文化祭1日目。模擬店や他クラスの展示を楽しんだ俺は、片瀬とクラスの受付をするため教室に戻った。
受付の椅子に座った俺は、若干そわそわしている。
「ねぇ、俺にまで緊張と嬉しさが伝染してくるんだけど」
隣に座る片瀬が言ってきた。
「悪りぃ悪りぃ」
「まぁ、でも嬉しいよな。好きな相手がわざわざ時間合わせて来てくれるの」
「だよな。…つうか午前中、意外とたくさん見に来てくれてるな」
「ほんとだな」
2人で机の上の紙に記入されている来客数を見ていた。
「今、見ても大丈夫?」
前に人の足元が見えて、上を向くと時岡がいた。すぐ後ろには笠原と依田がいて、久しぶりに高身長トリオが揃うのを見た気がする。
「あ、うん。どうぞ…ごゆっくりご覧ください」
「ありがと」
時岡の後ろを、笠原は俺らにニコッとして中に入り、依田はこっちを見向きもせずに真顔のまま入っていった。
つうか、今さらだけど、高身長トリオって中身だけ見ると意外な組み合わせだよな。時岡はクールだけど少し抜けてる、笠原は爽やかで誰とでも仲良くなる、依田は頭が良いらしいが無愛想。まぁ、仲良くなり始めた俺もまた違うタイプだし、時岡は来るもの拒まずなのかもな。恋愛もそうだったら有利なんだけど…。
「丹羽が作ったのどこらへん?」
入り口に戻ってきた時岡が中から顔を覗かせ聞いてきた。
「え、俺が作ったの…うーんと」
「中で説明してきたら?」
片瀬が気を利かせて提案してくれる。
「俺と受付にいる片瀬や淀金が作ったのは、あの右上あたりなんだけど…」
ブロックの前で説明する俺は、ほんの少しだけ緊張している。
「へぇー、すご。丹羽、こういう細かい作業得意なんだ」
「別に得意とかではねーけど。…じゃ、俺戻るから」
「わざわざありがとう」
時岡と会話しただけで、脈が早くなる。こんなんで、明日の2人時間耐えられるかな。
13時半過ぎ。束の間の休憩時間中の鷲尾も含めて、4人で時岡のクラスが行う縁日体験に向かう。
「時岡、中にいるって言ってたよな」
「うん」
「あのさ、時岡が俺らにヤキモチ妬くか試さねぇ?」
「は?」
淀金の提案に眉をひそめた。
「いや、だから、丹羽が射的してる時に寄り添ってアドバイスする彼氏みたいなことしてさ、時岡がどんな反応するか見るんだって!」
「いや、意味わかんねーよ。そっと見守ってくれるんじゃなかった?」
「そのつもりだったんだけど、時岡の丹羽への脈あり疑惑を確信に近づけたいって思っちゃって」
「はぁ…余計なことすんなって。それで無反応だった時の俺の傷ついた心どうすんだよ」
「そん時は全力で慰めてやるから」
「…。」
受付を済ませ、中に入ると淀金の期待通りなのか、時岡が射的のコーナーに立っていた。
「あ、いらっしゃい」
俺に気づき、時岡は軽く笑みを浮かべ「4人ともする?」と聞いてくる。
「あ、とりあえず2人でお願いします!」
俺の代わりに淀金が元気よく答えた。
俺と淀金は横に並び、銃にコルク玉をセットする。5発撃つことができるらしく、何を狙うか決めようと景品を見たら、トーイ王子のぬいぐるみがあり、一瞬動揺してしまった。
とりあえず無難に軽そうなモノを狙って撃ってみたが擦りもしなかった。
射的に運動神経の良さって関係ねーのかな?
