自分が周りと違うと知ったのは小学6年生の時。
何の授業かは忘れたがLGBTQに関する内容だった。
幼稚園の頃からずっと、好きになる子は男の子だったし、そのことを気にしたこともなかった。
ただ、『みんなは異性のことを好きになりやすい』『みんなは同性を好きになることはそんなにないのかもしれない』ってことは薄々感じていた。
その授業を受けるまで。
「______で、このように、世の中には自分と同じ性別の人を好きになる人がいます。
この人たちを悪く思ってはいけませんよー。
あなた達は______ないといけ________」
先生が言う“その人”に自分は当てはまるのだと分かった。
別に先生は僕のことを悪いだとか言ってないし、
この話を聞いたみんなも嫌な様子もない。
でも、
(僕、みんなとちゃうんや。)
その時の授業がずっと脳裏に焼き付いていた。
気にしないようにしていたが、
中学2年生、思春期真っ只中の時期に僕の悩みは段々と膨らんでいった。
1人で抱え続けるのにも限界が近づいた頃、
「凪ー漣ー。来週の土曜さ、私とパパ仕事で家帰って来れんからさ、またじぃちゃん家行ってくれるー?」
リビングで僕と弟の漣はテレビにソフトを繋いでゲームをしていた。
「はーい。」
「大丈夫だよ母さん。心配しないで。」
僕の適当な返事に対して、漣の返事は大人びて聞こえた。
「ありがと〜漣。2人ともすまんな。」
後ろの台所からの声よりも僕はゲームにばかり意識が向いていた。
「にぃちゃん、じぃちゃん家にゲーム持って行く?」
「当たり前やん。」
引っ越す前のじぃちゃん家は近くで、学校帰りによく行っていたからあんまり特別に感じなかった。
「よぉ来た早よ入り。」
お泊まりの荷物を入れたリュックを背負って僕らはお邪魔する。
学校の宿題を終わらせて、
ゲームをして、
ババ抜きをして、
晩御飯を食べて。
お風呂に入って、
寝床につく。
じぃちゃんはまだリビングにいるみたいだった。
僕と漣は明かりを消した部屋で、布団にくるまい、漣の寝息だけが聞こえていた。
僕はまだ眠れず、微かな明かりが漏れている襖を開けてじぃちゃんのところに行く。
じぃちゃんはこたつに足を入れて、テレビに映る大河ドラマをみているようだった。
リビングに繋がる通路の前で、僕は立ち止まり、じぃちゃんの背中を見つめた。
小さくて、弱々しい。
それでも、その時の僕は頼りたかった。
「じぃちゃん。あのさ、僕______」
その夜、初めて人にこの悩みを打ち明けた。笑うことも貶すこともせず、僕の気持ちを受け止めてくれた。
初めて、ずっと一人で抱えていた悩みが、少しだけ軽くなった気がした。
けれど高校に上がってから、なぜか
「東雲さ、男好きらしいで。」
僕が男の子が好きだと言う噂が広がった。
噂の出所は僕と一番仲の良かった小学校からの友人。よく家にも遊びに来て漣と3人でゲームをしていた。
でも僕の恋愛対象については一切話していない。
どうして彼が知っているのかも、どうしてそんな噂を広げたのかも分からなかった。
(まぁ、高校ってそんなもんか。)
でもこの件に関して、腹を立てづらかった。
だって、誰も悪口を言うこともない。
嫌がらせをすることもない。
ただ、
周りが僕の前で恋バナはしなくなったし、
新しくできた友人は遠慮しがちになった。
不思議と周囲との距離が感じられた。
その時の僕は、
(僕に惚れられるとでも思ってんのかな。)
という結論に至り、その日からは害のない存在だと周囲に認識してもらえるよう振る舞った。
確かにそれは成功したと思う。
でも、僕だけがまだ心に何か残っていた。
