時岡が我が家へ泊まりに来ている。ここ数日間、ある程度の心構えをして、色んなシチュエーションもした。だけど…一緒に風呂に入るなんて聞いてないっ!!
「時岡くん、ここに新品のタオル置いておくから使ってねー」
「はい、ありがとうございます」
「そこにある入浴剤とか好きに使ってね。じゃあ、ごゆっくりー」
息子がピンチに陥っているのに、母さんは呑気なことを言い残し、出て行く。
「優しいお母さんだよね」
時岡は時岡でこの状況に何の焦りもない様子。
「いつも入浴剤入れてるの?」
「おれはたまに。うちの母さん、風呂の時間に命かけてて、めっちゃ長風呂なの。いかに優雅にリラックスして入るかを考えてるから、入浴剤は色んな種類を常備してるし、浴室の中はLEDキャンドルとか美容グッズとか色々置いてる。あと他の家より浴槽はデカめだと思う」
「こだわり凄っ。…どの入浴剤にする?」
「時岡が決めて」
入浴剤を選んだ時岡は、何の躊躇もなく制服を脱ぎ始める。いや、普通は男友達となら躊躇わないんだけど、俺はそうも言ってられない。
「…制服シワになるといけねーから、とりあえずこのハンガーに掛けといて」
「ありがとう」
「おぉ、ほんとにデカい」
先に浴室に入った時岡は、浴槽の大きさに感動している。その後ろから緊張気味に入る俺が、目のやり場に困っているのは言うまでもない。
何とか湯船に浸かる段階まできた俺は、時岡の選んだ入浴剤が乳白色なことに安堵した。
「2人入っても余裕の広さいいね」
人のドキドキも知らずに、時岡は風呂の快適さに機嫌が良い。
「あ、さっき言ってたキャンドルライトってあれ?」
「あー、うん」
「丹羽もよく使うの?」
「さすがに俺が1人で使ってたらキモいだろ」
「せっかくだし、してみたいかも」
「え?別にいいけど」
電源を入れたキャンドルライトをお湯に浮かべ、浴室の電気を消した。
カラフルな光に優しく包まれた空間が想像以上に幻想的で、思わず「おぉー」と声が出た。
「綺麗…」
光を見つめながら言う時岡の顔は、額縁に納めたいぐらいカッコよくて色っぽい。今俺の頬が真っ赤になっても、湯船に浸かっているせいにすればいいのは有難い。
明日も学校だから夜更かしするわけにもいかず、俺はベッド横に布団を敷き、寝る準備を進める。
敷き終わると時岡が聞いてくる。
「淀金たちも泊まったことあるんだよね?」
「うん。3人まとめて泊まりに来たんだけどさ、ベッドに2人、この敷布団に2人で寝るわけじゃん?普通俺がベッドなのは確定なはずなのに、4人でジャンケンって言い出して、結局俺も負けて下で寝たんだよ。しかもさ、淀金の寝相が死ぬほど悪くて、寝ぼけて俺のこと抱き枕扱いしてきてさ」
「へぇ、そうなんだ」
電気を消し、俺はベッド、時岡は敷布団に寝転んだ。
「おやすみ」
「おやすみー」
結局、淀金たちとの作戦は何一つ実行出来ず、俺が1人時岡にドキドキ、きゅんきゅんしてただけだったな。つうか、付き合ってもない相手をドキドキさせるのって難易度高くね?うーん…
「あのさ…」
寝たと思っていた時岡が声をかけてきた。
「どした?」
「丹羽、こっちの布団で寝ない?」
「ん?…あ、もしかしてベッドで寝たかった?悪りぃ、俺の使ってるベッドより客用の布団がいいと思ってたわ。全然いいよ、交代しよ」
ベットから起き上がり、敷布団の方へ動くと
「…じゃなくて」
と言い、寝転んだまま掛け布団をめくった時岡は続けてこう言った。
「こっちの布団で一緒に寝ようって意味」
「…え?」
…いやいや、なんで!?
