青天の霹靂、という言葉を辞書で引いたことがある。
青空に突然鳴り出す雷みたいに驚くことだそうだ。
驚きすぎて、怒る気にもなれない。
まさに今が、そういう心境だと、奏楽は思った。
「おはよう、奏楽。俺、今日は午前からサッカー部だけど、明日は午後だけだから、手芸部に挨拶に行くよ」
優希がいつもの通りに着替えなら、奏楽に何か話しかけている。
奏楽の耳には全然届かなかった。
何故なら、優希の背中に奏楽が張り付いていたからだ。
(あれは……僕、だよね……え……えぇ?)
思わず自分の体に触れて確認した。
自分はいる。実体はある。
(じゃぁ、優希の肩にいるのは、何?)
よく見れば、昨日まで優希の肩にいたスライムが消えている。
奏楽は、優希の肩に手を振れて真後ろに立つ奏楽を、凝視した。
(僕にしか見えないけど……よく見ると、プルンってゼリーみたいに揺れる)
優希が動くたび、一緒に移動する奏楽の体の輪郭が揺れて、空気に溶ける。
(それに、何より……足がない)
足の部分が透明になって、消えている。
幽霊確定だと思った。
(えっ……と、小鳥のあみぐるみが黒い塊になって、スライムになって、僕になった……の?)
優希の様子に変化がないということは、今まで通り気付いていない。
奏楽には見える奏楽の幽霊が、優希には見えていない。
血の気が下がるどころではなかった。
(昨日のうちにスライムのこと、相談するべきだった。今更、言えない)
ポルターガイストが奏楽発である以上、優希の肩に乗っている何かも奏楽のせいである可能性が高い。
(あれって、僕の願望? 優希のこと、好きだけど。オバケになってまで側にいたいなんて思ってないよ)
段々、泣きそうな気持ちになってくる。
優希が心配そうに奏楽に寄った。
「奏楽、どうしたの? 調子悪い?」
「……悪くない。優希は体調、平気? 頭、痛くない?」
幽霊がとり憑いて、調子が悪くなったら大変だ。
それに昨日、頭に本が落ちたのは結構な衝撃だったと思う。
「もう、平気だよ。奏楽が大丈夫なら、良かった。俺がいない時にポルターガイストが起こったら、ちゃんと教えてね。隠しちゃダメだからね」
優希が肩を撫でてくれる。
その優しさに感動する。
(優希はこんなに力になってくれるのに、僕は……優希の肩に乗ってるもの、もう一ヶ月も隠してるんだ)
そう思ったら、とんでもない罪悪感が湧き上がった。
「じゃ、俺、先に食堂に行くね」
「待って、優希……」
話そうとした口が、勝手に閉じた。
優希の背中に張り付く幽霊奏楽が、優希の首に腕を回した。
きゅっと吸い付く様が、まるで本当の自分みたいに見えた。
「ん? どうしたの?」
優希が普通に振り向いた。
幽霊越しに、奏楽に目を向ける。
(やっぱり、優希には見えてない。本当に気付いてないんだ)
ぞくりと寒気が走る。
奏楽は小さく首を振った。
「何でもない。僕も後から行くね」
「奏楽は部活まで時間あるだろ。ゆっくりね」
そう言い残して、優希が部屋を出ていった。
優希が出ていった扉を、奏楽は茫然と眺めた。
青空に突然鳴り出す雷みたいに驚くことだそうだ。
驚きすぎて、怒る気にもなれない。
まさに今が、そういう心境だと、奏楽は思った。
「おはよう、奏楽。俺、今日は午前からサッカー部だけど、明日は午後だけだから、手芸部に挨拶に行くよ」
優希がいつもの通りに着替えなら、奏楽に何か話しかけている。
奏楽の耳には全然届かなかった。
何故なら、優希の背中に奏楽が張り付いていたからだ。
(あれは……僕、だよね……え……えぇ?)
思わず自分の体に触れて確認した。
自分はいる。実体はある。
(じゃぁ、優希の肩にいるのは、何?)
よく見れば、昨日まで優希の肩にいたスライムが消えている。
奏楽は、優希の肩に手を振れて真後ろに立つ奏楽を、凝視した。
(僕にしか見えないけど……よく見ると、プルンってゼリーみたいに揺れる)
優希が動くたび、一緒に移動する奏楽の体の輪郭が揺れて、空気に溶ける。
(それに、何より……足がない)
足の部分が透明になって、消えている。
幽霊確定だと思った。
(えっ……と、小鳥のあみぐるみが黒い塊になって、スライムになって、僕になった……の?)
優希の様子に変化がないということは、今まで通り気付いていない。
奏楽には見える奏楽の幽霊が、優希には見えていない。
血の気が下がるどころではなかった。
(昨日のうちにスライムのこと、相談するべきだった。今更、言えない)
ポルターガイストが奏楽発である以上、優希の肩に乗っている何かも奏楽のせいである可能性が高い。
(あれって、僕の願望? 優希のこと、好きだけど。オバケになってまで側にいたいなんて思ってないよ)
段々、泣きそうな気持ちになってくる。
優希が心配そうに奏楽に寄った。
「奏楽、どうしたの? 調子悪い?」
「……悪くない。優希は体調、平気? 頭、痛くない?」
幽霊がとり憑いて、調子が悪くなったら大変だ。
それに昨日、頭に本が落ちたのは結構な衝撃だったと思う。
「もう、平気だよ。奏楽が大丈夫なら、良かった。俺がいない時にポルターガイストが起こったら、ちゃんと教えてね。隠しちゃダメだからね」
優希が肩を撫でてくれる。
その優しさに感動する。
(優希はこんなに力になってくれるのに、僕は……優希の肩に乗ってるもの、もう一ヶ月も隠してるんだ)
そう思ったら、とんでもない罪悪感が湧き上がった。
「じゃ、俺、先に食堂に行くね」
「待って、優希……」
話そうとした口が、勝手に閉じた。
優希の背中に張り付く幽霊奏楽が、優希の首に腕を回した。
きゅっと吸い付く様が、まるで本当の自分みたいに見えた。
「ん? どうしたの?」
優希が普通に振り向いた。
幽霊越しに、奏楽に目を向ける。
(やっぱり、優希には見えてない。本当に気付いてないんだ)
ぞくりと寒気が走る。
奏楽は小さく首を振った。
「何でもない。僕も後から行くね」
「奏楽は部活まで時間あるだろ。ゆっくりね」
そう言い残して、優希が部屋を出ていった。
優希が出ていった扉を、奏楽は茫然と眺めた。



