シガレット・チョコレートではじまる恋のはなし

 高校に入学して1ヶ月。
 放課後の校庭で部活に勤しむ連中を横目に、自転車を押して校門を目指す。
 ーーみんな、ご苦労なことで。本当によくやるよ。
 俺からしたら、授業が終わってからの運動やら文化活動なんて、面倒くさいの一言につきる。
 一秒でも早く家に帰ってダラダラしたい。毛玉のついた部屋用のジャージに着替えて、菓子食って、ゲームして。
 そんなふうに思う原因の一つは、きっと、この窮屈な制服のせいだ。
 第一ボタンまできっちりと締めた薄水色のシャツ。その裾は、もちろんグレーのズボンにイン。喉元できゅっと締めた緑のネクタイが、息苦しさを増大させる。
 爽やかで感じのいいヤツ。
 周りからの好感度をあげるためなら、少しぐらいの窮屈さなんて、もちろん我慢しますけど。
 なんせ、外ヅラの良さが自慢なんで。
 「おーい、(いつき)、待てよ。 今日、ユースの練習ねぇなら、部活に顔だせよ」
 数メートル離れたところから呼び止められた。
 樹は兄貴だ。
 片手を大きく振りながら、こっちに向かって走ってくるのは、多分、サッカー部の3年生。きっと兄貴の友達だろ。
 ったく、見間違ってんじゃねえよ。
 アーモンド型の目に、筋が通った鼻。俺の方が品のある整った顔してるだろうが。
 背だって178cmにあるのに。兄貴より3センチも高い。
 聞こえなかったフリをして通り過ぎようかとも思ったけど、この距離じゃ無理がある。無視して、そのまま行くのも感じが悪い。
 しょうがねぇーな。
 立ちどまって、軽く会釈をする。ついでに、ちょっとだけ困ったような笑みも浮かべておく。
 駆け寄ってきた相手が、サッカーゴール越しに足をとめた。
 勝手に間違えたくせに、そんながっかりした顔するんじゃねぇよ。そんな顔する前に、見間違えた己の注意力の無さを反省しろよ。悪態をつく。
 もちろん笑みを保ったまま、心の中で。
「あ、悪い。 人違い。ってか、ひょっとして樹の弟?」
「はい。 弟の村瀬(むらせ) 葉月(はづき)です。 よく兄と間違えられます」
「やっぱり?だって、そっくりだもん。イケメン兄弟ってやつだな。ところで、今帰りってことは部活やってないの?」
 部活はダルいんで無理です。なんてことは言わない。
「はい。興味はあるんですけど」
「あの樹の弟だし、運動得意だろ?もったいねぇな。サッカー部、入んない?」
「中学の時はやってたんですけど、ケガで部活を辞めていて⋯」
 でも、もう治ってるんで問題ないですけどね。
「あぁ、ケガか。やりたいのに出来ないって辛いよな。嫌なこと聞いて悪かったな」
 単純なやつで良かった。
 俺は嘘はついていない。むこうが勝手に、行間を読み間違えただけ。
「いえ。そんなことないです。部活に誘ってもらえて、うれしかったです」 
「そっか。 ま、気をつけて帰れよ」
「はい。 兄にも部活に顔出すように伝えておきます」
 にっこりと笑顔をつくる。
 軽く頭を下げてから、歩き出した。
 これ以上、俺の貴重な時間を奪うんじゃねぇよ。

 すれ違うクラスメートや、手を振ってきた顔見知りの女子達に「また明日な」「おつかれー」なんて、しっかり愛想を振りまきながら、ようやく校門に到着。そこから駅に向う人の流れと逆方向に、自転車を漕ぐこと約20分。
 住宅地を抜けて、道路の両脇が雑木林にかわるあたりで、やっと外ヅラの爽やかイケメン「村瀬 葉月」の仮面をはずす。
 ネクタイを胸のあたりまでだらんと緩めて、首もとのボタンも一つ、二つとあける。ついでにシャツの裾もズボンから引っ張りだした。
