恋の魔法と2人の秘密

 毎週水曜日の午後7時。
 人の少ないファミレスの角席で、幼馴染の綾香(あやか)と駄目ることが俺の習慣だ。今週も変わらず、2人でファミレスを訪れる。

「飲み物持ってくるよ。何がいい?」
「じゃあ烏龍茶お願い」
「ストローは?」
「いるー」

 そんな会話も慣れたものだ。要望されたウーロン茶と自分用のジンジャーエールを持って席に戻る。
 聞き慣れたメニューを店員に伝えてから、向かいの席に座る綾香は飲み物に口をつけた。

「あー…染みる」
「疲れた社会人かよ」
「いやいや、女子高生も大変なんだよ?」

 確かに、クラスの女子の会話はとんでもないものだ。スピードもさることながら、皮肉が効きすぎている。女子の噂話現場を見る度に、男で良かったと何度も思った。

「だから、柊斗と話せるこの時間が好き」
「…また上手いこと言って」
「本心だよ~」

 鈴を転がしたような声で笑いながら、綾香は運ばれてきたチョコレートケーキを食べる。
 毎週頼んでいる気がするが、飽きないのだろうか。

「私と話すの嫌い?」
「いや…嫌いじゃない、けど」
「なら良かった」

 飄々とした話し方に、どうにも主導権を握られてしまう。
 端から見たら、カップルに見えるのだろうか。クラスでも1人でいるところを滅多に見ない綾香。かといって常に中心にいるかと言われればそれは違う。人と一線を引きつつも、確かに輪の中にはいる。それが学校での綾香だ。

 同級生が見たら、俺たちが2人きりでファミレスにいるなんて怪奇現象よりも怪奇現象だろう。下手したら、学校の七不思議の中に加えられかねない。