今日は着ぐるみの正体が俺だと告白して以来、初めて時岡兄妹が遊園地に来る日だ。
「ついにバラしたんだねぇ」
スタッフルームで準備をしながら、手嶋さんたちと話しをしていた。
「もちろん兄の方にだけですけどね」
「黙ってたのひどいとか言われなかったの?」
「はい。むしろ教えてくれてありがとうみたいな」
「うわー、ほんとその友達良い子だね」
「絶対モテるし、彼女いるな」
「彼女は多分いないです」
「まじ!?手嶋ちゃん、チャンスじゃん!」
「え、私ですか!?」
「そろそろクリスマスやお正月、冬はイベント盛りだくさんだし、彼氏欲しくなるでしょ?」
「彼氏できたら私、ポップ姫卒業しちゃいますよ?」
「え、なんで」
「だってイベント当日が忙しい仕事じゃないですか。彼氏とイベント楽しむなら無理ですよ」
「あーなるほど。うん、手嶋ちゃんにはフリーでいてもらう、またはイベント楽しめないぐらい多忙な彼氏のみ付き合うことにしてもらおう」
「なんか複雑なんですけどー」
冬のイベントかぁ…。イベントじゃなくていいから、何か冬の思い出を時岡と作れたらいいな。…なんて、付き合ってもねーのに贅沢なわがままか。
トーイ王子とポップ姫のステージショーが始まり、前列に梨花ちゃんと時岡がいるのを確認できた。何も知らない梨花ちゃんは、いつも通りトーイ王子に全力の愛を捧ぐ。その横で微笑んでいる時岡は、一体どういう気持ちで見ているんだろうか。
ステージイベントが終わり、ウサギとして風船片手に園内を歩く俺。
「にぃに!ウサギさんいるよ!!」
声が聞こえて、周りを確認すると梨花ちゃんがこっちに走ってきている。もちろん、その後ろには時岡の姿があって、ステージとは違うこの距離感で会うのが微妙に恥ずかしい。
「ウサギさん、久しぶり」
梨花ちゃんの前だからなのか、いつも通りのテンションで絡んでくる時岡に、俺は軽く会釈する。
「にぃにとウサギさん、なかよしだね!」
「うん」
「でもここでしかあえないからさみしいよねぇ?」
梨花ちゃんは無邪気に質問する。
「たしかに。どうやったらもっと会えるんだろ」
「あ!サンタさんにおねがいしたらいいんじゃない?」
あはっ、子供は純粋で良いなぁ。
「もっと会えますようにって?」
「うん!」
「そうしよっかな」
「そろそろ行こうか」
「うん。ウサギさんばいばーい!」
お別れのハグをしてきた梨花ちゃんをギュッとしていると、時岡も目の前に来て、
「ウサギさん、またね…」
と顔を近づけてきた。
…ん?なんか今…
「あー、にぃに、ウサギさんのおはなにチューしたぁ!ラブラブー!」
…は!?鼻にチュー!?
中で動揺する俺を無視して、何事もなかったように梨花ちゃんと手を繋ぎ去って行く時岡。
「…。」
…いやいや、許可なく着ぐるみにキスすんの禁止だからーー!!