「ほら、早く入って」
「え、でも…」
戸惑う俺の腕をぐいっと引っ張り、強引に隣に寝かせてきた。
…ドキッ
やっと落ち着いていた鼓動がまた激しくなる。そんな俺に追い打ちをかけるように囁き声で言ってくる。
「今日は俺の抱き枕になって…」
そして、仰向けの俺を横からぎゅっと抱きしめ、脚を絡ませてきた。
…え!?待って待って、どういう状態!?
「夜は冷えるから、こうした方があったかい」
いやいや、そういう問題じゃねーよ!体温が急上昇して、むしろ暑いんだよこっちは!
俺のドキドキが止まる前に、時岡はスヤスヤと眠ってしまった。身長差もあり、完全に包まれる体勢だから本当に抱き枕になった気分だ。
「…。」
こういうこと仲良い友達なら誰にでもすんのかな?俺にだけならいいのに…。
翌朝、アラームで目が覚めると俺は布団の中に1人だった。部屋に時岡はいなくて、前も朝起きたらいなかったな、と思いながら眠い目を擦り、1階へ降りていく。
「あ、やっと起きてきた」
母さんが俺の朝飯を運びながら言ってくる。
リビングのダイニングテーブルには、父さんと姉貴、そして制服姿の時岡が座っていて、すでに朝飯を食べ始めていた。いつもならこの時間すっぴんでいるはずの姉貴は、すでにメイクをばっちり済ませている。なんて分かりやすい女だ。
「時岡くん、ぐっすり寝れた?」
母さんの何気ない質問にドキッとしてしまう。
「はい、すごく寝心地が良くて、熟睡できました」
「…。」
誰かさんにずっとホールドされてて、こっちは寝不足だっつーの。
なんて言いつつ、泊まりに来てくれて、この後一緒に登校できることに、叫びたいくらい幸せな気持ちになっている。
2人で電車に乗ると、いつもは乗っていない時岡がいることに気付いた高校の女子たちは、ヒソヒソと話し、頬を赤らめている。
女子の皆さん、昨夜俺は時岡の抱き枕になったんだよ。みんなは一生経験しない…いや、そうとは限らないか。今は恋愛する気ない時岡も、いつか時間と心に余裕ができたら彼女作って、その子を抱き枕にしたり、特別扱いしたり…。
「…。」
教室に入ると、ニヤニヤした淀金たちが近寄ってくる。
「丹羽おはよう」
「おはよー」
「何で返信しねぇんだよー!」
そういや、昨日グループメッセージにウザいくらい大量のスタンプやメッセージ送ってきてたな。返すどころかゆっくり見る暇もなかったし。
「途中通知オフにしたわ」
「ひでー。…んで、どうだった!?」
「ドキドキさせれた?」
「…惨敗っす」
「やっぱ丹羽にはハードル高かったかぁ」
「気ぃ取り直して、クリスマスに向けて作戦練り直すか」
「だな」
こいつら、俺よりもやる気に満ち溢れている。つうか、クリスマスのことなんてすっかり忘れてたし、24も25もバイトなんだよなぁ。
期末テスト最終日。テストが終わり、鷲尾と片瀬は部活があるため、俺は淀金と2人で昼飯を食べに行くことにした。
靴箱に着いた時、淀金がトイレに行くと言い出し、靴を履きかけていた俺は外で待つことにした。
スマホを見ていた俺に「お疲れ、1人?」と声をかけてきたのは時岡だ。
「あ、お疲れ。淀金待ちしてる」
「そっか。…そうだ、明後日って出勤してる?」
「うん、してる」
「久々に梨花連れて行くから」
「了解」
「じゃあ、また」
「おう」
久々だったし、もう少し話したかったな、なんて思いながら時岡の後ろ姿を見ていたら
「今、時岡と話してた?」
と淀金が戻ってきた。
「うん」
「時岡この後予定あんの?」
「さぁ」
「んじゃ、誘ってみようぜ」
「は!?」
「時岡ーっ!」
淀金は俺の意見も聞かず、勝手に時岡を呼び止め、駆け寄って行く。
「時岡、この後ヒマ?丹羽と昼飯行くんだけど、時岡も行かね?」
