こんな複雑な気持ちで大晦日を迎えたのは、人生で初めてだ。
クリスマスに俺は、時岡が好きな相手に想いを伝える後押しをした。今日までの間に伝えたかどうかは分からないけど、想いを伝えたいぐらいの相手がいる時点で、相当なダメージをくらっていた。
昼過ぎ、人が行き交う改札口付近で時岡を待っている。
ーそういや、2人だけで外で遊ぶの初めてだな。…あっ。
人混みの中ですぐに時岡を見つけられたのは、あいつの背が高いからだけじゃない。好きな人のことは、どこにいても光り輝いて見えちゃうもんだから。
「ごめん、お待たせ」
「ううん」
ショッピングモールに着いた俺たちは、とりあえずゲームコーナーへ行ってみる。
「どーする?メダルする?対戦系?」
「丹羽は運動神経良いってことは、対戦ゲームも強いの?」
「あたりめーじゃん」
「じゃあ、対戦しよ」
自信のある顔の時岡を見て、俺の闘争心に火がついた。
「負けたら夜飯のデザート奢りな?」
「いいよ」
時間を忘れるくらいに、2人で色んな対戦ゲームを楽しんだ。
「丹羽強すぎ」
全勝とまではいかなかったが、無事勝つことができた俺はとても満足している。
「あはは。デザートよろしくな」
時岡は「はいはい」と言いながら、俺の頭を軽くポンポンした。
「…。」
こんな些細なことで、キュンとなってしまう俺は単純なんだろうか。
夜になり回転寿司店へ行くと、店内は混雑していた。
「やっぱ家族連れが多いなぁ」
「カウンターの方が早く案内されそうだけど、テーブルの方がいい?」
「2人だしカウンターで大丈夫!」
カウンター席を希望したおかげで、すぐに席に着くことができた。
「寿司食べるの久々だ」
「俺も」
「淀金たちと来たりしないの?」
「あー、あいつらとはラーメンとかファミレスに行くことが多いかも。時岡は、依田たちと飯行ったりすんの?」
「たまにかな。笠原は部活あるし、依田は塾で、俺は迎えあるから、予定合う日が少なくて」
「そっか…」
高身長トリオは、みんな忙しいんだな。
「何にするの?」
タブレットでメニューを見ていたら、時岡がぐっと顔を寄せてきた。
…やべ、カウンター席の方が距離が近いんだった。
「…サーモンとマグロとイカ」
「俺もサーモンにしよっと」
「…。」
回転寿司でこんなドキドキする日が来るなんて…。
吐く息が白くなる頃、時岡の家に着いた。
「お邪魔しまーす」
「どうぞ」
リビングに入ると静かで、今日は梨花ちゃんがいないんだと実感する。
「上着かけておくから貸して」
「あ、さんきゅ」
何度か来てても、2人きりは初めてだし、やっぱり少し緊張するな…。
リビングでテレビを観ていると、お風呂が沸きましたの音声が聞こえる。
「どうする?前みたいに一緒に入る?」
普通のトーンで言ってくるから、冗談なのか本気なのか分かりにくい。
「あれは母さんの悪ノリだから。今日は別々でいいって」
「了解」
「はぁー…」
湯船に浸かりながらため息をつく俺は、今年が終わることなんかどうでもよくて、どんな気持ちで時岡と新年を迎えたらいいのか悩んでいる。
時岡に好きな人がいても、簡単に諦められないぐらいの域には達しているこの恋心。来年こそ鷲尾たちとの作戦を成し遂げようと思っていたのに、どう頑張りゃいいんだよ…。
「いっただきまーす」
23時半、時岡の用意してくれた年越しそばをソファ前にあるローテーブルで並んで食い始める。
「いただきます」
「…うめぇ。1年の最後に蕎麦食うの日本人らしくていいよな」
「そだね」
「大晦日でも、さすがにこの時間梨花ちゃんはもう寝てるよな?」
「うーん、どうだろ。いつもなら寝てるけど、ワクワクし過ぎて起きてるかも」
「あはは、可愛いな。つうか、寂しいから時岡もついてきてとか言われなかったん?」
「全然。むこうにいとこたちも来るから寂しくないんだよ」
「あ、そうなんだ」
「ふぅー、ごちそうさまでした。美味かった、ありがとな」
「いえいえ」
食べ終えた頃には、もやもやした気持ちは消えていた。というより一旦忘れて新年を迎えようと切り替えていた。
ソファに座って、どの番組観ながらカウントダウンするかな、と考えていたら、隣に座る時岡が突然テレビを消した。
「え、カウントダウンしねーの?」
「いや、するよ」
「なら…」
「あのさ、丹羽…」
「ん?」
…ちゅ
時岡の唇が俺の唇に重なった。
えっ…
「…キスしていい?」
「…。」
「…って言おうとしたんだけど、聞くより先に身体が動いてた」
「…えっと…何で…え、キス…」
突然の出来事に言葉が上手くまとまらない。
「好きだよ、丹羽」
「えっ…」
…今、好きって言われた気が…。俺の聞き間違い?
