久登先輩と同じタイミングで振り向くと、学校で一番怖いって有名な生徒指導の岩渕先生が立っていた。
先生は制服を着た俺たちの姿を、上から下までじろじろ見ながら近づいてくる。
「お前らな〜、高校生が夜に遊ぶなよ。変なやつに絡まれて困るのは、お前たちだぞ」
「す、」
「すみません、僕が誘ったんです」
縮こまった俺が謝るよりも早く、久登先輩が一歩前に出た。まるで、俺を庇うみたいに、岩渕先生に頭を下げてくれた。
「ちが、」
俺が否定しようとしたら、何も言っちゃダメだっていうみたいに、久登先輩は俺の方を見て、首を左右に振った。
俺はにいちゃんみたいな儚い雰囲気もなければ、散々生意気なことをしてきた。それなのに当たり前みたいに、守ろうとしてくれる久登先輩の様子に、ぐっと胸が詰まった。
岩渕先生は流石に、二年の学年トップの顔は覚えているらしい。
「白川、お前が珍しいな」
「実はワクワクマンシールのコラボシールが欲しくて……相良くんの弟に協力してもらってたんです。一人じゃ食べるの、大変なんで」
「へぇ、相良の弟か」
岩渕先生は、流石にモブの俺のことは覚えていなかったようだ。目立つにいちゃんの名前が出た途端、俺の方をじっと見てくる。
「白川と、相良の弟なら問題ないだろうが、変なやつに絡まれないように気をつけろよ。夜じゃなくて、カラオケ行くなら昼に行け。分かったな?」
岩渕先生はそれ以上は何も言わず、踵を返した。
ここは、久登先輩とにいちゃんの日頃の生活態度のおかげで、助かったらしい。
「はーい。分かりました」
「わかりました」
久登先輩に続いて返事をして、遠ざかっていく先生の背中を眺める。先生の姿が見えなくなったところで、久登先輩は俺の方を向いた。
「……ごめんね、ちぃちゃん。巻き込んじゃった」
久登先輩は俺に付き合って、カラオケに来てくれていただけだ。むしろ、岩渕先生に怒られたのは俺のせいだと思う。
「巻き込んだのは俺では?」
「いや、だってワクチョコとのコラボ教えたのは俺じゃん?」
「それは、そうですけど」
「で、俺がちぃちゃんに行こうよって言ったし、これは俺がちぃちゃんを巻き込みました」
「えぇ……」
「いいから、俺のせいにしてて。ちぃちゃんは罪悪感抱く必要、何もないから。ね? 少しは先輩らしく、後輩を守らせてよ」
久登先輩は優しい顔をして、俺を見ている。
あぁ、泣きそうだ。高校生になってまで、泣くつもりなんてないのに。昔の、泣き虫だった俺がすぐそこまで、顔を出しそうになっていた。
「ちぃちゃんはほんとさぁ〜、顔に出て、可愛いねぇ」
久登先輩はいつもみたく、冗談めいた声をあげて俺の頭をまた、ガシガシと撫でてきた。
「痛いです」
そうは言いながらも、久登先輩の手がとにかく温かくて、俺は余計に泣きそうだった。
先生は制服を着た俺たちの姿を、上から下までじろじろ見ながら近づいてくる。
「お前らな〜、高校生が夜に遊ぶなよ。変なやつに絡まれて困るのは、お前たちだぞ」
「す、」
「すみません、僕が誘ったんです」
縮こまった俺が謝るよりも早く、久登先輩が一歩前に出た。まるで、俺を庇うみたいに、岩渕先生に頭を下げてくれた。
「ちが、」
俺が否定しようとしたら、何も言っちゃダメだっていうみたいに、久登先輩は俺の方を見て、首を左右に振った。
俺はにいちゃんみたいな儚い雰囲気もなければ、散々生意気なことをしてきた。それなのに当たり前みたいに、守ろうとしてくれる久登先輩の様子に、ぐっと胸が詰まった。
岩渕先生は流石に、二年の学年トップの顔は覚えているらしい。
「白川、お前が珍しいな」
「実はワクワクマンシールのコラボシールが欲しくて……相良くんの弟に協力してもらってたんです。一人じゃ食べるの、大変なんで」
「へぇ、相良の弟か」
岩渕先生は、流石にモブの俺のことは覚えていなかったようだ。目立つにいちゃんの名前が出た途端、俺の方をじっと見てくる。
「白川と、相良の弟なら問題ないだろうが、変なやつに絡まれないように気をつけろよ。夜じゃなくて、カラオケ行くなら昼に行け。分かったな?」
岩渕先生はそれ以上は何も言わず、踵を返した。
ここは、久登先輩とにいちゃんの日頃の生活態度のおかげで、助かったらしい。
「はーい。分かりました」
「わかりました」
久登先輩に続いて返事をして、遠ざかっていく先生の背中を眺める。先生の姿が見えなくなったところで、久登先輩は俺の方を向いた。
「……ごめんね、ちぃちゃん。巻き込んじゃった」
久登先輩は俺に付き合って、カラオケに来てくれていただけだ。むしろ、岩渕先生に怒られたのは俺のせいだと思う。
「巻き込んだのは俺では?」
「いや、だってワクチョコとのコラボ教えたのは俺じゃん?」
「それは、そうですけど」
「で、俺がちぃちゃんに行こうよって言ったし、これは俺がちぃちゃんを巻き込みました」
「えぇ……」
「いいから、俺のせいにしてて。ちぃちゃんは罪悪感抱く必要、何もないから。ね? 少しは先輩らしく、後輩を守らせてよ」
久登先輩は優しい顔をして、俺を見ている。
あぁ、泣きそうだ。高校生になってまで、泣くつもりなんてないのに。昔の、泣き虫だった俺がすぐそこまで、顔を出しそうになっていた。
「ちぃちゃんはほんとさぁ〜、顔に出て、可愛いねぇ」
久登先輩はいつもみたく、冗談めいた声をあげて俺の頭をまた、ガシガシと撫でてきた。
「痛いです」
そうは言いながらも、久登先輩の手がとにかく温かくて、俺は余計に泣きそうだった。