数日後、寒波の影響で朝から極寒の今日は、暖房の効いた教室から誰も出たがらない。
昼休み、ジャンケンに負けた俺は、淀金たちの分まで自販機にホットドリンクを買いに行くことになった。
マフラーをぐるぐる巻き、ガタガタと震えながら自販機の前に立つ。
鷲尾がカフェオレで、片瀬がホットレモン、淀金は…
ボタンを押す悴む指先に突然手のひらが重なった。
えっ…
「パシリ?」
そう聞いてきたのは時岡だ。
…ドキッ
「びっくりしたぁ…。温もりを求めたジャンケンに負けただけ」
「今日ほんと寒いもんね」
「いっそのこと雪降ってくれた方がテンション上がるのにな」
「まぁね」
ホッカイロ代わりにドリンクをブレザーの両ポケットに入れ、残りの2本で手を温めながら教室へ向かう。
「クリスマスや年末年始もバイト?」
隣でコーンスープの缶を両手で持つ時岡が聞いてくる。
「まぁ、だいたいバイトかな。大晦日と元日は休みなって言ってくれたから休むけど」
「じゃあさ…俺の家で年越ししない?」
「…えっ、年越し?梨花ちゃんたちと?」
「ううん、2人で」
「ん!?2人!?」
「うちの母親、年末年始はいつも長めに休み取るの。それで祖父母の家に帰省するんだけど、今年は俺ついて行かずに留守番しようと思ってて」
「え、でも、俺じゃなくて笠原や依田とした方が…」
「あ、もしかして淀金たちとする予定?」
「いや、そういうわけじゃねぇけど…」
え、何で俺年越し誘われたの!?いや、死ぬほど嬉しいよ!?でも、こんな展開予想してなかったから、なんか心の準備が…。
「じゃあ、予定空けてて」
「…う、うん」
教室に戻った俺は、まだ現実が飲み込めてない。
「おーい、丹羽ー。冷めるだろー早く」
「はいはい」
「はぁーあったまるー」
満足そうに飲んでいる淀金の隣で、マフラーも取らず、一点を見つめる俺に鷲尾が声をかける。
「どした、ぼーっとして」
「…あのさ、クリスマスと年越しって、一緒に過ごすのどっちが特別?」
「なんだよいきなり。うーん、人それぞれじゃね?」
「彼女とならクリスマスがいいな、俺は」
「俺は年越しの方が特別に感じるな。だって、カウントダウンを一緒にするって貴重じゃない?」
「たしかに高校生の俺らは、日跨いで一緒にいる方が難易度高いか。となると今は年越しの方が特別かもな」
「丹羽はどう思うの?」
「俺は…相手が時岡ならなんだって…」
「…は!?時岡!?」
「なに、もしかして時岡に誘われたの!?クリスマス?年越し?」
「…年越し」
「えぇー!?まじか!え、お前らもう付き合ってんの?」
「いや…」
「急展開だなぁ。じゃあ、クリスマス作戦じゃなくて、年越し作戦を計画しなきゃ」
「つうか、何で丹羽はもっと嬉しそうじゃねーの?」
「いや、すげぇ嬉しいんだけど…」
「どういう意味で誘われたのかって?」
鷲尾が冷静に俺の複雑な気持ちを察する。
「うん…。もちろん、友達として誘ってくれたと思うんだけど、でもどっかで期待しちゃいそうな自分がいて…」
「好きな相手に誘われたんだし、期待してもいいじゃん。年越し誘うってことは、普通の友達以上の存在だろ?」
「親友的な?まぁ、俺らのポジションは譲れねーけど、時岡にとって丹羽は特別な日に一緒にいたい人なんだろ。つうか、この前の沼ってる発言もそうだし、時岡も丹羽のこと結構好きなんじゃね!?」
「両思いへの確率上がってきてるよな」
「つうかさ、時岡の好みとか彼女いるとか聞いたことあんの?」
「ないけど…彼女はいないはず」
「あ、そういや体育祭の時、彼女作る気ないって告白断ってたよな?だから彼女はいないとして、好きな人もいねーのかな?」
時岡に好きな人…。想像したことなかったな。
1週間後のクリスマスイブ。体育館では終業式が行われ、すでに冬休み気分の生徒たちは校長の話を適当に聞き流している。
「人口密度のおかけで、体育館の中あんま寒くなかったな」
「だな」
式が終わり、3年と2年が先に出て行くのを片瀬と話しながら待っていたら、近くにいた時岡が友達と話しているのがたまたま聞こえてくる。
「時岡はクリスマスどうすんの?」
「明日は地元の友達と遊ぶ」
「可愛い女の子とデートとかすればいいのに、モテるんだし。つうか、時岡好きな子とか気になる子いねーの?」
今一番聞きたいことが話題になり、全神経を耳に集中させ、時岡の返事をそわそわしながら待つ。
「…いるよ、好きな子」
…!!
