軍服の吸血鬼は、ただひとりの花嫁に愛を捧げる


 自分の首筋に残る、甘い疼き。彼の牙が触れた場所。……永遠の誓いを刻まれた、証。

「いい子だ……よく耐えた」
 煌夜の指先が、紬のほおを優しく撫でた。
 
「今夜は、何も考えず眠ればいい」
 冷たい腕が、紬を深く抱き寄せる。低い体温なのに、不思議と心が溶けていく。

「……煌夜、さ……ん……」
 紬の体の力が、すうっと抜けていった。
 煌夜が白い外套で自分を包み込む。まるで、この世でたったひとつの宝物を扱うように。

「――もう、君は俺だけのものだ。俺の花嫁だ」




『帝都の黒い狼(オオカミ)』と呼ばれる帝国軍大佐・煌夜(こうや)
 その正体は、吸血鬼。

 人の「心の色」が見える、(つむぎ)だけが分かった。
 帝都で最も恐れられる男の心が、誰よりも孤独(こどく)で、誰よりも優しい色を持つことを。

 物語は、ふたりが出会った幼い日へと遡る――。




霧生 煌夜 イメージイラスト