化け猫は一途を貫き本懐を遂げようとするもで溺愛男がそれを許さない。

震える声で告げた言葉に、誠太郎は笑った。


「知っている。鈴子が現れた時から気づいてた」


心臓が跳ね、夕闇が濃くなる。
指先が、少しずつ猫の形へと戻りはじめる。

「麗華が好きだったかと聞いたな」

彼は最後に言う。

「好きだったよ。でも、愛しているのは君だよ。鈴子。いや、スズ⋯⋯」

夜が落ちる。
私の体が縮み、視界が低くなる。

黒い毛並みが月光を吸う。彼はしゃがみ込み、私を抱き上げた。

腕の中は、変わらずあたたかい。

「にゃーん」

鼓動が重なる。
私は本懐を遂げるために、この世に留まった。
けれど、彼は私を愛していると言ってくれた。

朱の月が昇る。

一途なのは、私だけではなかった。



それでも私は誠太郎を光へ押し戻すと決めていた。
たとえ嫌われても、化け猫の私と一緒にいて彼が幸せになれるわけがないから。

麗華様との縁談は、まだ完全には潰えていない。
私は屍人を使い、麗華様との再縁を整えるつもりだった。

誠太郎が平民であることを恥じぬよう、見下されぬ立場へ押し上げる。


屋敷の庭。
露が草を濡らし、虫の声がかすかに震える。