「え、そうなの!?同じ学校の子?」
「内緒」
…好きな子いるんだ…。そっか…。
「…。」
「丹羽?進んでるぞー」
「えっ、あ、ごめん」
クリスマスの今日は、昼から夜までバイトだ。昨日から年始3日まで閉園時間が長くなり、イルミネーションイベントが始まる。その為この時期は、イルミネーション目当てのカップルや大人の来園が増えるらしい。
昨日と今日のトーイ王子は、サンタ姿でイベントを盛り上げる。
17時過ぎ。ウサギを着た俺は、イルミネーションに向け園内を巡回する。
今日もカップルいっぱいだなぁ。寒いのによく外でイチャつけるよなー。
「あ、いた」
聞き覚えのある声に振り向くと、男子4人を引き連れた時岡が立っていた。
「慎、このウサギ好きなん?」
「ウサギさんと親友だから」
「あはは、慎の交友関係広すぎ」
「俺ちょっとウサギさんと話したいから、先行っといて」
「りょーかい」
ウサギの横を歩く時岡は、喋れない俺の代わりに一方的に話し始める。
「街のほうで遊んでたら1人が急にイルミが見たいって言い出して、夕方からのチケット安いし行くかって」
時岡が高校の奴以外といるの初めて見たけど、高校生らしいことしてて安心した。
「そうだ、ウサギさんに聞いてほしい話があってさ…」
何だろ。梨花ちゃんのことかな。
「俺、実は今好きな人がいるんだ」
まさかこのタイミングで知らされるなんて思ってなくて思わず足が止まった。
…知ってるよ。つうか、中身が俺だと分かってて話してきてんだよな?
「振り向いてもらえるように頑張ってるけど、クリスマスも誘えなくて」
なんかこれ、恋愛相談されてる?…頑張んなくても、好きって言えば即付き合えるって。…そっか、クリスマスは好きな相手だから勇気出なくて誘えなかったんだ。クリスマスより年越しの方が特別だなんて思ってた自分が恥ずかしい。
「普段からしてるアピールも全然意味ないし、上手くいくか不安なんだよね」
俺がドキドキさせれなくて悩んでる間、時岡は他の子にアピール頑張ってたわけか。どんなアピールしたのか知らねーけど、いつものクールな感じなら伝わってねぇ可能性大だな。多分、ストレートに言葉で好きって伝えた方が早い気がする。…って、こんなアドバイスすんの虚しいな。
俺は、両手で作ったハートを胸の前で見せ、ボクシングの右ストレートのポーズをしてみせた。
「えっと…あれか。気持ちをストレートに伝えろってことだよね?合ってる?」
時岡の言葉に大きく頷いた。
「ふっ、さすがウサギさん。ありがとう、なんか頑張れそう。じゃあ、また大晦日」
嬉しそうに去って行く時岡の姿をただただ見ることしかできなかった。
俺、なに背中押してんだろ…。時岡に好きって言われたら100%オッケーするじゃん。
「ついにバラしたんだねぇ」
スタッフルームで準備をしながら、手嶋さんたちと話しをしていた。
「もちろん兄の方にだけですけどね」
「黙ってたのひどいとか言われなかったの?」
「はい。むしろ教えてくれてありがとうみたいな」
「うわー、ほんとその友達良い子だね」
「絶対モテるし、彼女いるな」
「彼女は多分いないです」
「まじ!?手嶋ちゃん、チャンスじゃん!」
「え、私ですか!?」
「そろそろクリスマスやお正月、冬はイベント盛りだくさんだし、彼氏欲しくなるでしょ?」
「彼氏できたら私、ポップ姫卒業しちゃいますよ?」
「え、なんで」
「だってイベント当日が忙しい仕事じゃないですか。彼氏とイベント楽しむなら無理ですよ」
「あーなるほど。うん、手嶋ちゃんにはフリーでいてもらう、またはイベント楽しめないぐらい多忙な彼氏のみ付き合うことにしてもらおう」
「なんか複雑なんですけどー」
冬のイベントかぁ…。イベントじゃなくていいから、何か冬の思い出を時岡と作れたらいいな。…なんて、付き合ってもねーのに贅沢なわがままか。
トーイ王子とポップ姫のステージショーが始まり、前列に梨花ちゃんと時岡がいるのを確認できた。何も知らない梨花ちゃんは、いつも通りトーイ王子に全力の愛を捧ぐ。その横で微笑んでいる時岡は、一体どういう気持ちで見ているんだろうか。
ステージイベントが終わり、ウサギとして風船片手に園内を歩く俺。
「にぃに!ウサギさんいるよ!!」
声が聞こえて、周りを確認すると梨花ちゃんがこっちに走ってきている。もちろん、その後ろには時岡の姿があって、ステージとは違うこの距離感で会うのが微妙に恥ずかしい。
「ウサギさん、久しぶり」
梨花ちゃんの前だからなのか、いつも通りのテンションで絡んでくる時岡に、俺は軽く会釈する。
「にぃにとウサギさん、なかよしだね!」
「うん」
「でもここでしかあえないからさみしいよねぇ?」
梨花ちゃんは無邪気に質問する。
「たしかに。どうやったらもっと会えるんだろ」
「あ!サンタさんにおねがいしたらいいんじゃない?」
あはっ、子供は純粋で良いなぁ。
「もっと会えますようにって?」
「うん!」
「そうしよっかな」
「そろそろ行こうか」
「うん。ウサギさんばいばーい!」
お別れのハグをしてきた梨花ちゃんをギュッとしていると、時岡も目の前に来て、
「ウサギさん、またね…」
と顔を近づけてきた。
…ん?なんか今…
「あー、にぃに、ウサギさんのおはなにチューしたぁ!ラブラブー!」
…は!?鼻にチュー!?