「丹羽は、俺のこと好き?」
至近距離で見つめながら聞かれて、心臓が止まるんじゃないかってぐらいドキドキしてる。
「…その好きは…友達として?それとも…恋愛の好き…?」
好きの種類を確かめる俺は、自分の好きと違ったらどうしようと不安に思ってる小心者だ。
「恋愛に決まってるじゃん」
「…っ!」
求めていた答えに体温が急上昇する。
「時岡の好きな人って…俺だったの?」
「うん」
「まじか…」
「やっぱ全然伝わってなかったんだ」
「…俺、なんかアピールされてた?」
「文化祭の時も、丹羽ん家泊まった時も、俺なりにしてたつもり」
俺は、まんまと時岡のアピールにドキドキしっぱなしだったわけだ。
「で、仁科は俺のことどう思ってる?」
改めて聞かれると照れてしまう。けど、やっと伝えられる。
「…すげぇ好き。もちろん、恋愛として」
俺の返事を聞いた時岡は、ニコッと嬉しそうに笑った。その姿を見て、胸の奥がぐっと熱くなる。
「俺ら両思いなんだよな…?つーことは…付き合っ…」
「あ、ちょっと待って」
手のひらでストップを示し、時計を指差した時岡。
時計の針は23時59分50秒を指している。
「…10.9.8.7.6.5.4.3.2.1…明けましておめでとう」
「明けましておめでと」
ふわっとした表情で口角を上げた時岡は、真っ直ぐに俺を見つめて改めて言う。
「…丹羽、俺と付き合ってほしい」
「はい…よろしくお願いします」
「じゃあ、今年から恋人としてよろしく」
「うん、よろしく」
やべぇ、めちゃくちゃ幸せなんだけど!
「このまま寝るのもったいないけど、初詣楽しみたいからもう寝よっか」
「そだな」
時岡の部屋でベッドに寝転んだ俺たち。
布団の中で、寝て起きたら夢だったなんてことが起きませんようにと願っていたら「丹羽、こっち向いて」と指示をされる。
体ごと向けた俺のおでこに優しくキスをした時岡。
「…ちゅ。…大好き」
ぶわぁー…、一気に顔が真っ赤になる。
ちょいっ!刺激が強すぎだってば!…え、もしかして、恋人の時岡って今までの比じゃないくらいの破壊力?…この先、俺の心臓大丈夫!?