 服の中にひんやりした空気が入って、汗ばむ身体にあたって気持ちいい。 
 ここまでくれば、ほぼ人通りがない。せいぜい二時間に一本走っているバスとすれ違うぐらい。
 あー、今日も一日頑張った。ご褒美にアイスでも食べて帰ろうかな。
 そんなことを考えながら、緩やかな上り坂を一気にのぼれば、黒字で「駄菓子屋 まつや」とデカデカと書かれた、年季が入ったオレンジ色の庇が目に飛びこんでくる。
 いつもニコニコして、優しいおばあちゃん(おばあちゃんって呼ぶと無視されるけど)のトミ子さんのお店だ。
 この駄菓子屋が、俺の憩いのスポット。 
 自転車を降りると、入り口の引き戸に「店主、不在。すぐ戻るのでご用の方はお待ちください」と、これまたデカデカと大きな字で書かれた紙が貼ってあった。
 ついてねぇな。
 それにしても不在だなんて堂々と知らせて、泥棒にでも入られたらどうすんだよ。人通りもないんだしさ。
 そんな余計な心配をしながら自転車を止めて、大人しくトミ子さんを待つ。
 だけど腹の虫は大人しく待てないらしい。さっきからキュルキュルと、うるさく鳴っている。黙れ、俺の腹の虫。
 そいうえば昨日、買ったチョコレートが残ってたっけ。
 『シガレット・チョコレート』という青灰色のレトロな文字とタバコの絵が描いてある、白い箱に入ったそれを思い出して、リュックの底から取り出した。
 本物のタバコとそっくりな箱をあけて、白い紙で包装された棒状のチョコレートを、一本、口に運ぶ。その時だった。
 バサッ。
 なんの前触れもなく、脳天に何かが落ちる。
「⋯っう、痛っ」
 ジンジンする頭を手で撫でながら、顔を上げると、俺と同じ制服を着たヤツが立っていた。その手には、凶器と思われるスケッチブックらしきものを持っている。 
 日頃から鍛えてるだろう引き締まった身体には、スケッチブックより、バスケットボールの方が似合いそうだ。身長だって180cm超はありそうだし。
 なに、この状況。もしかしてカツアゲ?
 肘まで捲くり上げられたシャツから伸びる腕には、しっかり筋肉がついている。殴られたら痛そうだ。 
 無造作にハーフアップにされた髪は、明るい茶色で緩やかなウェーブがかっている。耳には銀のピアスが一つ。ガラが悪く見えないのは、その整った顔立ちのおかげだろう。
 取り敢えず、逃げとくか。絡まれても面倒だし。
 逃走体制に入るのを察したのか、男が自転車のハンドルをガッシリと押さえつけた。
「おい、なに逃げようとしてんだよ」
 ドスの効いた低い声。
 素直にカモられるのは悔しい。けどボコボコにされる可能性だってある。それ以前に、こいつに勝てる気が1ミリもしない。
 一瞬で答えが出た。
 ここは穏便に解決しよう。
「千円でどう?」
「はっ!?おまえ、カネで無かったことにしようとしてんのかよ」
 金額が少ないってことか。
「ん、じゃ二千円で」
「はぁぁ!?俺が今、言ったこと聞いてた?」
「三千円。それ以上は無理」
 だって、それが今持ってる俺の全財産だから。
「はぁぁぁ!?おまえ、たいがいにしろよ」
 財布を取り出して中身を見せようとしたら、縦に振りかざされた大きな手が脳天を直撃した。
()っってぇ。なにすんだよ。カネはやるって言ってんだろ」
「カネ、カネ、カネって、うるさいんだよ。カネで解決できる問題じゃないだろ」
 カネじゃなかったら、どう解決しろと?まさか、パシりにでもなれと?それとも、本当に殴りあいしたいとか?