「え、意外とむず」
「うわ、当たんねぇ!」
淀金も1発目は外した。
2発目は狙いを変え、トーイ王子に向けて撃ったが数ミリずれてしまった。
「丹羽、本気でやってる?」
そう言った片瀬は、銃を構える俺の横に来て、軽く片手を添えてきた。
おい、まじか。淀金だけかと思ったら、片瀬まで乗り気だったのかよ。
「何狙う?」
「じゃあ、あそこのポテチ」
「おっけー」
狙いを定め、一緒に撃ったが見事に失敗。
「外してんじゃねーかよ!」
「ごめんごめん。頭ん中のイメージでは当たったんだけどな」
「じゃあ、次俺が手伝うな」
鷲尾が俺の横へ立とうとした時、
「サポートサービス可能ですけど、利用しますか?」
と時岡が言ってきた。
「えっ…あ、はい、お願いします」
期待通りの展開に淀金たちは目をキラキラさせているが、今の言い方はマニュアルに則ったものだと思う。多分、サポートってアドバイスとか景品を落ちやすいところに移動させるとか、そういうのだと…
「…!?」
時岡は俺を後ろから包み込む形で、両手を添えてきた。
え…ええ!?待って待って。今何が起こってる!?
周りで見ている淀金たちも、時岡の大胆な行動に驚いている。
「トーイ王子狙っていい?」
そう時岡に耳元で聞かれ、小さく頷いた俺の耳はすでに熱い。
…ドキドキドキ…ー
重なった指先で引き金を引くと、見事にトーイ王子に命中した。
「…わぁ!当たった!」
興奮して後ろを向くと、すぐ目の前に時岡の顔がきて、あまりの近さに心臓が止まりそうになる。
「…。」
「おめでとう」
「うん、サポートありがと…」
笠原のいる輪投げコーナーを楽しむ淀金たち。その様子をトーイ王子を抱き抱えて見る俺の鼓動は、全然落ち着いてくれない。
教室を出る際、時岡をチラッと見ると目が合い、口パクで「また明日」と言われた。緩みそうになる唇をぐっと噛み、軽く頷き教室を出た。
「いやぁー、あれは反則だろ!」
周りに人がいない渡り廊下に着き、淀金たちは興奮気味に話し始める。
「すげースムーズにあんなことするから、下心とか分かんなかったし。え、あれってヤキモキ?脈あり?」
「うーん、クールな表情のままだったもんな。つうか、あのサービス他の人にもしてんのかな」
「えー、女子がされたら即ノックアウトだろ」
「さすがに女子にはしないだろー」
男友達だからしたのかな…。
「もうさ、丹羽の顔がめちゃ乙女で、見てるこっちが恥ずくなったもん」
「いや、好きな奴にいきなりされたら無理だってぇ…。あいつ、毎回距離感おかしいんだよな。その度にこっちが無駄にドキドキしてさ…」
「でも、そーゆーとこも…?」
「…好き」
「あはは!ベタ惚れだな!逆に明日心配になるわ」
明日の俺…大丈夫か!?
翌日の今日は一般公開のため、校内はたくさんの人で賑わっていた。
午後、受付係を終えた俺は、廊下の窓に映る自分の髪型が変じゃないか確認しながら、時岡を待っている。
「お待たせ」
現れた時岡は、今日も安定のクールさでカッコいい。
「何から行こっか。昨日や今日の午前中、色々行った?」
「模擬店のスイーツ以外食って、あとは1年と2年のほぼ行ったかな」
「すご」
「淀金が制覇したがって」
「あー、なんかそんな感じするね。…ってことは、今日だけのステージ関連は観てないんだ?」
「うん、全然」
「じゃあ、ステージ観に行って、その後スイーツ食べようか」
「おっけ」
中庭の特設ステージに移動すると、ちょうど次の演目が始まるタイミングで、ステージ前には多くの人が集まっていた。
もちろん椅子席は埋まっていて、立ち見の人も大勢いたため、俺と時岡は後ろの方で見ることに。
「見える?肩車しようか?」
背伸びして見ようとしている俺に時岡が普通のテンションで聞いてくる。素で言ってる感じが逆に腹が立つ。
「馬鹿にしてるだろ」
「梨花なら喜ぶのにな」
「園児と一緒にすんなよ」
…あ、もしかして、時岡にとって俺って梨花ちゃんみたいに世話を焼く存在なのか!?昨日の射的も子供扱いされてたなら腑に落ちる。
ステージを見終わり、模擬店が並ぶ場所へ来た。
「あ、一口ドーナツ気になってたんだよなぁ」
「ドーナツにしよ。俺、向こうで飲み物買ってくるから並んでて」
「はいよ」
休憩スペース用の教室内は誰も居なかった。
「お、貸切じゃん」
机の上にペットボトル2本、ドーナツの入った大きめのカップを置き、椅子に座った。
一口サイズのドーナツには、チョコソースがかかっていて、生クリームまで添えられている。
「あ、爪楊枝1本しかない」
「あー、もう1本お願いすんの忘れてた、悪りぃ」
「そんな困らないでしょ…はい」
爪楊枝にドーナツを刺し、向かい側に座る俺の口へ差し出す時岡。
えっと…これは爪楊枝ごと受け取ればいいの?それとも…
なんて迷ってる間に、軽く開いた口にドーナツを押し当てられる。
「あーん」
…ドキッ
これも子供扱い…?
