三年間好きだった人に やっとチョコを渡した夜


 それでも緊張しながら待っていると、橘がスマホを見ながら出てきて、すぐにオレに気づいた。

「あ、よかった。今、電話しようと思ってた」
「オレに?」
「うん。南に話があってさ」
「そうなんだ」

 オレに電話しようとしてくれてたことが嬉しかったけど、でも、エレベーターに乗ってからふと。
 話ってなんだろ、と思った。
 考えたけど、何も浮かばない。他にも人が乗っていたので、黙ったまま階数表示を眺めていた。

 迎えの車を待つために、駅のローターリーまで。いつもの五分を歩き始める。

「……あのさ、橘、今甘いモノ、食べたい?」
「ん? 何か持ってる?」
「うん。チョコレートなんだけど……」

 ドキドキしながら、鞄の中からチョコ一粒を取り出す。

 一粒四百円。金色と赤の包み紙。
 めっちゃ高いチョコだ。

 橘は笑顔で受け取ってくれた。

「豪華だな?」
「ん。おいしいから、食べて?」

 少し歩きをゆっくりにして、橘がチョコを口に入れた。

「なにこれ。めっちゃうま」

 笑顔が嬉しくて、ちょっと泣きそうになった。
 やっと、渡せた。

 それ、オレの人生で一番おいしいと思うチョコだよ。
 と言うのは、なんとなく、やめておいた。