この愛は、星よりも眩しい

 今日は磯村の誕生日。そして、付き合って初めてのデート。
 水着姿の俺たちは、たくさんの人で賑わうプールにいる。
「先輩!あれ乗りましょうよ!」
ボートに乗るウォータースライダーを指差した磯村。
「2人乗りもあるみたいですし、ね?」
「…1回だけね」
「よし、行きましょう」
手を握られ、歩き始める俺の頬は染まっていると思う。


 流れるプールで、大きな浮き輪に掴まっている。
「勝手に流れてくれるの楽ー」
「先輩って、意外とめんどくさがりですよね」
「そうかなー。ま、ゆるく楽しくをモットーに生きてるからねぇ」
「だから余計ギャップ萌えだったんですよ」
「ん?」
「いえ、何も。…そういえば、2学期から一緒に昼食べません?週一でもいいんで」
「いいよ」
「やった!」

 プールからあがり、自動販売機にいくと泣きそうになっている女の子が立っていた。
「迷子かなぁ」
「ちょっと声かけてみます」
「ちょい待ち」
「え」
「磯村背高いんだし、怖がるかもじゃん。俺がかけるから」

 そばにいき、軽く覗き込む。
「ねぇ、もしかしてママやパパとはぐれちゃったー?」
「えっ…あ、うん…」
不安そうな女の子の前にしゃがんだ。
「不安だったねー。迷子センターにお願いしたら、ママたちに会えるから一緒に行かない?」
女の子は頷く。
「大丈夫、絶対会えるからね」


 「じゃあお願いしまーす」
無事迷子センターに送り届けた。
「先輩って、子供好きなんですか?」
「んー、どっちかっていうと好きかなぁ」
「絶対さっきの女の子、先輩に恋しましたよ」
「何言ってんの。あの不安な状況でなるわけないじゃん」
「いや、ママたちと再会した後に思い出して恋するんですよ!あんな優しい眼差しで手差し出されたら、誰だって好きになっちゃいますよ!」
ほんとこいつの頭の中はお花畑だねー。
「16歳になったんだからさー、ちょっとは落ち着きなよー。…ほら、次行くよ」
手を差し出すと、喜びの表情になった磯村。
「はいっ!」


 プールを満喫し、夜ご飯を食べに焼肉屋へ。
「この前も部室で焼肉したのに、誕生日も肉でよかったの?」
「焼肉好きなんで!それに個室で2人きりとか、たまらないです!」
「喜んでもらえたなら何よりでーす」

 肉を焼き始めた。
「今日は誕生日だから全部焼いであげるー。遠慮せず食べることに専念してねぇ」
「ありがとうございます!焼くの代わるんで、先輩も食べてくださいね」
「うん、食べたくなったら磯村にあーんしてもらうから大丈夫ー」
「16歳になったばっかのオレを殺す気ですか…」
胸を押さえながら訴えてくる。
「俺のこと抱かずに死んでいいの?…なんちゃって」
「うっ…もう限界です。先輩が甘すぎて糖分過多です」
「あはは。はい、焼けたよー」


 店を出て、外を歩く俺と磯村。
「これどこ向かってるんですか?」
「着くまで内緒ー」

 「プレゼント何がいいかなぁ、何が喜ぶかなぁって考えた時にさ、物じゃなくてこっちの方がいいんじゃないかなと思って…」
 バスケットゴールのある公園の前で立ち止まった。
「え…」
「ここに隠しておいたんだよねぇ」
公園のベンチ下に隠していたバスケットボールを手にする。
「食べたばっかで動けるか分かんないけど…1on1しよっか」
磯村の顔は驚きつつ、キラキラし始めた。