されるがままにドーナツを口に入れ、時岡からの「甘い?」の問いかけに、視線を下に向け頷いた。この甘さはドーナツだけじゃない気がする…。
俺の恥ずかしさや照れなんて知らずに、時岡もドーナツを食べ始める。
「そういや、めっちゃ楽しかったから淀金たちが今日も縁日行くって言ってた」
「よかった。昨日改めて思ったけど、4人とも仲良しだよね」
「まあなー。あいつら引くほど良い奴なんだよ」
「またいつかゆっくり話してみたいかも」
「淀金たちと?」
「うん」
「いつでもウェルカムだと思う」
「なら安心。…昨日取ったトーイ王子のぬいぐるみ、どうしたの?」
「俺の部屋に飾ってる。梨花ちゃんの推しだしな」
「ついに丹羽もトーイ王子にハマったか」
「そうかも」
「あはっ。…ていうか、意外と丹羽が射的下手でびっくりした」
「俺ももっと上手いと思ってた。時岡のサポート無しじゃ惨敗するとこだったな。…あのサポートサービス、好評なんじゃない?」
「サービス?」
「ほら、昨日一緒に撃ってくれたじゃん」
「あぁー…」
時岡は開けかけたペットボトルのキャップを閉めて、俺の顔をじっと見た。
「あんなこと…丹羽以外にするわけないじゃん」
「…え」
「丹羽は特別だから…」
その言葉の意味を、その表情の意味を、必死で理解しようとするけど、頭が追いつかない。
その特別って…俺の求めてる特別?
受付の椅子に座った俺は、若干そわそわしている。
「ねぇ、俺にまで緊張と嬉しさが伝染してくるんだけど」
隣に座る片瀬が言ってきた。
「悪りぃ悪りぃ」
「まぁ、でも嬉しいよな。好きな相手がわざわざ時間合わせて来てくれるの」
「だよな。…つうか午前中、意外とたくさん見に来てくれてるな」
「ほんとだな」
2人で机の上の紙に記入されている来客数を見ていた。
「今、見ても大丈夫?」
前に人の足元が見えて、上を向くと時岡がいた。すぐ後ろには笠原と依田がいて、久しぶりに高身長トリオが揃うのを見た気がする。
「あ、うん。どうぞ…ごゆっくりご覧ください」
「ありがと」
時岡の後ろを、笠原は俺らにニコッとして中に入り、依田はこっちを見向きもせずに真顔のまま入っていった。
つうか、今さらだけど、高身長トリオって中身だけ見ると意外な組み合わせだよな。時岡はクールだけど少し抜けてる、笠原は爽やかで誰とでも仲良くなる、依田は頭が良いらしいが無愛想。まぁ、仲良くなり始めた俺もまた違うタイプだし、時岡は来るもの拒まずなのかもな。恋愛もそうだったら有利なんだけど…。
「丹羽が作ったのどこらへん?」
入り口に戻ってきた時岡が中から顔を覗かせ聞いてきた。
「え、俺が作ったの…うーんと」
「中で説明してきたら?」
片瀬が気を利かせて提案してくれる。
「俺と受付にいる片瀬や淀金が作ったのは、あの右上あたりなんだけど…」
ブロックの前で説明する俺は、ほんの少しだけ緊張している。
「へぇー、すご。丹羽、こういう細かい作業得意なんだ」
「別に得意とかではねーけど。…じゃ、俺戻るから」
「わざわざありがとう」
時岡と会話しただけで、脈が早くなる。こんなんで、明日の2人時間耐えられるかな。
13時半過ぎ。束の間の休憩時間中の鷲尾も含めて、4人で時岡のクラスが行う縁日体験に向かう。
「時岡、中にいるって言ってたよな」
「うん」
「あのさ、時岡が俺らにヤキモチ妬くか試さねぇ?」
「は?」
淀金の提案に眉をひそめた。
「いや、だから、丹羽が射的してる時に寄り添ってアドバイスする彼氏みたいなことしてさ、時岡がどんな反応するか見るんだって!」
「いや、意味わかんねーよ。そっと見守ってくれるんじゃなかった?」
