空色の小鳥は、恋をしていた

 放課後の教室で、奏楽は外を眺めていた。

(昨日は、危うく染谷に見られるところだった。散らかった部屋は見られちゃったけど)

 今までは優希がいないときにだけ起きていたポルターガイストだったのに。
 明らかに悪化していると感じる。

(前より宙に浮くものの数も増えたし、時間も長い)

 挙句、本が笑っているように見えた。
 自分の精神状態まで末期だ。

「どうしよ……いっそ、相談してみようかな」

 残り二年を同じ部屋で過ごすのだから、話したほうがいいのかもしれない。
 優希は優しいから、馬鹿にしないで話を聞いてくれると思う。
 奏楽は校庭に視線を流した。
 今日もサッカー部が練習している。

(いた、染谷……)

 探さなくても、奏楽の目はすぐに優希の姿を見付ける。
 サッカーコートを走る優希がキラキラ輝いている。

(今日も、眩しいなぁ)

 運動ができて、明るくて、誰からも好かれる、優しい王子様。
 奏楽が唯一、優希に勝るのは勉強くらいだ。それも文系の教科くらいで、理数系なら同じくらいだ。
 そんな優希がモテないはずもなく。今日も今日とて、サッカーコートの周りには女子が群がっている。

(サッカー部はモテ男子が多いけど。染谷も、そのうちの一人だもんね)

 寮で同室でなかったら、友達にすらなっていない人だ。

(僕みたいなモブ男子にも優しい染谷だから、モテるんだろうな)

 誰もいない教室からこっそり見詰めるこの距離が、奏楽と優希の本来の距離なんだろう。
 せめて仲の良いルームメイトとして、嫌われずに過ごしたい。

「ポルターガイストなんて嘘みたいな話、できるわけない」

 奏楽は深く息を吐いて、窓辺に突っ伏した。
 そんな奏楽の姿を遠くのサッカーコートから優希が心配そうに見上げていたのなんか、気付きもしなかった。