朝、目覚めると「おはよ」と優しく微笑む時岡がすぐ隣にいる。
新年早々こんな幸せな朝を迎えるなんて、俺は前世でどんな良いことをしたんだ。
「…おはよぉ」
俺と時岡は、年越しと同時に恋人になった。付き合い始めた実感はまだないけど、見える景色は確実に違う。
「朝起きて時岡が隣にいるの、初めてな気がする」
「そうだっけ?」
「うん。毎回起きたら隣にいなかったし」
「どっちがいい?いるのといないの」
…なんだその意地悪な質問。
「…いるの」
「ふっ、分かった。今度から一言かけるよ」
「うん…」
初詣へ行くため、2人で電車に乗り込んだ。
そこまで混んでいなかったが、時岡は吊り革を持ち、もう片方の手で俺の腰あたりを支えた。
「…っ」
まぁまぁな密着度に照れてしまう。
神社には様々な露店が並び、正月らしい雰囲気に気分が上がる。
「賽銭して、おみくじ引こうぜ!」
「うん」
「せーのっ…」
同時におみくじを広げた。
「うぉっ!大吉だぁ!!…え、時岡もじゃん!」
「ダブル大吉だ」
「すごくね!?新年早々つーか、交際初日から縁起良すぎ」
「恋愛運…次の段階へ進め、だってさ」
「俺のは…この人より他になし…」
これって…
時岡を見ると目が合った。
…ドクンッ
「丹羽には俺しかいないってことか」
「…。」
露店で少し腹ごしらえをした後、神社周辺を散歩して、時岡の家に戻ることにした。
駅まで歩きながら、俺は時岡に聞いてみた。
「あのさ、実は前から時岡のこと鷲尾たちに色々相談乗ってもらってて、だから付き合えたの報告したいんだけど…いい?」
「もちろん」
「ありがとう」
さすがに鷲尾たち以外には言えないけど…。
「時岡は、依田たちになんか言ってたりしたの?」
「ううん、全く」
「あ、そうなんだ。恋バナとかしないんだな。あれ、でも笠原彼女いるよな?」
「うん。笠原から彼女との話は聞くけど、自分の恋愛はわざわざ言わないかな」
「そっか」
まぁ、相手が俺なら余計言えねーよな。
「付き合ったのも当分言うつもりないんだけど、それでもいい?」
「あ、うん、全然大丈夫」
「…。」
家に着き、時岡の部屋で帰りの準備をしていると、時岡がいきなり抱きついてきた。
「えっ!?ちょ、なに…」
「別に丹羽と付き合ってることが恥ずかしくて隠したいわけじゃないから。ただ、言わない方が周りの声を気にせず穏やかに過ごせると思うから」
…そうだよな、鷲尾たちみたいにすんなり受け入れてくれたほうが珍しい。
「…うん、分かってる」
「でもさ…」
「ん?」
「人前で隠す分、2人きりの時は我慢しないから…」
「…えっ」
…ちゅ
突然キスをしてきた時岡。そのキスは止まらず、深くなっていく。
「…んっ…」
え、待って待って!初日からぶっ飛ばし過ぎじゃない!?
やっと唇が離れ、
「…ほんとに今日帰っちゃうの?」
と色気を纏った時岡に言われた俺は腰が抜けそうだ。
本領発揮した時岡は、想像の何百倍も俺の心を乱していく。
クリスマスに俺は、時岡が好きな相手に想いを伝える後押しをした。今日までの間に伝えたかどうかは分からないけど、想いを伝えたいぐらいの相手がいる時点で、相当なダメージをくらっていた。
昼過ぎ、人が行き交う改札口付近で時岡を待っている。
ーそういや、2人だけで外で遊ぶの初めてだな。…あっ。
人混みの中ですぐに時岡を見つけられたのは、あいつの背が高いからだけじゃない。好きな人のことは、どこにいても光り輝いて見えちゃうもんだから。
「ごめん、お待たせ」
「ううん」
ショッピングモールに着いた俺たちは、とりあえずゲームコーナーへ行ってみる。
「どーする?メダルする?対戦系?」
「丹羽は運動神経良いってことは、対戦ゲームも強いの?」
「あたりめーじゃん」
「じゃあ、対戦しよ」
自信のある顔の時岡を見て、俺の闘争心に火がついた。
「負けたら夜飯のデザート奢りな?」
「いいよ」
時間を忘れるくらいに、2人で色んな対戦ゲームを楽しんだ。
「丹羽強すぎ」
全勝とまではいかなかったが、無事勝つことができた俺はとても満足している。
「あはは。デザートよろしくな」
時岡は「はいはい」と言いながら、俺の頭を軽くポンポンした。
「…。」
こんな些細なことで、キュンとなってしまう俺は単純なんだろうか。
夜になり回転寿司店へ行くと、店内は混雑していた。
「やっぱ家族連れが多いなぁ」
「カウンターの方が早く案内されそうだけど、テーブルの方がいい?」
「2人だしカウンターで大丈夫!」
カウンター席を希望したおかげで、すぐに席に着くことができた。