中で動揺する俺を無視して、何事もなかったように梨花ちゃんと手を繋ぎ去って行く時岡。
「…。」
…いやいや、許可なく着ぐるみにキスすんの禁止だからーー!!
数日後、寒波の影響で朝から極寒の今日は、暖房の効いた教室から誰も出たがらない。
昼休み、ジャンケンに負けた俺は、淀金たちの分まで自販機にホットドリンクを買いに行くことになった。
マフラーをぐるぐる巻き、ガタガタと震えながら自販機の前に立つ。
鷲尾がカフェオレで、片瀬がホットレモン、淀金は…
ボタンを押す悴む指先に突然手のひらが重なった。
えっ…
「パシリ?」
そう聞いてきたのは時岡だ。
…ドキッ
「びっくりしたぁ…。温もりを求めたジャンケンに負けただけ」
「今日ほんと寒いもんね」
「いっそのこと雪降ってくれた方がテンション上がるのにな」
「まぁね」
ホッカイロ代わりにドリンクをブレザーの両ポケットに入れ、残りの2本で手を温めながら教室へ向かう。
「クリスマスや年末年始もバイト?」
隣でコーンスープの缶を両手で持つ時岡が聞いてくる。
「まぁ、だいたいバイトかな。大晦日と元日は休みなって言ってくれたから休むけど」
「じゃあさ…俺の家で年越ししない?」
「…えっ、年越し?梨花ちゃんたちと?」
「ううん、2人で」
「ん!?2人!?」
「うちの母親、年末年始はいつも長めに休み取るの。それで祖父母の家に帰省するんだけど、今年は俺ついて行かずに留守番しようと思ってて」
「え、でも、俺じゃなくて笠原や依田とした方が…」
「あ、もしかして淀金たちとする予定?」
「いや、そういうわけじゃねぇけど…」
え、何で俺年越し誘われたの!?いや、死ぬほど嬉しいよ!?でも、こんな展開予想してなかったから、なんか心の準備が…。
「じゃあ、予定空けてて」
「…う、うん」
教室に戻った俺は、まだ現実が飲み込めてない。
「おーい、丹羽ー。冷めるだろー早く」
「はいはい」
「はぁーあったまるー」
満足そうに飲んでいる淀金の隣で、マフラーも取らず、一点を見つめる俺に鷲尾が声をかける。
「どした、ぼーっとして」
「…あのさ、クリスマスと年越しって、一緒に過ごすのどっちが特別?」
「なんだよいきなり。うーん、人それぞれじゃね?」
「彼女とならクリスマスがいいな、俺は」
「俺は年越しの方が特別に感じるな。だって、カウントダウンを一緒にするって貴重じゃない?」
「たしかに高校生の俺らは、日跨いで一緒にいる方が難易度高いか。となると今は年越しの方が特別かもな」
「丹羽はどう思うの?」
「俺は…相手が時岡ならなんだって…」
「…は!?時岡!?」
「なに、もしかして時岡に誘われたの!?クリスマス?年越し?」
「…年越し」
「えぇー!?まじか!え、お前らもう付き合ってんの?」
「いや…」
「急展開だなぁ。じゃあ、クリスマス作戦じゃなくて、年越し作戦を計画しなきゃ」
「つうか、何で丹羽はもっと嬉しそうじゃねーの?」
「いや、すげぇ嬉しいんだけど…」
「どういう意味で誘われたのかって?」
鷲尾が冷静に俺の複雑な気持ちを察する。
「うん…。もちろん、友達として誘ってくれたと思うんだけど、でもどっかで期待しちゃいそうな自分がいて…」
「好きな相手に誘われたんだし、期待してもいいじゃん。年越し誘うってことは、普通の友達以上の存在だろ?」
「親友的な?まぁ、俺らのポジションは譲れねーけど、時岡にとって丹羽は特別な日に一緒にいたい人なんだろ。つうか、この前の沼ってる発言もそうだし、時岡も丹羽のこと結構好きなんじゃね!?」
「両思いへの確率上がってきてるよな」
「つうかさ、時岡の好みとか彼女いるとか聞いたことあんの?」
「ないけど…彼女はいないはず」
