化け猫は一途を貫き本懐を遂げようとするもで溺愛男がそれを許さない。

「だから、麗華様の世界を壊したのですか?」

「壊した? 違う。落ちただけだ。自分の重さで」

彼は残酷なほど、穏やかに首を傾げる。


「それは好きじゃない! そんなの本当の愛じゃない! 好きなら、 傷ついても、踏みにじられても、それでも貫く⋯⋯」
私は咄嗟に叫んだ。

風が強く吹き、袴の裾が揺れ、言葉が途切れる。

なぜなら、それは私のことだからだ。

誠太郎がどんなに残酷でも、歪んでいても、私は幸せにしたい。
誠太郎は、ゆっくりと近づいてくる。

「鈴子、じゃあ聞くが君は、どうしてそこまで麗華様にこだわる?」

誠太郎の名前を呼ぶ声が、柔らかい。
指先が私の頬に触れて温もりが伝わってくる。


息が止まる。


私は誠太郎の恋を叶えるために化け猫になったなんて言えなかった。
そんなの猫の私がいくら彼を思っても結ばれないから導き出した自己満足の彼の幸せだ。

「君は僕を麗華のところへ行かせたい。でも僕は君のところへ戻る。麗華を壊したのは僕の矜持だ。僕は生まれだけで見下す奴が嫌いだ」

夕日が沈み影が伸びる。彼の瞳が暗く光る。


「でも、私は、夜になれば猫です。人間じゃない」