 ディフェンスをする磯村をくぐり抜け、シュートをした。

…あぁ、やっぱバスケするの楽しいな。

 しばらくしてベンチに座る俺たちは、のけぞっている。だらーんと座る俺と下を向き疲れた様子の磯村。
「うぅ…食べたもの全部出そうです」
「俺もー。ていうか磯村弱すぎー」
「いやいや、先輩が強すぎなんですよ。そもそも先輩がディフェンスに阻止されたの見たことないですもん」
「それは昔でしょー。今なら止められちゃうよ」
「…すげー楽しかったし、先輩と一緒にバスケ出来るとか最高のプレゼントでした!ありがとうございます!」
「なら良かった。じゃあ最後に…」
立ち上がりボールを持った。
「よーく見ててね。磯村だけの特別だから…」
「え…」
 ドリブルをしながら走り出す。

 どんな俺も好きだと伝えてくれたから。いつも真っ直ぐ向き合ってくれるから。これからは俺も素直に伝えていかなきゃ。

 スリーポイント位置でジャンプし、シュートをした。
ーどうかな…。
 シュッ、見事にシュートが決まり、磯村の方を向いた。
「…誕生日おめでとう。大好きだよ」
 磯村は目を潤ませ駆け寄ってきて、そのままお姫様抱っこをしてきた。
「うわぁっ!?え、なに!?」
「…どこまでかっこいいんですか。オレだってめちゃくちゃ愛してます…」
ゆっくり顔を近づけ、キスをした。



 始業式の日。
「…おはよぉ」
「曽根っち、おはよー!…え!?」
教室の中からドアにいる俺に挨拶をした濱家は、驚いている。
「おはようございまーす!!」
俺の隣で、磯村が元気よく挨拶をした。
「え、お前ら…」
「はい!やっと付き合えることになりました!」
俺の肩を抱きながら、嬉しそうに言い、他のクラスメイトはざわついている。
「これからは毎朝一緒に登校して、先輩を教室まで送り届けることにしたんです!」
俺は諦めの顔をしている。
 「じゃあオレ自分の教室行きますね」
「うん」
じーっと顔を見てくる磯村。
「…行ってらっしゃいのちゅーしてとか思ってんでしょー。しないからねー」
「えー学校公認カップルなのに?」
…まぁ、すぐに広まるだろうな。
「はぁ…、ん」
両手を軽く広げる。
「!!」
目を輝かせ抱きついてくる。ぎゅーっ
「長〜い。早く教室行く」
「はい!また連絡しますねー!」
手を振り、去って行く。

 席につく俺に濱家が話しかける。
「付き合った途端ラブラブ全開だなぁ。つーか、付き合ったなら言えよ」
「ごめーん」
「部長としてお前らのこと見守ってたのに」
「お騒がせしました。後で室岡たちにも伝えとくー」
「公開イチャイチャしてたら嫌でも伝わるんじゃね」
「あはは。残りの学校生活、カップルらしいことたくさんしたいんだってさー」
「へぇー。一緒に登下校したり、学校行事楽しんだり?」
「じゃなぁい?」
「曽根っち周りの反応めんどくさくて断りそうなのに」
「そうなんだけどー、嬉しそうな顔見たいじゃん?俺、意外と尽くすタイプなのかもぉ」
「惚気かよ」



 数日後。教室で体育委員の2人が黒板の前に出た。
「体育祭の種目決めをします。最初は立候補制、希望が多かった場合はくじ引きで決めます。1人2種目選んでください」
 「曽根っち何にすんの?」
「うーん、楽なのがいー」
「出たよ、ゆるゆるスポーツマン」
磯村何に出るんだろう。競技被んないほうが応援しやすいよねぇ。


 放課後、教室の掃除をしているとクラスメイトが声をかけてくる。
「曽根ー、旦那が迎え来てるぞー」
ドアの外で磯村が待っている。
「あーい」

 自転車置き場に向かいながら話をする。
「体育祭の種目決めしたぁ?」
「はい」
「何にしたの?」
「騎馬戦と借り物競走です。先輩は?」
「二人三脚と綱引き」
よかった、被ってない。



 体育祭当日。グラウンドでは、体育委員長が宣誓を行う。
「せんせーい!我々光り輝くイケメン男子高校生たちはー、紳士の心に則りー、最後まで正々堂々戦うことをちかいまーす!」