おいおい、そっと見守る立場はどこ行った。
「2人の邪魔にならないなら」
「全然なんねーよ。な!丹羽」
「…うん」
3人で牛丼屋に行き、俺の向かいに淀金、隣に時岡という配置でテーブル席に座った。
「くーっ、テストから解放された後の牛丼は格別だなぁ!!」
「だな!身体に沁みるーっ」
「丹羽、そっち一口ちょーだい」
「いいよ。その代わりお返しに二口くれ」
「そんな取引応じれねーわ!」
俺たちのやりとりに時岡は「あはは、仲良すぎ」と微笑んだ。
「校内仲良しランキングがあったら、確実にベスト3には入るな」
淀金はドヤっている。
「何だよそのランキング。まぁ、入るだろうな。なんなら優勝するな」
「だろ?…時岡は笠原、依田と結構仲良いの?周りから見れば意外な組み合わせなんだよな」
「あ、意外なんだ。普通に仲良いよ」
「笠原は誰とでも仲良くなれそうなタイプだけど、依田とか冗談通じなさそうに見えるんだけどどうなん?」
「依田は俺以上に無愛想だから誤解されること多いけど、恥ずかしがり屋なだけだから」
「え、そうなん!?」
「冗談も言うし、良い奴だよ」
「まじかー。上辺だけで判断しちゃいけねーな」
俺も遊園地で会わなかったら時岡のこと上辺で判断したままで、今でも敵対視してたろうな。
「つうか、時岡が丹羽と仲良くしてんのも意外だけどな。もしかして、俺らの丹羽の魅力に沼っちゃった?」
淀金のふざけた問いかけに俺はヒヤヒヤする。
「うん、めっちゃ沼ってる」
時岡はいつも通りの口調で答えた。
…!?…えっと、これは悪ノリに乗っかってるだけ…だよな?
「おー、大胆発言ー!」
そう言う淀金は、良かったな!とアイコンタクトを送ってくる。
時岡は基本的にクールで、表情や声のトーンにあまりムラがない。だから、さっきの言葉もどこまで冗談で、どこから本音なのか分かりにくい。
だけど、冗談でも嬉しいと思ってしまう俺は、いつだって本音がダダ漏れになりそうで大変だ。
…相当沼ってるよ、俺の方が。
「時岡くん、ここに新品のタオル置いておくから使ってねー」
「はい、ありがとうございます」
「そこにある入浴剤とか好きに使ってね。じゃあ、ごゆっくりー」
息子がピンチに陥っているのに、母さんは呑気なことを言い残し、出て行く。
「優しいお母さんだよね」
時岡は時岡でこの状況に何の焦りもない様子。
「いつも入浴剤入れてるの?」
「おれはたまに。うちの母さん、風呂の時間に命かけてて、めっちゃ長風呂なの。いかに優雅にリラックスして入るかを考えてるから、入浴剤は色んな種類を常備してるし、浴室の中はLEDキャンドルとか美容グッズとか色々置いてる。あと他の家より浴槽はデカめだと思う」
「こだわり凄っ。…どの入浴剤にする?」
「時岡が決めて」
入浴剤を選んだ時岡は、何の躊躇もなく制服を脱ぎ始める。いや、普通は男友達となら躊躇わないんだけど、俺はそうも言ってられない。
「…制服シワになるといけねーから、とりあえずこのハンガーに掛けといて」
「ありがとう」
「おぉ、ほんとにデカい」
先に浴室に入った時岡は、浴槽の大きさに感動している。その後ろから緊張気味に入る俺が、目のやり場に困っているのは言うまでもない。
何とか湯船に浸かる段階まできた俺は、時岡の選んだ入浴剤が乳白色なことに安堵した。
「2人入っても余裕の広さいいね」
人のドキドキも知らずに、時岡は風呂の快適さに機嫌が良い。
「あ、さっき言ってたキャンドルライトってあれ?」
「あー、うん」
「丹羽もよく使うの?」
「さすがに俺が1人で使ってたらキモいだろ」
「せっかくだし、してみたいかも」
「え?別にいいけど」
電源を入れたキャンドルライトをお湯に浮かべ、浴室の電気を消した。
