「あ、やっほー」
女子を見る友達たち。
「え、彼女!?」
「ちがーう」
「あ、じゃあ私行くね!また今度」
空気を読み、会釈して去って行った女の子。
「彼女可愛いじゃん」
「だから違うからー」
「まぁ、佑は俺らの方が好きだもんなー!」
悪ふざけで戯れて抱きしめられる。
「もぉ、離し…っ」
後ろを見ると磯村がいた。
ーえ…。
悲しそうな顔をしている磯村は、何も言わず背を向け立ち去る。
「ちょっ…!」
え、いつから居た!?…待って待って。女子に言い寄られて、男子に抱きつかれて…俺、めちゃくちゃ最低なやつみたいに思われた?
「ほら、行こうぜ!さっき濱家くんにも会ったし一緒に回るべー!」
「ええええ」
友達に勢いよく連れられ、追いかけられなかった。
その後、磯村と会う事もなく、一般公開の時間が終わった。
外が暗くなってきて、生徒と教師のみの後夜祭の時間が迫ってくる。後夜祭が行われる体育館へ生徒たちがぞろぞろ移動していた。
校舎内で行き交う人混みの中、磯村を探していながらスマホで電話をかけた。
…出ない。連絡すればいいと思って、待ち合わせ場所決めてなかった…。
磯村の行きそうな場所…あ、たぶん…。
あんな顔初めて見た。…こんなに会いたくなるのも、こんなに必死に追いかけるのも、お前が初めてなんだよ。だからさ、なるべく笑顔でいてほしい…。
…ガチャ、屋上のドアを開けると磯村の姿があった。もう夕日は沈みかけている。



