捜査資料01
【LINEトーク履歴(抜粋)】
202X年6月14日(金) 08:12
結衣:おはー。電車混みすぎ死ぬ
サキ:今3号車のドア付近。結衣どこ?
結衣:4号車
サキ:昨日のプリ、エアドロしてよ。加工前のやつ
結衣:そっちいくから、エアドロで
サキ:り
*
捜査資料02
【端末の状況】
被害者の端末は、午前8時14分、小田急小田原線の下り急行車内で、不特定の相手からAirDropの受信待機状態にあった。
通常、面識のない相手からの受信は『受信しない』まに制限されるべきだが、被害者の設定は『すべての人(10分間)』になっていた。
捜査資料03
【同乗者複数名の証言による現場再現】
「あ、サキ見っけ」
朝の通勤ラッシュ。被害者――夏目結衣はつり革に掴まりながら、数メートル先に頭一つ分見える親友のサキに向かって手を振った。サキも気づいたようで、スマホを掲げて『送れ』というジェスチャーをする。
結衣はサキの隣にたどり着くなり、写真アプリを開き、昨日放課後に撮った『盛れた』サキとのツーショット写真を選択。共有ボタンからAirDropのアイコンをタップした。
周囲のiPhoneが次々と検出される。
『サキのiPhone』
『iPad』
『■■のiPhone』
「よし、送信!」
――その直後。結衣の画面に、予期せぬポップアップが割り込む。
【AirDrop】
(名称未設定)が写真1枚を共有しようとしています。
「……え、誰?」
サキが顔を上げた。周囲はスマホを眺めるサラリーマンや、眠そうに目を閉じる学生ばかりだ。間違えて送ってきたのだろうか。

普段なら迷わず[辞退]を押すが、結衣の親指は[受け入れる]を反射的に押した。写真はすぐにアプリに保存された。
気味悪さを感じながらも、結衣はその画像をタップして開く。それは、写真ではなかった。
映っていたのは、今、結衣が乗っているこの車両の光景。女子高生の後ろ姿がある。結衣が今着ているのと同じ、紺色のセーラー服。
「……え、まさか私?」
「結衣、何言ってんの?」
盗撮だ。犯人は、同じ車両にいる。結衣は恐怖に突き動かされ、勢いよく後ろを振り返った。
そこには白髪の老紳士が新聞を読んでいるだけだった。その隣には、無表情な女性会社員。誰もスマホを結衣に向けてはいない。
震える指で、もう一度写真を確認する。そこで結衣は、致命的な『違和感』に気づいた。
写真の中の結衣の影が底なし沼のように、サキの足元まで広がっている。

「ほら、これ……」
サキに見せようと思った瞬間、スマホの画面が再び切り替わった。
【AirDrop】
"(名称未設定)"が写真1枚を共有しようとしています。
プレビュー画面には、文字だけが写っていた。
『設定:【受信しない】に変更しましたか?』
結衣は悲鳴を上げそうになりながら、設定アプリを開いた。AirDropの設定を『受信しない』に即座に変更する。
チェックマークが、結衣の指を嘲笑うかのように、勝手に『すべての人』に戻る。
「えっ……なんで!」
「ちょっと、結衣。大丈夫?」
何度タップしても、磁石に吸い寄せられるように『すべての人』にチェックが固定される。
結衣は車内を見回した。スマホを覗く全員が容疑者に見えた。
すると、次は突然、周囲の乗客のスマホが次々と軽快な音を鳴らし始めた。
AirDropだ――。
乗客の全員が何者かから、写真を受け取っている。どんな写真なのか不安に思っていると、サキから袖を引っ張られた。
「結衣、なんか変だよ」
乗客の全員が結衣の足元を凝視していた。
【LINEトーク履歴(抜粋)】
202X年6月14日(金) 08:12
結衣:おはー。電車混みすぎ死ぬ
サキ:今3号車のドア付近。結衣どこ?
結衣:4号車
サキ:昨日のプリ、エアドロしてよ。加工前のやつ
結衣:そっちいくから、エアドロで
サキ:り
*
捜査資料02
【端末の状況】
被害者の端末は、午前8時14分、小田急小田原線の下り急行車内で、不特定の相手からAirDropの受信待機状態にあった。
通常、面識のない相手からの受信は『受信しない』まに制限されるべきだが、被害者の設定は『すべての人(10分間)』になっていた。
捜査資料03
【同乗者複数名の証言による現場再現】
「あ、サキ見っけ」
朝の通勤ラッシュ。被害者――夏目結衣はつり革に掴まりながら、数メートル先に頭一つ分見える親友のサキに向かって手を振った。サキも気づいたようで、スマホを掲げて『送れ』というジェスチャーをする。
結衣はサキの隣にたどり着くなり、写真アプリを開き、昨日放課後に撮った『盛れた』サキとのツーショット写真を選択。共有ボタンからAirDropのアイコンをタップした。
周囲のiPhoneが次々と検出される。
『サキのiPhone』
『iPad』
『■■のiPhone』
「よし、送信!」
――その直後。結衣の画面に、予期せぬポップアップが割り込む。
【AirDrop】
(名称未設定)が写真1枚を共有しようとしています。
「……え、誰?」
サキが顔を上げた。周囲はスマホを眺めるサラリーマンや、眠そうに目を閉じる学生ばかりだ。間違えて送ってきたのだろうか。

普段なら迷わず[辞退]を押すが、結衣の親指は[受け入れる]を反射的に押した。写真はすぐにアプリに保存された。
気味悪さを感じながらも、結衣はその画像をタップして開く。それは、写真ではなかった。
映っていたのは、今、結衣が乗っているこの車両の光景。女子高生の後ろ姿がある。結衣が今着ているのと同じ、紺色のセーラー服。
「……え、まさか私?」
「結衣、何言ってんの?」
盗撮だ。犯人は、同じ車両にいる。結衣は恐怖に突き動かされ、勢いよく後ろを振り返った。
そこには白髪の老紳士が新聞を読んでいるだけだった。その隣には、無表情な女性会社員。誰もスマホを結衣に向けてはいない。
震える指で、もう一度写真を確認する。そこで結衣は、致命的な『違和感』に気づいた。
写真の中の結衣の影が底なし沼のように、サキの足元まで広がっている。

「ほら、これ……」
サキに見せようと思った瞬間、スマホの画面が再び切り替わった。
【AirDrop】
"(名称未設定)"が写真1枚を共有しようとしています。
プレビュー画面には、文字だけが写っていた。
『設定:【受信しない】に変更しましたか?』
結衣は悲鳴を上げそうになりながら、設定アプリを開いた。AirDropの設定を『受信しない』に即座に変更する。
チェックマークが、結衣の指を嘲笑うかのように、勝手に『すべての人』に戻る。
「えっ……なんで!」
「ちょっと、結衣。大丈夫?」
何度タップしても、磁石に吸い寄せられるように『すべての人』にチェックが固定される。
結衣は車内を見回した。スマホを覗く全員が容疑者に見えた。
すると、次は突然、周囲の乗客のスマホが次々と軽快な音を鳴らし始めた。
AirDropだ――。
乗客の全員が何者かから、写真を受け取っている。どんな写真なのか不安に思っていると、サキから袖を引っ張られた。
「結衣、なんか変だよ」
乗客の全員が結衣の足元を凝視していた。