 いやいや、どっちも無理だろ。
 成績優秀で、スポーツもそれなりに出来て、みんなから爽やかイケメンって呼ばれる俺がだぞ?パシリなんてダサいことできるわけがない。やりたくもない。
 そもそも殴りあいなんて野蛮なことは、端から嫌だし。痣なんて作った日には、今まで築いてきた360度全方位に向けた好感度が崩壊する。
 どうにかなんねぇかな。
 無言で考えていたら、諭すような口調で話しかけられた。
「反省しろ、は・ん・せ・い。タバコ吸っていきがったり、興味もつ気持ちもわからなくないけどさ。そういうの、よくないぞ。体にも悪いし、学校にバレたらよくて停学、最悪、退学だぞ」
 なんか勘違いされてる?もしかして。
 自分の手元に視線を落す。
 持ったままだったチョコレートを勢いよく前に突き出した。
「よーーく見ろ。チョコレートだよ。タバコじゃねぇし」 
 驚いたように、男の目が丸くなる。
 それからパチパチと目を瞬せると、精悍な顔がくしゃりと崩れた。切れ長の目尻が垂れて、人懐っこい笑顔になる。
 なんか冷たい彫刻の像が、急に、口角が上がりっぱなしのゴールデンレトリバーに変身したみたい。
「⋯⋯っっう。驚かすなよ。あー、びっくりした。心配して損したわ。でも、よかった。タバコ吸ってなくて」
 知らないヤツのこと心配したって、ただのお人好しの人?
 ワイルド系イケメンの容姿とのギャップに、キュンとさせちゃう的な?
 いやいや、そういうのウザいから。
「こっちは、ちっとも良くねぇわ。二回も叩きやがって」
「ごめん。ごめんって」
 ちっとも悪いと思ってなさそうな顔。同じ言葉が重なれば、言葉が軽くなる。だから余計に腹がたつ。
 でも許してやるよ。俺、寛大だから。
「わかったたよ。もういいから。早く、行けよ」
「やだよ。おまえ、おもしろいから」
「はぁーーあ!?」
 腹の底から治安の悪い声が出た。
 お願いだから、空気読んで、帰ってください。俺の貴重な放課後、これ以上、潰さないでください。
「だって、いきなりカネの話するやつ、普通、いないだろ?」
「しかたねぇだろ。カツアゲかと思ったんだから」
 目の前のワイルド系ゴールデンレトリバーは、一瞬、きょとんとしてから、「そういうことか」と呟くと、耐えられないとばかりに「ぷっ」と吹き出した。
「勘違いさせたのは謝るけど、カツアゲされて値段交渉するヤツ、初めて聞いた。やっぱ、おまえ、おもしろいわ。制服、ピカピカだし1年生?名前、教えてよ」
「はぁーーあ!?教えねぇーし」
「反抗期?別にいいけど。俺は、黒崎(くろさき) (しゅん)。3年で美術部。よろしくな」
「アンタ、その見た目で美術部って冗談かよ?」
 あれ?なんで、俺、普通にしゃべっちゃってんだろ?
