空色の小鳥は、恋をしていた

 放課後。優希は、隣の1組に向かっていた。
 明日から長期休暇に入るから、今日は部活がない。

(颯真に明日からのスケジュール、渡さないと)

 休み中の部活のメニュー表を持って、教室の入口に立つ。

「いた、そう……ま……」

 呼びかけようとした声は、小さくなった。
 颯真と奏楽が話をしている。
 思わず、扉の影に隠れた。
 二人が話している姿を、そっと覗き見る。

(だから、距離が近いんだよ。俺と話してる時は、人ひとり分くらい空けているのに)

 颯真に対して、奏楽は距離感バグだけでなく、遠慮がない。
 自分から積極的に触れにいく。
 颯真の肩をポカポカ叩いている奏楽を見て、ドキリとした。

(あんな可愛い仕草、俺はされたことないのに)

 モヤモヤするのに、ドキドキする。

(俺はルームメイトってだけで、颯真のほうが近い友達って思っているのかも)

 そう考えて、ある可能性が頭を過った。

(まさか、奏楽は颯真が好き、なのかな。そういえば、恋……みたいな話、全然聞かない)

 恋愛めいた話を、奏楽から聞いたことがない。
 急にモヤモヤが大きくなった。
 二人の姿を見ていたくなくて、優希は目を逸らした。
 チクリと右肩に、痛みが走った。

「何してるの? 染谷」

 逸らした先で、通りがかった篠原結斗と目が合った。
 とても不審な顔をされた。

「いや、えっと……」

 手に持ったスケジュール表が目に入った。

「篠原、颯真と同室だよね。悪いけど、これ、渡しておいて」

 スケジュール表を結斗に押し付けて、優希はその場から逃げた。

「え、染谷! 俺、今日帰るけど……って。教室に鷹宮、いるじゃん」

 結斗の言葉にも止まらずに走った。
 右の肩が、どんどん重くなる。何かが載っているような異物感だ。

(最近、気にならなかったのに。何で、急に)

 肩が強張って、痛い。軽く眩暈がして、一瞬ふらついた。
 自分の肩に触れる。やけに冷たく感じた。

「俺、どうしたんだろう。最近、変だ」

 胸に痞えるモヤモヤを消化できないまま、優希は歩いた。