でも、思えた。誰かに相談しようと。
じぃちゃんはもう引っ越しちゃったから、
お母さんとお父さんに、
相談しようって下校時考えていた。
家の扉を開けると、丁度2人がいた。
コートを持って、マフラーを巻いていた。
「あのさ、2人に相談したいことあるねんけど…」
「えっ相談?!」
「なんやなんやどうしたん。」
僕は2人の持つ鞄に目を向けて、学校の時のように不器用に笑顔を取り繕った。
「や、帰ってからでええわ。」
2人は申し訳なさそうな表情で扉を閉める。
「すまんな。帰ってきたら絶対話し聞くさかい。」
「ちょっと待っといてぇな。7時ぐらいには帰ってくるはずよ。」
「うん。待ってる。行ってらっしゃい。」
そう言い僕は送り出した。
母さんが言った7時。
それまで僕は伝えたいことを悶々と考えていた。
そして腹を括る。
でも時刻は既に8時過ぎ。
漣はリビングのテーブルで勉強しながら呟く。
「なんか帰ってくるの遅ない?」
「んな。遅い。」
折角腹を括ったのに。
男の子が好きだと、学校でこんなことがあったのだと。
話そうと思ったのに。
括った結びが解けそうになった時、チャイムが鳴った。
「帰ってきた!」
僕は玄関に駆けて行き、ドアノブに手を掛ける。
そして扉を開ける。
その時ふと思った。
何でチャイムを鳴らしたのだろう。
鍵は開いたし、いつもそんなことしないのに。
扉の前に立っていたのは青服を来た警察のような人。
背後から漣も玄関に来た足音が聞こえる。
何だか
嫌な予感がした。
「落ち着いて聞いてください。
お母さんとお父さんが、
___________亡くなられました。」
***
「仕事から帰ってきとる時に、
事故に巻き込まれたらしいわ。」
僕の涙は既に止まっていて、皮膚の乾いた感覚だけが残っていた。
辺りはもう暗く、側にある街灯だけが僕らを照らしていた。
もう、誰かに恋すること自体が、
ひどく遠いものになってしまった気がしていた。
「弟は仲良い子いてたから地元のおばちゃん家行ったけど、僕はじぃちゃん家来てん。」
5月の涼しい空気が僕の体を冷やしてくれる。
「僕が話そうとしたから2人とも逝ってもたみたいに思えるんよな。」
神様が、僕に与えた罰のようで。
「話そうとしやんかったらこんなんならんかったんやろうかなって_____」
月白くんがブレザーで隠された僕の頬を挟み、顔を合わせた。
月白くんは顔をくしゃっとして、
「何で…んなこと言うんだよ……」
僕よりも悔しそうな表情をしていた。
「お前が悪いことなんて一つもねぇだろ。」
ブレザーが落ちて、街灯の光が一気に僕の顔に振り注ぐ。
でもそれより、月白くんのその表情の方が僕には眩しかった。
あの葬式の日、二つの棺桶から一歩後ろにいた、
あの時から。
ずっと自分に言い聞かせ、罪悪感に蝕まれていた
あれ以来ずっと。
ずっと欲しかった言葉。
僕は月白くんの両袖を掴み、頭を彼の胸に置いた。
「僕、悪くなかったのかなぁ…」
「恋愛対象が同性なのも、親が亡くなったのも、
─────東雲は何も悪くない。」
彼は僕の体をその大きな腕で抱きしめてくれた。
「……そっか。」
僕の瞳は再び水分を纏い、光を反射させていく。
「そっかぁ…ぁ」
少し経ってからも、
僕は再び泣き出して月白くんに抱きしめてもらっていた。
思えばいつぶりだろうか、
誰かに抱きしめてもらうこと。
記憶では確か、
(葬式ん時に漣に抱きしめられた時やろか。)
あの時は冷え切っていたのに、
今ではこんなにも暖かかった。
***
僕が泣き止んでから、
「あれ!もうこんな時間やん?!
