化け猫は一途を貫き本懐を遂げようとするもで溺愛男がそれを許さない。

私は黒猫の姿で彼の前に立った。

月光が私の影を長く伸ばす。

誠太郎は私に一歩近づくと囁いた。

「麗華を救い、僕をそこへ押し戻す。それがお前の本懐か?」

見透かされていることに身震いしながらも、私は尾を揺らす。

そのときだった。
彼は、懐から一通の封書を取り出した。


封を切り、月明かりの下にかざされたのは麗華の父からの書状。


“色々と誤解があったようだ。誠太郎殿の誠実さを再評価し、娘との縁談を前向きに検討する”
書状の内容に胸が、跳ねる。

(私の企みが成功した?)

 誠太郎は、私を見る。
 その目は、あの冷たい復讐者の目。


 「君じゃなくて僕だよ。麗華を陥れた噂も今度は逆に利用した。彼女の家は世間体に弱い。
  一度地に落ちたからこそ、“誠実な平民との縁”という美談が欲しくなる」

 彼は淡々と告げる。
 「君が動く前に全部整えた」
 「にゃーん?」

 猫の喉から漏れる掠れ声。
 誠太郎は膝をつくと私と目線を合わせる。

「君は僕を麗華様のもとへ行かせるために消える気だった。だから、道を残して僕から麗華様を切り捨てた」

 彼の指が、私の額に触れる。