 普段なら、こんなふうに他人からぐいぐいと距離を詰めてこられるのは、不快でしかないはず。
 なのに、不思議と気にならならなかったから、余計に腹がたった。
「それ、よく言われる。絶対、ウソだろうって。今も、この坂の下の風景をスケッチしてきた帰り。この下って田んぼになってて、夕日に染まるとすっごく綺麗なの知ってる?」
「田んぼなのは、知ってる。その田んぼ道を、毎日、20分ぐらい自転車で走てっから。でも綺麗って思ったことは、一回もないわ。道はデコボコでケツ痛くなるし、雨がふれば、ぬかるんで走りずれぇし、泥が飛んで制服や自転車が汚れっから」 
「ひょっとして、ここ帰り道?」
「そうだけど」
「なら、ちょうどいいや」
 黒崎の口元がキュッと上がった。ニヤりって音が聞こえたのは、気のせいか。
「一人で絵描いてんの、つまんないんだよね。明日、スケッチするの付き合ってよ。おまえと一緒だと楽しそうだし。10分でも20分でもいいから。どう?」
「どう、って。絵は一人で静かに、描くもんじゃねぇのかよ」
「だいたいのヤツはね。でも、おまえといると楽しそうだし。お礼はするからさ」
「お礼って、たとえばなに?」
 一応、興味本位で聞いてみる。
「そうだな、一回につき、そこの駄菓子屋のお菓子一つでどう?」
「安っ!!」
「仕方ないだろ。それじゃ、購買のパンもつけてやるよ。毎回は無理だけどさ。それなら文句ないだろ?」
 そういう問題じゃねーって。頭の中で、黒崎の胸ぐらをつかんで思いっ切り揺さぶる。
 このまま、しゃっべっていると、完全にこいつのペースに巻き込まれてしまいそうだ。
「嫌だっつーの」
 そう言いながら自転車にまたがった。と同時に、店の脇道からひょっこりトミ子さんが現れた。
「あら、葉月くん、待たせちゃったのね。ごめんなさいね。せっかく、今日はお友達と一緒なのに」
 こいつ、友達じゃねぇーし。
 って言葉を呑み込んだのは、説明するのが単に面倒くさかったから。
「トミ子さん、ごめん。せっかくだけど、今日は帰るわ。あと、不在って堂々と書いて泥棒にでも入られたら、どうすんだよ。ただでさえ、年寄りの独り暮らしって、狙われやすいんだからさっ」
「ふふっ。心配してくれて、どうもありがとう。今度から気をつけるわね」
「ん、気をつけてね。そんじゃ、帰るから」
 ペダルに足をかけて漕ぎ出そうとしたときの、「ふーん、名前、葉月っていうんだ。おまえ、口悪いけど、意外と優しいんだな」という黒崎の呟くような声は聞こえなかったことにする。
 褒めるか、貶すかどっちかにしやがれ。
 滑るように走りだした自転車に向かって、黒崎の大きな声が追いかけくる。
「葉月、明日、授業終わったら美術室で待ってる」
「うっせぇ―って。絶対、行かねぇから」
 後ろを振り向くと、黒崎はニコニコしながら手を振っていた。
 なんなの、あいつ?なんか、腹立つわ。
 そのまま一気に加速して坂道をくだった。田んぼの水面に夕日があたって、オレンジ色の光がキラキラと反射する。
 「夕日に染まるとすっごく綺麗なの知ってる?」と言った黒崎の声を思い出す。確かに、綺麗かも。
 それよりも、だ。腹からグーと大きな音がした。
 黒崎 瞬、覚えとけよ。おまえのせいで、アイスも菓子も食えなかったじゃん!!


 あー、疲れた。
 誰もいない家についた途端、大きなため息が出た。
 毛玉のついたジャージに着替えて、台所にあったカップラーメンで腹を宥めたあとは、リビングのテレビの前へ。
 ネットの向こう側の知らないヤツらと異世界に冒険へと旅立つ。
 仲間がミスれば盛大に舌打ちをするし、家の外では決して使わない汚い言葉遣いで罵りまくる。
 もちろん、マイクはオフにして。
 ダンゴムシみたいに、どんどん丸まっていく背中。ゲームのコントローラーを両手で握りしめて、ブツブツ文句を言う姿は、絶対に人様に見せられたもんじゃない。
 見られたら、きっと爆死する。
 それでもやめられないのは、誰の目も気にしないで遊べるこの空間が、心地良くて、楽しいから。