やばいやばいめっちゃごめん!帰ろ!」
冷静になった頃に公園の時計が目に入り、一気に現実に戻された。
僕らは隣に並んで再び歩き出す。
前に月白くんの家は公園の近くと聞いたけど彼は僕の帰路を一緒に歩いてくれている。
多分ここでそのことについて聞いても、月白くんは気遣いとかでついて来てくれるんじゃないかな、何て思ってしまう。
ふと、自分の失言を思い出した。
「さっきさ、振り回されてるとか、言ってごめん。」
「別に。気にすんなよ、何ともねぇから。
それより…『どきどきしてる』
って言う方が気になる。」
「うっ…。」
それも僕の失言だった。
感情のままにいってしまったのだ。
弁解の余地もなく、ここまで言ってしまったんだから正直に言ってしまおう。
「転校した最初の日の、クラスの子らにいっぱい詰められた時さ、
月白くん割って入ってくれたやん?
そん時に多分…あっや、多分じゃなくて……
月白くんに、一目惚れしたんよね。」
歩きながらも、月白くんの視線が僕に向けられたのを感じた。そして慌てて訂正する。
「ぁあでもっ、その…えらい顔かっこよくってさ……
恋愛的に〜とかは、ない、から…」
僕は手をあたふたさせながら弁解する。
分からなかった。
月白くんのその表情に。
何が込められていたのか。
気付けば僕の家の玄関に辿り着き、やっと足を止めた。
「すまんな、送ってくれて。ありが」
「悪ぃけど。」
月白くんが僕を真っ直ぐに見つめる。
僕の内側に届くぐらい、力強い声で。
「お前より先に、俺はお前に一目惚れしてた。」
「____________えっ」
月白くんはカバンを背負い直して、後ろを向く。
「お前が認めるまで、頑張るから。」
月白くんは背を向けて早足に歩き出した。
(認めるって…もしかして僕の……)
曲がり角を曲がる時、月白くんの耳が視界に入る。
この間と同じ、真っ赤だ。
それを見た僕の顔も彼と同じ色に染まる。
僕の胸がぎゅっと閉まるが目ははっきり開かれた。
「……………ぇ?」
僕は心ここに在らずの状態のまま帰り、
いつものように過ごして、
そして──眠れない夜が明けた。
何の授業かは忘れたがLGBTQに関する内容だった。
幼稚園の頃からずっと、好きになる子は男の子だったし、そのことを気にしたこともなかった。
ただ、『みんなは異性のことを好きになりやすい』『みんなは同性を好きになることはそんなにないのかもしれない』ってことは薄々感じていた。
その授業を受けるまで。
「______で、このように、世の中には自分と同じ性別の人を好きになる人がいます。
この人たちを悪く思ってはいけませんよー。
あなた達は______ないといけ________」
先生が言う“その人”に自分は当てはまるのだと分かった。
別に先生は僕のことを悪いだとか言ってないし、
この話を聞いたみんなも嫌な様子もない。
でも、
(僕、みんなとちゃうんや。)
その時の授業がずっと脳裏に焼き付いていた。
気にしないようにしていたが、
中学2年生、思春期真っ只中の時期に僕の悩みは段々と膨らんでいった。
1人で抱え続けるのにも限界が近づいた頃、
「凪ー漣ー。来週の土曜さ、私とパパ仕事で家帰って来れんからさ、またじぃちゃん家行ってくれるー?」
リビングで僕と弟の漣はテレビにソフトを繋いでゲームをしていた。
「はーい。」
「大丈夫だよ母さん。心配しないで。」
僕の適当な返事に対して、漣の返事は大人びて聞こえた。
「ありがと〜漣。2人ともすまんな。」
後ろの台所からの声よりも僕はゲームにばかり意識が向いていた。
「にぃちゃん、じぃちゃん家にゲーム持って行く?」
「当たり前やん。」
引っ越す前のじぃちゃん家は近くで、学校帰りによく行っていたからあんまり特別に感じなかった。
「よぉ来た早よ入り。」
