化け猫は一途を貫き本懐を遂げようとするもで溺愛男がそれを許さない。

ーー過去。まだ、私がただの猫だったころ。

一見、優男どころか気弱にさえ見える誠太郎は冷徹な一面を持っていた。

それを最初に知ったのは、あの冬の午後。
吐く息が白く溶ける校庭の隅で、彼は麗華様と向き合っていた。

誠太郎は積年の想いを麗華に様に打ち明けたところだった。

私は石垣の上から、その様子を見ていた。

麗華様は白い手袋をはめ、細い顎をわずかに上げている声は柔らかいが、その瞳は冷たい硝子のようだった。

「誠太郎さんは、とても努力家ですわ。でも、身の程は弁えなければ」

その一言は、雪よりも冷たく彼に降り積もった。
誠太郎は嗜められたにも関わらず、あまりにも穏やかに笑った。

「ええ、もちろん」

だが私は彼の指先が、ぎり、と音を立てるほど拳を握りしめたのに気がついていた。

数日後、
誠太郎は偶然を装い、麗華様の落とした手帳を拾った。

革張りのそれは上等で金の留め具がついている。
私は彼の足元を歩きながら胸騒ぎを覚えた。

本来なら返すだけのはずなのに、彼は中を開いた。


そこに書かれていたのは、誠太郎の名。