 きっと自分の中で、大切な時間なんだと思う。
「ただいま。って葉月、おまえ、よく電気もつけないで、暗闇でゲームできんな」
 カッチという音がして、急に周りが明るくなった。
 ゲームを始めたときは夕焼け色だった部屋が、いつのまにか真っ暗になっていたようだ。
「兄貴、おかえり」
 画面から目を離さずに返事するのは、いつものこと。
「いつもながら、学校とのギャップがエグいな。おまえ、『王子』って女子に呼ばれてんの知ってる?そう騒いでる女子達が、その姿を見たら絶対に引くって」
「大丈夫。絶対、見せねぇし。俺、外ヅラだけは完璧だから」
「ホント、葉月の外ヅラの良さには感心するよ。そう言えば、今日、俺の友達に話かけられなかった?」
「うん、黒崎ってやつだろ?ワイルド系みたいな?」
 ようやくゲームの世界から帰還して、首だけ後ろにひねる。
 スポンサー企業のロゴがいくつも入ったユースのジャージを着た兄貴が、ドアにもたれるように立っていた。肩には大きなエナメルバックが、かかったままだ。
「え!おまえ、あの黒崎と知り合いなの!?いや、それも意外っていうか。まぁ、いいや。俺が言ってるのは、サッカー部の佐藤ってやつのなんだけど」
 なんだ、黒崎のことじゃねぇのかよ。それに、あのってなんだよ。
 いや別に、いいんだけどさ。
 あいつのことを聞きたかったわけじゃないし。
「そう言えば、名前わかんねぇけど、サッカー部のやつに兄貴と間違われたわ」
「それそれ。『樹の弟ってバカ爽やかじゃん。キュン死すっかとおもった』ってメッセージきてた。おまえの好感度は、女子だけに高いんじゃないんだなって思って。すげえよな、おまえ」
「だろ?」
 もちろん、わかってる。すげえのは俺じゃない。兄貴ほう。
 平日は週4回、みっちり練習が3時間。週末は、ほぼ試合。体のために栄養バランスを意識した食事に筋トレ。
 そんな生活、俺には無理だ。
 学校終わったらゲームしたいし、漫画読んだり、動画だってみたい。カップラーメンも、スナック菓子もファストフードのポテトも、家で気にせず食べたい。
 それを躊躇する日常なんて、間違いなく窒息しそうだ。
 兄貴と一緒に地元のサッカーチームに入ったのは、俺が幼稚園のときのこと。始めて1年も経たないうちに、兄貴は天才サッカー少年として地元で有名になっていた。
 コーチや仲間、応援にくる保護者たちに囲まれて、称賛の声を浴びる兄貴が単純に羨ましかった。
 俺も褒められたい。憧れられたい。チヤホヤされたい。
 気付けば、サッカーよりも、己を良く見せる技術だけが上手くなっていた。
 大人からは褒められるし、学校でも適度にチヤホヤされてる。そんな現状にとくに不満はない。そりゃ、ちょっとは疲れるけど。
 ケラケラと笑いながらリビングを出ていく兄貴の背中を見送ってから、俺もようやく立ちあがった。丸くカチカチに固まっていた背中が痛くて大きく背伸びをしてから、台所にむかう。
 夕飯は各自、食べたいときに。それが村瀬家流。
 まだ仕事から帰ってこない母ちゃんが、出勤前に作っていった夕飯をレンジで温めて、今日も一人でサックと食事を済ませた後は、そのまま自分の部屋に戻って、勉強机の前にどかりと座る。
 授業中に先生に指されて、答えられないのはカッコが悪い。なんでもソツなくこなす村瀬 葉月のイメージ的には、試験でさらりと学年で10位ぐらいには入ってたい。
 だけど、さらりとそう出来るほど賢くはない。
 だから誰も見てないところで、ガツガツ努力するのだ。右手の中指にできたペンダコが痛いぐらい。
 リュックから教科書とノートを取り出した。ついでに黒崎のせいで食べ損なったシガレット・チョコレートの箱も。
 なぜだか黒崎が頭をちらつく。
 タバコと勘違いして怒ったときの真剣な顔。チョコレートだと知ったときのクシャりとした笑顔。別れぎわにガキみたいに手をふる姿。
 ふざけんな、黒崎 瞬。これじゃ、勉強に集中できねぇよ。