空色の小鳥は、恋をしていた

 とぼとぼと部屋に戻りながら、奏楽は項垂れた。
 さっきの颯真との会話が、胸に刺さって抜けない。

(好きな人くらい、いてもおかしくない。染谷はモテるし、いつも女の子に囲まれてるし)

 ただのルームメイトで平均モブ男子の自分は、そもそも選ばれない。

(同じ部屋で生活して、近くにいる気になっていたけど。ただの、ルームメイトでしか、ないんだよな)

 改めて気が付いたら悲しくなって、奏楽は足を止めた。

(今のままの気持ちでいたら、染谷に恋人ができた時に、本当にショック死しそう)

 間違って紹介なんかされても、祝福できる自信がない。

(染谷ならきっと、好きな人と恋人になれるだろうから。祝福する心の準備しておかないと、僕の命が危険なんじゃ……)

 このままでは失恋でショック死する未来しかない。
 胸に焦りと不安が渦巻いた。

(でも、心の準備って、どうすれば……)

 同じ部屋にいたら嫌でも毎日、キラキラ王子様の顔が目に入る。
 色んな優希を発見できるのが奏楽の特権なのに、今はその特権が痛い。

(知れば知るほど嬉しくて、胸がドキドキするのに)

 今は、ただ苦しい。
 ジワリと目頭が熱くなった。

「もう、離れたい」

 零れた言葉は本音ではない。
 けれど、嘘でもない。
 部屋に戻る気になれなくて、奏楽はくるりと向きを変えて歩き出した。