「そのつもりだったんだけど、時岡の丹羽への脈あり疑惑を確信に近づけたいって思っちゃって」
「はぁ…余計なことすんなって。それで無反応だった時の俺の傷ついた心どうすんだよ」
「そん時は全力で慰めてやるから」
「…。」
受付を済ませ、中に入ると淀金の期待通りなのか、時岡が射的のコーナーに立っていた。
「あ、いらっしゃい」
俺に気づき、時岡は軽く笑みを浮かべ「4人ともする?」と聞いてくる。
「あ、とりあえず2人でお願いします!」
俺の代わりに淀金が元気よく答えた。
俺と淀金は横に並び、銃にコルク玉をセットする。5発撃つことができるらしく、何を狙うか決めようと景品を見たら、トーイ王子のぬいぐるみがあり、一瞬動揺してしまった。
とりあえず無難に軽そうなモノを狙って撃ってみたが擦りもしなかった。
射的に運動神経の良さって関係ねーのかな?
「え、意外とむず」
「うわ、当たんねぇ!」
淀金も1発目は外した。
2発目は狙いを変え、トーイ王子に向けて撃ったが数ミリずれてしまった。
「丹羽、本気でやってる?」
そう言った片瀬は、銃を構える俺の横に来て、軽く片手を添えてきた。
おい、まじか。淀金だけかと思ったら、片瀬まで乗り気だったのかよ。
「何狙う?」
「じゃあ、あそこのポテチ」
「おっけー」
狙いを定め、一緒に撃ったが見事に失敗。
「外してんじゃねーかよ!」
「ごめんごめん。頭ん中のイメージでは当たったんだけどな」
「じゃあ、次俺が手伝うな」
鷲尾が俺の横へ立とうとした時、
「サポートサービス可能ですけど、利用しますか?」
と時岡が言ってきた。
「えっ…あ、はい、お願いします」
期待通りの展開に淀金たちは目をキラキラさせているが、今の言い方はマニュアルに則ったものだと思う。多分、サポートってアドバイスとか景品を落ちやすいところに移動させるとか、そういうのだと…
「…!?」
時岡は俺を後ろから包み込む形で、両手を添えてきた。
え…ええ!?待って待って。今何が起こってる!?
周りで見ている淀金たちも、時岡の大胆な行動に驚いている。
「トーイ王子狙っていい?」
そう時岡に耳元で聞かれ、小さく頷いた俺の耳はすでに熱い。
…ドキドキドキ…ー
重なった指先で引き金を引くと、見事にトーイ王子に命中した。
「…わぁ!当たった!」
興奮して後ろを向くと、すぐ目の前に時岡の顔がきて、あまりの近さに心臓が止まりそうになる。
「…。」
「おめでとう」
「うん、サポートありがと…」
笠原のいる輪投げコーナーを楽しむ淀金たち。その様子をトーイ王子を抱き抱えて見る俺の鼓動は、全然落ち着いてくれない。
教室を出る際、時岡をチラッと見ると目が合い、口パクで「また明日」と言われた。緩みそうになる唇をぐっと噛み、軽く頷き教室を出た。
「いやぁー、あれは反則だろ!」
周りに人がいない渡り廊下に着き、淀金たちは興奮気味に話し始める。
「すげースムーズにあんなことするから、下心とか分かんなかったし。え、あれってヤキモキ?脈あり?」
「うーん、クールな表情のままだったもんな。つうか、あのサービス他の人にもしてんのかな」
「えー、女子がされたら即ノックアウトだろ」
「さすがに女子にはしないだろー」
男友達だからしたのかな…。
「もうさ、丹羽の顔がめちゃ乙女で、見てるこっちが恥ずくなったもん」
「いや、好きな奴にいきなりされたら無理だってぇ…。あいつ、毎回距離感おかしいんだよな。その度にこっちが無駄にドキドキしてさ…」
「でも、そーゆーとこも…?」
「…好き」
「あはは!ベタ惚れだな!逆に明日心配になるわ」
明日の俺…大丈夫か!?