お泊まりの荷物を入れたリュックを背負って僕らはお邪魔する。
学校の宿題を終わらせて、
ゲームをして、
ババ抜きをして、
晩御飯を食べて。
お風呂に入って、
寝床につく。
じぃちゃんはまだリビングにいるみたいだった。
僕と漣は明かりを消した部屋で、布団にくるまい、漣の寝息だけが聞こえていた。
僕はまだ眠れず、微かな明かりが漏れている襖を開けてじぃちゃんのところに行く。
じぃちゃんはこたつに足を入れて、テレビに映る大河ドラマをみているようだった。
リビングに繋がる通路の前で、僕は立ち止まり、じぃちゃんの背中を見つめた。
小さくて、弱々しい。
それでも、その時の僕は頼りたかった。
「じぃちゃん。あのさ、僕______」
その夜、初めて人にこの悩みを打ち明けた。笑うことも貶すこともせず、僕の気持ちを受け止めてくれた。
初めて、ずっと一人で抱えていた悩みが、少しだけ軽くなった気がした。
けれど高校に上がってから、なぜか
「東雲さ、男好きらしいで。」
僕が男の子が好きだと言う噂が広がった。
噂の出所は僕と一番仲の良かった小学校からの友人。よく家にも遊びに来て漣と3人でゲームをしていた。
でも僕の恋愛対象については一切話していない。
どうして彼が知っているのかも、どうしてそんな噂を広げたのかも分からなかった。
(まぁ、高校ってそんなもんか。)
でもこの件に関して、腹を立てづらかった。
だって、誰も悪口を言うこともない。
嫌がらせをすることもない。
ただ、
周りが僕の前で恋バナはしなくなったし、
新しくできた友人は遠慮しがちになった。
不思議と周囲との距離が感じられた。
その時の僕は、
(僕に惚れられるとでも思ってんのかな。)
という結論に至り、その日からは害のない存在だと周囲に認識してもらえるよう振る舞った。
確かにそれは成功したと思う。
でも、僕だけがまだ心に何か残っていた。
でも、思えた。誰かに相談しようと。
じぃちゃんはもう引っ越しちゃったから、
お母さんとお父さんに、
相談しようって下校時考えていた。
家の扉を開けると、丁度2人がいた。
コートを持って、マフラーを巻いていた。
「あのさ、2人に相談したいことあるねんけど…」
「えっ相談?!」
「なんやなんやどうしたん。」
僕は2人の持つ鞄に目を向けて、学校の時のように不器用に笑顔を取り繕った。
「や、帰ってからでええわ。」
2人は申し訳なさそうな表情で扉を閉める。
「すまんな。帰ってきたら絶対話し聞くさかい。」
「ちょっと待っといてぇな。7時ぐらいには帰ってくるはずよ。」
「うん。待ってる。行ってらっしゃい。」
そう言い僕は送り出した。
母さんが言った7時。
それまで僕は伝えたいことを悶々と考えていた。
そして腹を括る。
でも時刻は既に8時過ぎ。
漣はリビングのテーブルで勉強しながら呟く。
「なんか帰ってくるの遅ない?」
「んな。遅い。」
折角腹を括ったのに。
男の子が好きだと、学校でこんなことがあったのだと。
話そうと思ったのに。
括った結びが解けそうになった時、チャイムが鳴った。
「帰ってきた!」
僕は玄関に駆けて行き、ドアノブに手を掛ける。
そして扉を開ける。
その時ふと思った。
何でチャイムを鳴らしたのだろう。
鍵は開いたし、いつもそんなことしないのに。
扉の前に立っていたのは青服を来た警察のような人。
背後から漣も玄関に来た足音が聞こえる。
何だか
嫌な予感がした。
「落ち着いて聞いてください。
お母さんとお父さんが、
___________亡くなられました。」
***
「仕事から帰ってきとる時に、
事故に巻き込まれたらしいわ。」
僕の涙は既に止まっていて、皮膚の乾いた感覚だけが残っていた。
辺りはもう暗く、側にある街灯だけが僕らを照らしていた。
もう、誰かに恋すること自体が、