「寿司食べるの久々だ」
「俺も」
「淀金たちと来たりしないの?」
「あー、あいつらとはラーメンとかファミレスに行くことが多いかも。時岡は、依田たちと飯行ったりすんの?」
「たまにかな。笠原は部活あるし、依田は塾で、俺は迎えあるから、予定合う日が少なくて」
「そっか…」
高身長トリオは、みんな忙しいんだな。
「何にするの?」
タブレットでメニューを見ていたら、時岡がぐっと顔を寄せてきた。
…やべ、カウンター席の方が距離が近いんだった。
「…サーモンとマグロとイカ」
「俺もサーモンにしよっと」
「…。」
回転寿司でこんなドキドキする日が来るなんて…。
吐く息が白くなる頃、時岡の家に着いた。
「お邪魔しまーす」
「どうぞ」
リビングに入ると静かで、今日は梨花ちゃんがいないんだと実感する。
「上着かけておくから貸して」
「あ、さんきゅ」
何度か来てても、2人きりは初めてだし、やっぱり少し緊張するな…。
リビングでテレビを観ていると、お風呂が沸きましたの音声が聞こえる。
「どうする?前みたいに一緒に入る?」
普通のトーンで言ってくるから、冗談なのか本気なのか分かりにくい。
「あれは母さんの悪ノリだから。今日は別々でいいって」
「了解」
「はぁー…」
湯船に浸かりながらため息をつく俺は、今年が終わることなんかどうでもよくて、どんな気持ちで時岡と新年を迎えたらいいのか悩んでいる。
時岡に好きな人がいても、簡単に諦められないぐらいの域には達しているこの恋心。来年こそ鷲尾たちとの作戦を成し遂げようと思っていたのに、どう頑張りゃいいんだよ…。
「いっただきまーす」
23時半、時岡の用意してくれた年越しそばをソファ前にあるローテーブルで並んで食い始める。
「いただきます」
「…うめぇ。1年の最後に蕎麦食うの日本人らしくていいよな」
「そだね」
「大晦日でも、さすがにこの時間梨花ちゃんはもう寝てるよな?」
「うーん、どうだろ。いつもなら寝てるけど、ワクワクし過ぎて起きてるかも」
「あはは、可愛いな。つうか、寂しいから時岡もついてきてとか言われなかったん?」
「全然。むこうにいとこたちも来るから寂しくないんだよ」
「あ、そうなんだ」
「ふぅー、ごちそうさまでした。美味かった、ありがとな」
「いえいえ」
食べ終えた頃には、もやもやした気持ちは消えていた。というより一旦忘れて新年を迎えようと切り替えていた。
ソファに座って、どの番組観ながらカウントダウンするかな、と考えていたら、隣に座る時岡が突然テレビを消した。
「え、カウントダウンしねーの?」
「いや、するよ」
「なら…」
「あのさ、丹羽…」
「ん?」
…ちゅ
時岡の唇が俺の唇に重なった。
えっ…
「…キスしていい?」
「…。」
「…って言おうとしたんだけど、聞くより先に身体が動いてた」
「…えっと…何で…え、キス…」
突然の出来事に言葉が上手くまとまらない。
「好きだよ、丹羽」
「えっ…」
…今、好きって言われた気が…。俺の聞き間違い?
「丹羽は、俺のこと好き?」
至近距離で見つめながら聞かれて、心臓が止まるんじゃないかってぐらいドキドキしてる。
「…その好きは…友達として?それとも…恋愛の好き…?」
好きの種類を確かめる俺は、自分の好きと違ったらどうしようと不安に思ってる小心者だ。
「恋愛に決まってるじゃん」
「…っ!」
求めていた答えに体温が急上昇する。
「時岡の好きな人って…俺だったの?」
「うん」
「まじか…」
「やっぱ全然伝わってなかったんだ」
「…俺、なんかアピールされてた?」
「文化祭の時も、丹羽ん家泊まった時も、俺なりにしてたつもり」
俺は、まんまと時岡のアピールにドキドキしっぱなしだったわけだ。
「で、仁科は俺のことどう思ってる?」
改めて聞かれると照れてしまう。けど、やっと伝えられる。
「…すげぇ好き。もちろん、恋愛として」
俺の返事を聞いた時岡は、ニコッと嬉しそうに笑った。その姿を見て、胸の奥がぐっと熱くなる。
「俺ら両思いなんだよな…?つーことは…付き合っ…」
「あ、ちょっと待って」
手のひらでストップを示し、時計を指差した時岡。
時計の針は23時59分50秒を指している。
「…10.9.8.7.6.5.4.3.2.1…明けましておめでとう」
「明けましておめでと」
ふわっとした表情で口角を上げた時岡は、真っ直ぐに俺を見つめて改めて言う。
「…丹羽、俺と付き合ってほしい」
「はい…よろしくお願いします」
「じゃあ、今年から恋人としてよろしく」
「うん、よろしく」
やべぇ、めちゃくちゃ幸せなんだけど!