翌日の今日は一般公開のため、校内はたくさんの人で賑わっていた。
午後、受付係を終えた俺は、廊下の窓に映る自分の髪型が変じゃないか確認しながら、時岡を待っている。
「お待たせ」
現れた時岡は、今日も安定のクールさでカッコいい。
「何から行こっか。昨日や今日の午前中、色々行った?」
「模擬店のスイーツ以外食って、あとは1年と2年のほぼ行ったかな」
「すご」
「淀金が制覇したがって」
「あー、なんかそんな感じするね。…ってことは、今日だけのステージ関連は観てないんだ?」
「うん、全然」
「じゃあ、ステージ観に行って、その後スイーツ食べようか」
「おっけ」
中庭の特設ステージに移動すると、ちょうど次の演目が始まるタイミングで、ステージ前には多くの人が集まっていた。
もちろん椅子席は埋まっていて、立ち見の人も大勢いたため、俺と時岡は後ろの方で見ることに。
「見える?肩車しようか?」
背伸びして見ようとしている俺に時岡が普通のテンションで聞いてくる。素で言ってる感じが逆に腹が立つ。
「馬鹿にしてるだろ」
「梨花なら喜ぶのにな」
「園児と一緒にすんなよ」
…あ、もしかして、時岡にとって俺って梨花ちゃんみたいに世話を焼く存在なのか!?昨日の射的も子供扱いされてたなら腑に落ちる。
ステージを見終わり、模擬店が並ぶ場所へ来た。
「あ、一口ドーナツ気になってたんだよなぁ」
「ドーナツにしよ。俺、向こうで飲み物買ってくるから並んでて」
「はいよ」
休憩スペース用の教室内は誰も居なかった。
「お、貸切じゃん」
机の上にペットボトル2本、ドーナツの入った大きめのカップを置き、椅子に座った。
一口サイズのドーナツには、チョコソースがかかっていて、生クリームまで添えられている。
「あ、爪楊枝1本しかない」
「あー、もう1本お願いすんの忘れてた、悪りぃ」
「そんな困らないでしょ…はい」
爪楊枝にドーナツを刺し、向かい側に座る俺の口へ差し出す時岡。
えっと…これは爪楊枝ごと受け取ればいいの?それとも…
なんて迷ってる間に、軽く開いた口にドーナツを押し当てられる。
「あーん」
…ドキッ
これも子供扱い…?
されるがままにドーナツを口に入れ、時岡からの「甘い?」の問いかけに、視線を下に向け頷いた。この甘さはドーナツだけじゃない気がする…。
俺の恥ずかしさや照れなんて知らずに、時岡もドーナツを食べ始める。
「そういや、めっちゃ楽しかったから淀金たちが今日も縁日行くって言ってた」
「よかった。昨日改めて思ったけど、4人とも仲良しだよね」
「まあなー。あいつら引くほど良い奴なんだよ」
「またいつかゆっくり話してみたいかも」
「淀金たちと?」
「うん」
「いつでもウェルカムだと思う」
「なら安心。…昨日取ったトーイ王子のぬいぐるみ、どうしたの?」
「俺の部屋に飾ってる。梨花ちゃんの推しだしな」
「ついに丹羽もトーイ王子にハマったか」
「そうかも」
「あはっ。…ていうか、意外と丹羽が射的下手でびっくりした」
「俺ももっと上手いと思ってた。時岡のサポート無しじゃ惨敗するとこだったな。…あのサポートサービス、好評なんじゃない?」
「サービス?」
「ほら、昨日一緒に撃ってくれたじゃん」
「あぁー…」
時岡は開けかけたペットボトルのキャップを閉めて、俺の顔をじっと見た。
「あんなこと…丹羽以外にするわけないじゃん」
「…え」
「丹羽は特別だから…」
その言葉の意味を、その表情の意味を、必死で理解しようとするけど、頭が追いつかない。
その特別って…俺の求めてる特別?