「あ、そういや体育祭の時、彼女作る気ないって告白断ってたよな?だから彼女はいないとして、好きな人もいねーのかな?」
時岡に好きな人…。想像したことなかったな。
1週間後のクリスマスイブ。体育館では終業式が行われ、すでに冬休み気分の生徒たちは校長の話を適当に聞き流している。
「人口密度のおかけで、体育館の中あんま寒くなかったな」
「だな」
式が終わり、3年と2年が先に出て行くのを片瀬と話しながら待っていたら、近くにいた時岡が友達と話しているのがたまたま聞こえてくる。
「時岡はクリスマスどうすんの?」
「明日は地元の友達と遊ぶ」
「可愛い女の子とデートとかすればいいのに、モテるんだし。つうか、時岡好きな子とか気になる子いねーの?」
今一番聞きたいことが話題になり、全神経を耳に集中させ、時岡の返事をそわそわしながら待つ。
「…いるよ、好きな子」
…!!
「え、そうなの!?同じ学校の子?」
「内緒」
…好きな子いるんだ…。そっか…。
「…。」
「丹羽?進んでるぞー」
「えっ、あ、ごめん」
クリスマスの今日は、昼から夜までバイトだ。昨日から年始3日まで閉園時間が長くなり、イルミネーションイベントが始まる。その為この時期は、イルミネーション目当てのカップルや大人の来園が増えるらしい。
昨日と今日のトーイ王子は、サンタ姿でイベントを盛り上げる。
17時過ぎ。ウサギを着た俺は、イルミネーションに向け園内を巡回する。
今日もカップルいっぱいだなぁ。寒いのによく外でイチャつけるよなー。
「あ、いた」
聞き覚えのある声に振り向くと、男子4人を引き連れた時岡が立っていた。
「慎、このウサギ好きなん?」
「ウサギさんと親友だから」
「あはは、慎の交友関係広すぎ」
「俺ちょっとウサギさんと話したいから、先行っといて」
「りょーかい」
ウサギの横を歩く時岡は、喋れない俺の代わりに一方的に話し始める。
「街のほうで遊んでたら1人が急にイルミが見たいって言い出して、夕方からのチケット安いし行くかって」
時岡が高校の奴以外といるの初めて見たけど、高校生らしいことしてて安心した。
「そうだ、ウサギさんに聞いてほしい話があってさ…」
何だろ。梨花ちゃんのことかな。
「俺、実は今好きな人がいるんだ」
まさかこのタイミングで知らされるなんて思ってなくて思わず足が止まった。
…知ってるよ。つうか、中身が俺だと分かってて話してきてんだよな?
「振り向いてもらえるように頑張ってるけど、クリスマスも誘えなくて」
なんかこれ、恋愛相談されてる?…頑張んなくても、好きって言えば即付き合えるって。…そっか、クリスマスは好きな相手だから勇気出なくて誘えなかったんだ。クリスマスより年越しの方が特別だなんて思ってた自分が恥ずかしい。
「普段からしてるアピールも全然意味ないし、上手くいくか不安なんだよね」
俺がドキドキさせれなくて悩んでる間、時岡は他の子にアピール頑張ってたわけか。どんなアピールしたのか知らねーけど、いつものクールな感じなら伝わってねぇ可能性大だな。多分、ストレートに言葉で好きって伝えた方が早い気がする。…って、こんなアドバイスすんの虚しいな。
俺は、両手で作ったハートを胸の前で見せ、ボクシングの右ストレートのポーズをしてみせた。
「えっと…あれか。気持ちをストレートに伝えろってことだよね?合ってる?」
時岡の言葉に大きく頷いた。
「ふっ、さすがウサギさん。ありがとう、なんか頑張れそう。じゃあ、また大晦日」
嬉しそうに去って行く時岡の姿をただただ見ることしかできなかった。
俺、なに背中押してんだろ…。時岡に好きって言われたら100%オッケーするじゃん。



