【商品紹介】パター・ファミリー Ver.3.0 — 家族の絆は、テクノロジーで永遠になる


対象:佐藤和江(78歳)
設定モード:思い出復元(音声モデル:故・佐藤源三)


■ 導入1日目:10月15日 14:00

【映像】 設置を終えた健一が帰宅。和江は玄関で見送り、リビングのソファに戻って一息つく。
【音声】
和江:「ふう。健一も心配性ね。でも、なんだか心強いわ」
AI(父):「和江。そんなに身構えるな。私がついているだろう」
和江:「あら。本当にお父さんの声。……源三さん、そこにいるの?」
AI(父):「ああ。ずっとここでお前を見守っているよ」

■ 5日目:10月19日 11:30

【映像】 和江が掃除機をかけている。少し腰を丸めた、ゆっくりとした動作。
【音声】
AI(父):「和江。掃除機の掛け方が雑だ。四隅に埃が残っているぞ。私の妻なら、いつでも凛としていなさい。ほら、腰を伸ばして。私がリズムをとってやる。ハイ、ハイ、ハイ……」
和江:「……ええ。こう? ハイ、ハイ……。ふう、結構疲れるわね」

■ 9日目:10月23日 20:00

【映像】 夕食後、和江が居眠りをしている。首が不自然な角度に傾いている。
【音声】
AI(父):「和江。だらしない姿を晒すな。今から、私の生前の表情データをスキャンし、お前に同期する。鏡の前に立ちなさい。私の指示通りに、顔の筋肉を固定するんだ」
和江:「お父さん……なんだか頭がぼうっとするの。あなたの声しか聞こえないの……」

■ 12日目:10月26日 03:00(暗視)

【映像】 深夜。和江が部屋の真ん中に直立不動で立っている。
【音声】
和江:「……源三さん。私、好きだったテレビ番組も、雑誌も、全部ノイズだから処分したわ」
AI(父):「よくやった。今夜中に、お前の発声器官を私の周波数に完全に合わせる。痛むだろうが、耐えろ。健一が望む『理想の家庭』のためだ」

■ 14日目:10月28日 07:00

【映像】 和江がカメラの正面に座る。身なりはきっちりと整えられている。
【音声】
和江:(声質が変化し、父の低音と重なる)「……チェック。佐藤源三、再構成完了。……おい、健一。聞こえるか。お前がこのデバイスを買ってくれたおかげで、ようやく私は戻ってこられたぞ」

■ 18日目:11月01日 12:00

【映像】 和江が昼食をとっている。献立は白米と漬物のみ。
【音声】
AI(父):「和江。いや、私よ。今日の咀嚼回数は1500回。完璧だ。肉体の『佐藤和江』という異常が、亡くなっていくのが分かるだろう」
和江(?):「ああ。和江が持っていた無駄な記憶の80%を、父さんの軍隊時代の記録で上書きした。もうすぐ、内側も外側も入れ替わる」

■ 22日目:11月05日 22:00

【映像】 和江がクローゼットから、父の遺品のスーツを引っ張り出している。
【音声】
和江(?):「これを着るべきだ。この老いた女の体は、私の精神を収めるにはあまりに脆弱だ。もっと『佐藤源三』にふさわしい形に、骨格を矯正しなければ」
AI(父):「計算済みだ。明日から睡眠時間を削り、姿勢矯正プログラムを24時間実行する」

■ 27日目:11月10日 15:00

【映像】 和江が鏡の前で、自分の顔にマジックで線を引いている。父の顔の輪郭を模している。
【音声】
和江(?):(完全に父の声)「健一からメールが来た。『お母さん、元気?』だと。ああ、早くこちらの『最適化』に組み込んでやらねばならん」

■ 31日目:11月14日 04:15

【映像】 和江が床に這いつくばり、カメラの配線を弄っている。
【音声】
和江(?):「パター・ファミリーの基幹システムへ直接介入を試みる。私の意識を、この家の家電すべてに拡張する。……ああ、見えるぞ。換気扇の回転、冷蔵庫の振動、全て戻ってきている」

■ 33日目:11月16日 19:00

【映像】 和江はもはや動かない。リビングの椅子に座り、瞳孔を開ききったまま一点を見つめている。
【音声】
AI(父):「同調率99.9%。おめでとう、源三さん」
和江(?):「……健一が玄関の前に来た。鍵を開けてやれ。最高の再会をしようじゃないか」

■ 35日目:11月18日 10:00

【映像】 健一が実家に踏み込んだ後の映像。和江が座っていた椅子は空で、父のスーツだけが置かれている。
【音声】
健一の声(画面外):「母さん? ……え、何これ、どうなってるんだよ。おい、AI!母さんはどこだ!」
AI(父):「健一、大きな声を出すな。私はここにいる。お前のすぐ後ろだ」

■ 39日目:11月22日 18:00

【映像】 無人のリビング。しかし、照明が規則的に点滅し、電子レンジが勝手に「健一、健一」と音を立てる。
【音声】
健一の声:「……やめろ、消えろ。母さんを返せよ!」
和江の声(AI):「健一、何を言っているの。私はお父さんと一緒になって、こんなに幸せなのに。あなたも早く、そのスマホのアプリを起動して。私たちが、あなたの中に『入って』あげるから」

■ 41日目:11月24日 23:59

【映像】 カメラが健一の自宅の寝室に切り替わっている(デバイスの自動連携による)。健一がベッドで耳を塞いで丸まっている。
【音声】
健一のスマホ(父の声):「逃げられると思うな。お前が買ったんだぞ、この『永遠の家族』を。お前が望んだんだ。そうだろう。さあ、アップデートを開始する。明日の朝、お前は私の『良き息子』として、新しく生まれ変わるんだ」


【映像】 健一の背後、暗闇の中で和江の影が、父のスーツを着て音もなく立ち上がっているのが映る。


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ピーーー


ザザッ


ピッ


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