カラフルな光に優しく包まれた空間が想像以上に幻想的で、思わず「おぉー」と声が出た。
「綺麗…」
光を見つめながら言う時岡の顔は、額縁に納めたいぐらいカッコよくて色っぽい。今俺の頬が真っ赤になっても、湯船に浸かっているせいにすればいいのは有難い。
明日も学校だから夜更かしするわけにもいかず、俺はベッド横に布団を敷き、寝る準備を進める。
敷き終わると時岡が聞いてくる。
「淀金たちも泊まったことあるんだよね?」
「うん。3人まとめて泊まりに来たんだけどさ、ベッドに2人、この敷布団に2人で寝るわけじゃん?普通俺がベッドなのは確定なはずなのに、4人でジャンケンって言い出して、結局俺も負けて下で寝たんだよ。しかもさ、淀金の寝相が死ぬほど悪くて、寝ぼけて俺のこと抱き枕扱いしてきてさ」
「へぇ、そうなんだ」
電気を消し、俺はベッド、時岡は敷布団に寝転んだ。
「おやすみ」
「おやすみー」
結局、淀金たちとの作戦は何一つ実行出来ず、俺が1人時岡にドキドキ、きゅんきゅんしてただけだったな。つうか、付き合ってもない相手をドキドキさせるのって難易度高くね?うーん…
「あのさ…」
寝たと思っていた時岡が声をかけてきた。
「どした?」
「丹羽、こっちの布団で寝ない?」
「ん?…あ、もしかしてベッドで寝たかった?悪りぃ、俺の使ってるベッドより客用の布団がいいと思ってたわ。全然いいよ、交代しよ」
ベットから起き上がり、敷布団の方へ動くと
「…じゃなくて」
と言い、寝転んだまま掛け布団をめくった時岡は続けてこう言った。
「こっちの布団で一緒に寝ようって意味」
「…え?」
…いやいや、なんで!?
「ほら、早く入って」
「え、でも…」
戸惑う俺の腕をぐいっと引っ張り、強引に隣に寝かせてきた。
…ドキッ
やっと落ち着いていた鼓動がまた激しくなる。そんな俺に追い打ちをかけるように囁き声で言ってくる。
「今日は俺の抱き枕になって…」
そして、仰向けの俺を横からぎゅっと抱きしめ、脚を絡ませてきた。
…え!?待って待って、どういう状態!?
「夜は冷えるから、こうした方があったかい」
いやいや、そういう問題じゃねーよ!体温が急上昇して、むしろ暑いんだよこっちは!
俺のドキドキが止まる前に、時岡はスヤスヤと眠ってしまった。身長差もあり、完全に包まれる体勢だから本当に抱き枕になった気分だ。
「…。」
こういうこと仲良い友達なら誰にでもすんのかな?俺にだけならいいのに…。
翌朝、アラームで目が覚めると俺は布団の中に1人だった。部屋に時岡はいなくて、前も朝起きたらいなかったな、と思いながら眠い目を擦り、1階へ降りていく。
「あ、やっと起きてきた」
母さんが俺の朝飯を運びながら言ってくる。
リビングのダイニングテーブルには、父さんと姉貴、そして制服姿の時岡が座っていて、すでに朝飯を食べ始めていた。いつもならこの時間すっぴんでいるはずの姉貴は、すでにメイクをばっちり済ませている。なんて分かりやすい女だ。
「時岡くん、ぐっすり寝れた?」
母さんの何気ない質問にドキッとしてしまう。
「はい、すごく寝心地が良くて、熟睡できました」
「…。」
誰かさんにずっとホールドされてて、こっちは寝不足だっつーの。
なんて言いつつ、泊まりに来てくれて、この後一緒に登校できることに、叫びたいくらい幸せな気持ちになっている。
2人で電車に乗ると、いつもは乗っていない時岡がいることに気付いた高校の女子たちは、ヒソヒソと話し、頬を赤らめている。
女子の皆さん、昨夜俺は時岡の抱き枕になったんだよ。みんなは一生経験しない…いや、そうとは限らないか。今は恋愛する気ない時岡も、いつか時間と心に余裕ができたら彼女作って、その子を抱き枕にしたり、特別扱いしたり…。