ひどく遠いものになってしまった気がしていた。
「弟は仲良い子いてたから地元のおばちゃん家行ったけど、僕はじぃちゃん家来てん。」
5月の涼しい空気が僕の体を冷やしてくれる。
「僕が話そうとしたから2人とも逝ってもたみたいに思えるんよな。」
神様が、僕に与えた罰のようで。
「話そうとしやんかったらこんなんならんかったんやろうかなって_____」
月白くんがブレザーで隠された僕の頬を挟み、顔を合わせた。
月白くんは顔をくしゃっとして、
「何で…んなこと言うんだよ……」
僕よりも悔しそうな表情をしていた。
「お前が悪いことなんて一つもねぇだろ。」
ブレザーが落ちて、街灯の光が一気に僕の顔に振り注ぐ。
でもそれより、月白くんのその表情の方が僕には眩しかった。
あの葬式の日、二つの棺桶から一歩後ろにいた、
あの時から。
ずっと自分に言い聞かせ、罪悪感に蝕まれていた
あれ以来ずっと。
ずっと欲しかった言葉。
僕は月白くんの両袖を掴み、頭を彼の胸に置いた。
「僕、悪くなかったのかなぁ…」
「恋愛対象が同性なのも、親が亡くなったのも、
─────東雲は何も悪くない。」
彼は僕の体をその大きな腕で抱きしめてくれた。
「……そっか。」
僕の瞳は再び水分を纏い、光を反射させていく。
「そっかぁ…ぁ」
少し経ってからも、
僕は再び泣き出して月白くんに抱きしめてもらっていた。
思えばいつぶりだろうか、
誰かに抱きしめてもらうこと。
記憶では確か、
(葬式ん時に漣に抱きしめられた時やろか。)
あの時は冷え切っていたのに、
今ではこんなにも暖かかった。
***
僕が泣き止んでから、
「あれ!もうこんな時間やん?!
やばいやばいめっちゃごめん!帰ろ!」
冷静になった頃に公園の時計が目に入り、一気に現実に戻された。
僕らは隣に並んで再び歩き出す。
前に月白くんの家は公園の近くと聞いたけど彼は僕の帰路を一緒に歩いてくれている。
多分ここでそのことについて聞いても、月白くんは気遣いとかでついて来てくれるんじゃないかな、何て思ってしまう。
ふと、自分の失言を思い出した。
「さっきさ、振り回されてるとか、言ってごめん。」
「別に。気にすんなよ、何ともねぇから。
それより…『どきどきしてる』
って言う方が気になる。」
「うっ…。」
それも僕の失言だった。
感情のままにいってしまったのだ。
弁解の余地もなく、ここまで言ってしまったんだから正直に言ってしまおう。
「転校した最初の日の、クラスの子らにいっぱい詰められた時さ、
月白くん割って入ってくれたやん?
そん時に多分…あっや、多分じゃなくて……
月白くんに、一目惚れしたんよね。」
歩きながらも、月白くんの視線が僕に向けられたのを感じた。そして慌てて訂正する。
「ぁあでもっ、その…えらい顔かっこよくってさ……
恋愛的に〜とかは、ない、から…」
僕は手をあたふたさせながら弁解する。
分からなかった。
月白くんのその表情に。
何が込められていたのか。
気付けば僕の家の玄関に辿り着き、やっと足を止めた。
「すまんな、送ってくれて。ありが」
「悪ぃけど。」
月白くんが僕を真っ直ぐに見つめる。
僕の内側に届くぐらい、力強い声で。
「お前より先に、俺はお前に一目惚れしてた。」
「____________えっ」
月白くんはカバンを背負い直して、後ろを向く。
「お前が認めるまで、頑張るから。」
月白くんは背を向けて早足に歩き出した。
(認めるって…もしかして僕の……)
曲がり角を曲がる時、月白くんの耳が視界に入る。
この間と同じ、真っ赤だ。
それを見た僕の顔も彼と同じ色に染まる。
僕の胸がぎゅっと閉まるが目ははっきり開かれた。
「……………ぇ?」
僕は心ここに在らずの状態のまま帰り、
いつものように過ごして、
そして──眠れない夜が明けた。