 二人三脚の時間になり、木下とペアの俺は紐を結び始める。
「これ、彼氏に嫉妬されないの?」
「え?」
「脚密着して、肩組んで、すげー接触してるから」
「あー、そんなことより多分、俺の走る姿を見るのに夢中になると思うー」
「うわー、惚気うざー」

 スタート位置についた。
パァンッ、走り出す選手たち。
 1着で次のペアにバトンを渡し、紐をほどき列に戻った。
「さすが先輩ー!かっこよすぎでーす!」
磯村の声が遠くから届く。
「…ほらね」
木下は、うざーという顔をした。


 借り物競走が始まり、磯村を見ようと応援席の最前列に移動した。
 お題を引いた生徒たちが一斉に走り出した。お題の用紙を見た磯村は、3年4組の応援席に走ってくる。
…なんかこっちに向かって来てる…?
 俺の前に来た磯村は「先輩!来てください!」と手を差し出す。
「え!?」
手を取り、立ち上がるとそのままゴールへ走り出す。

 係に用紙を渡す磯村と俺は手を繋いだまま。
「お題は、相思相愛の人でした!本当に想い合っているかどうかの証明をお願いしまーす!」
…え!?
「先輩っ!」
頬に両手を添えキスをしてきた。
…!?
盛り上がるグラウンドの生徒たち。
「熱いキスご馳走様でーす!1年2組磯村くんクリアです」
もぉ…。


 騎馬戦の時間、1年の部に参加する生徒たちが入場する。
「うわー、なんかゴツいやつ多くね?」
「ほんとだねぇ」
…磯村大丈夫かなぁ。
 騎馬を組んだ磯村は先頭にいる。ホイッスルとともにハチマキの取り合いが始まった。磯村の騎手が相手のハチマキを取った。
「おぉ!!」

 そして、最後に2組と5組の一騎討ちになった。5組は4人全員体格がいい。
「濱家ー、俺の磯村がぁー、屈強な男どもにやられちゃうよー」
濱家の腕をぶんぶん振る。
「たしかにあんなのと正面からぶつかったらしんど」
 ハチマキを奪うタイミングをお互い探している様子。騎手が睨み合い、緊迫する雰囲気。
 ガッ!激しくぶつかり合い、みんな騎手に注目しているが、俺は磯村を見ていた。
ーえ、今…。
 無事に2組がハチマキを取り勝利した。

 「いやぁ、勝ってよかったな…え」
濱家の横から立ち上がり、磯村の元へ駆け寄る。
「え、先輩?」
「こっち来て」


 着いたのは保健室。
「え」
「さっき5組のやつとぶつかった時、相手の頭突き顔面にくらってたじゃん」
「あ、見てたんですね」
「磯村しか見てなかった…。早く冷やしてもらって」
 中に入り養護の先生に対応してもらう磯村。

 「私、30分くらい席外すけど大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
磯村は頬骨あたりに氷嚢当てている。先生が出て行き、ソファ席に並んで座った。
「すみません、先輩の最後の体育祭なのに」
「俺出るのあと綱引きだけだったし、それにさぁ、体育祭よりも彼氏の方が大事だからねー」
「先輩…。今、片手使えないんで…先輩オレの膝に乗ってください」
「…は?」
「早く」
手を引かれる。
…えええ!?
 向き合うように磯村の膝に乗った。
「女の子じゃないし、重いでしょ」
恥ずかしさで目を逸らしてしまう。
「キスしましょう」
「いや、先生帰ってくるし…」
「まだ30分経ってないんで、大丈夫ですよ」
「…っ、少しだけね…」
 引かれ合うように何度もキスをする。
冷た…でも気持ちいいな。
 不意に氷嚢が頬に当たる。
「先輩…」
…あぁ、柄にもなく欲が出そうになる。
「先輩じゃなくて…下の名前で呼んでよ」
自分から言っておきながら恥ずかしくなった。
「…その顔ズルすぎますよ…佑さん」
また深いキスが始まった。