化け猫は一途を貫き本懐を遂げようとするもで溺愛男がそれを許さない。

――現在。
鈴子の姿でいられるのも、あとわずか。

赤く染まる校舎裏。
銀杏の葉が風に揺れ、乾いた音を立てて舞い落ちる。

誠太郎は無言で立っていた。
細い指先は本を閉じたまま、白くなるほど力がこもっている。

私が好きだと言った想い人に一歩近づいた。

「麗華様のこと、好きではなかったのですか?」

喉がひりつく。聞きたくないけれど、聞かずにはいられない。
風が止まり、誠太郎の睫毛がわずかに震えた。

「どうして、そんなことを聞く」

怒ってはいない静かな声には奥底に澱んだものがある。

私は、彼をまっすぐ見た。

「誠太郎様は彼女を陥れました。噂も、投書も、資金の件も全部、誠太郎様が!!」

私を見る彼の視線が鋭くなった。

沈黙を責めるように遠くで鐘が鳴る。
誠太郎は、ふっと息を吐いた。

「ああ、全部、僕だよ」
「麗華様が好きでは、なかったのですか」

同じ問いをもう一度するも、今度は震えが混じった。

「好き、だった。努力して、努力して、あの人の隣に立とうとした。でも、結局は見下されてたんだ。心の中で⋯⋯」

誠太郎の拳が震えているのが見えて、胸が締めつけられる。