「このまま寝るのもったいないけど、初詣楽しみたいからもう寝よっか」
「そだな」
時岡の部屋でベッドに寝転んだ俺たち。
布団の中で、寝て起きたら夢だったなんてことが起きませんようにと願っていたら「丹羽、こっち向いて」と指示をされる。
体ごと向けた俺のおでこに優しくキスをした時岡。
「…ちゅ。…大好き」
ぶわぁー…、一気に顔が真っ赤になる。
ちょいっ!刺激が強すぎだってば!…え、もしかして、恋人の時岡って今までの比じゃないくらいの破壊力?…この先、俺の心臓大丈夫!?
朝、目覚めると「おはよ」と優しく微笑む時岡がすぐ隣にいる。
新年早々こんな幸せな朝を迎えるなんて、俺は前世でどんな良いことをしたんだ。
「…おはよぉ」
俺と時岡は、年越しと同時に恋人になった。付き合い始めた実感はまだないけど、見える景色は確実に違う。
「朝起きて時岡が隣にいるの、初めてな気がする」
「そうだっけ?」
「うん。毎回起きたら隣にいなかったし」
「どっちがいい?いるのといないの」
…なんだその意地悪な質問。
「…いるの」
「ふっ、分かった。今度から一言かけるよ」
「うん…」
初詣へ行くため、2人で電車に乗り込んだ。
そこまで混んでいなかったが、時岡は吊り革を持ち、もう片方の手で俺の腰あたりを支えた。
「…っ」
まぁまぁな密着度に照れてしまう。
神社には様々な露店が並び、正月らしい雰囲気に気分が上がる。
「賽銭して、おみくじ引こうぜ!」
「うん」
「せーのっ…」
同時におみくじを広げた。
「うぉっ!大吉だぁ!!…え、時岡もじゃん!」
「ダブル大吉だ」
「すごくね!?新年早々つーか、交際初日から縁起良すぎ」
「恋愛運…次の段階へ進め、だってさ」
「俺のは…この人より他になし…」
これって…
時岡を見ると目が合った。
…ドクンッ
「丹羽には俺しかいないってことか」
「…。」
露店で少し腹ごしらえをした後、神社周辺を散歩して、時岡の家に戻ることにした。
駅まで歩きながら、俺は時岡に聞いてみた。
「あのさ、実は前から時岡のこと鷲尾たちに色々相談乗ってもらってて、だから付き合えたの報告したいんだけど…いい?」
「もちろん」
「ありがとう」
さすがに鷲尾たち以外には言えないけど…。
「時岡は、依田たちになんか言ってたりしたの?」
「ううん、全く」
「あ、そうなんだ。恋バナとかしないんだな。あれ、でも笠原彼女いるよな?」
「うん。笠原から彼女との話は聞くけど、自分の恋愛はわざわざ言わないかな」
「そっか」
まぁ、相手が俺なら余計言えねーよな。
「付き合ったのも当分言うつもりないんだけど、それでもいい?」
「あ、うん、全然大丈夫」
「…。」
家に着き、時岡の部屋で帰りの準備をしていると、時岡がいきなり抱きついてきた。
「えっ!?ちょ、なに…」
「別に丹羽と付き合ってることが恥ずかしくて隠したいわけじゃないから。ただ、言わない方が周りの声を気にせず穏やかに過ごせると思うから」
…そうだよな、鷲尾たちみたいにすんなり受け入れてくれたほうが珍しい。
「…うん、分かってる」
「でもさ…」
「ん?」
「人前で隠す分、2人きりの時は我慢しないから…」
「…えっ」
…ちゅ
突然キスをしてきた時岡。そのキスは止まらず、深くなっていく。
「…んっ…」
え、待って待って!初日からぶっ飛ばし過ぎじゃない!?
やっと唇が離れ、
「…ほんとに今日帰っちゃうの?」
と色気を纏った時岡に言われた俺は腰が抜けそうだ。
本領発揮した時岡は、想像の何百倍も俺の心を乱していく。



