化け猫は一途を貫き本懐を遂げようとするもで溺愛男がそれを許さない。

「もう、いいんだ。僕が好きなのは、君だ」

私の脳に否定の感情が攻めてくる。
ーー私は、あなたの恋を応援するために戻ったの。あなたに愛されるためではない。

無言の私を責めるように日が落ちていく。
どんなに踏ん張っても人間の姿は保てない。
逃げようとその場を立ち去ろうとする私の腕を誠太郎が掴む。

「君の全てを愛してるから」
私はそんなの私もだと返したいのを必死に耐える。
私は人間ではなく猫でしかない。

屍人を操る一千年は生きる化け猫。
ただ、誠太郎の幸せを見届けたい思いが私をただの猫から妖に変えた。

夜、月が昇ると私は黒猫に戻る。
小さな体に、柔らかな肉球。
丸くなる私を、誠太郎は抱き上げる。
「鈴子⋯⋯いや、スズ、君なんだろう?」
見透かされていた。

スズという懐かしい呼び名は誠太郎が猫の私につけてくれたものだ。

「昼だけ人間で、夜は猫。それでもいい。 僕は君と生きたい」

私は屍人を操る化け猫で、人の世に災いをもたらす存在と言われている。
誠太郎の未来は、光の中にある。

私の居場所は闇だ。
ただ闇の中にいても、たった一つあった光の幸せを見たかっただけ。

「にゃー」