「…。」
教室に入ると、ニヤニヤした淀金たちが近寄ってくる。
「丹羽おはよう」
「おはよー」
「何で返信しねぇんだよー!」
そういや、昨日グループメッセージにウザいくらい大量のスタンプやメッセージ送ってきてたな。返すどころかゆっくり見る暇もなかったし。
「途中通知オフにしたわ」
「ひでー。…んで、どうだった!?」
「ドキドキさせれた?」
「…惨敗っす」
「やっぱ丹羽にはハードル高かったかぁ」
「気ぃ取り直して、クリスマスに向けて作戦練り直すか」
「だな」
こいつら、俺よりもやる気に満ち溢れている。つうか、クリスマスのことなんてすっかり忘れてたし、24も25もバイトなんだよなぁ。
期末テスト最終日。テストが終わり、鷲尾と片瀬は部活があるため、俺は淀金と2人で昼飯を食べに行くことにした。
靴箱に着いた時、淀金がトイレに行くと言い出し、靴を履きかけていた俺は外で待つことにした。
スマホを見ていた俺に「お疲れ、1人?」と声をかけてきたのは時岡だ。
「あ、お疲れ。淀金待ちしてる」
「そっか。…そうだ、明後日って出勤してる?」
「うん、してる」
「久々に梨花連れて行くから」
「了解」
「じゃあ、また」
「おう」
久々だったし、もう少し話したかったな、なんて思いながら時岡の後ろ姿を見ていたら
「今、時岡と話してた?」
と淀金が戻ってきた。
「うん」
「時岡この後予定あんの?」
「さぁ」
「んじゃ、誘ってみようぜ」
「は!?」
「時岡ーっ!」
淀金は俺の意見も聞かず、勝手に時岡を呼び止め、駆け寄って行く。
「時岡、この後ヒマ?丹羽と昼飯行くんだけど、時岡も行かね?」
おいおい、そっと見守る立場はどこ行った。
「2人の邪魔にならないなら」
「全然なんねーよ。な!丹羽」
「…うん」
3人で牛丼屋に行き、俺の向かいに淀金、隣に時岡という配置でテーブル席に座った。
「くーっ、テストから解放された後の牛丼は格別だなぁ!!」
「だな!身体に沁みるーっ」
「丹羽、そっち一口ちょーだい」
「いいよ。その代わりお返しに二口くれ」
「そんな取引応じれねーわ!」
俺たちのやりとりに時岡は「あはは、仲良すぎ」と微笑んだ。
「校内仲良しランキングがあったら、確実にベスト3には入るな」
淀金はドヤっている。
「何だよそのランキング。まぁ、入るだろうな。なんなら優勝するな」
「だろ?…時岡は笠原、依田と結構仲良いの?周りから見れば意外な組み合わせなんだよな」
「あ、意外なんだ。普通に仲良いよ」
「笠原は誰とでも仲良くなれそうなタイプだけど、依田とか冗談通じなさそうに見えるんだけどどうなん?」
「依田は俺以上に無愛想だから誤解されること多いけど、恥ずかしがり屋なだけだから」
「え、そうなん!?」
「冗談も言うし、良い奴だよ」
「まじかー。上辺だけで判断しちゃいけねーな」
俺も遊園地で会わなかったら時岡のこと上辺で判断したままで、今でも敵対視してたろうな。
「つうか、時岡が丹羽と仲良くしてんのも意外だけどな。もしかして、俺らの丹羽の魅力に沼っちゃった?」
淀金のふざけた問いかけに俺はヒヤヒヤする。
「うん、めっちゃ沼ってる」
時岡はいつも通りの口調で答えた。
…!?…えっと、これは悪ノリに乗っかってるだけ…だよな?
「おー、大胆発言ー!」
そう言う淀金は、良かったな!とアイコンタクトを送ってくる。
時岡は基本的にクールで、表情や声のトーンにあまりムラがない。だから、さっきの言葉もどこまで冗談で、どこから本音なのか分かりにくい。
だけど、冗談でも嬉しいと思ってしまう俺は、いつだって本音がダダ漏れになりそうで大変だ。
…相当沼ってるよ、俺の方が。



