そばにいたのはキミだった

そしてあっという間に放課後。俺は約束をした北校舎の空き教室へと向かった。

無駄に音を立てる引き戸を開けると、そこには既に宵衣くんが椅子に座っていた。

「あ…!お、お待たせ」
「香夜くん、よかった。来てくれたんだ」
「え?そりゃ来るよ、約束したんだから」
「…え」
「それより、待たせた?ごめん」
「あ、ああ。全然待ってないから大丈夫。俺もさっき着いたとこ」

少し埃っぼい部屋だが、普通に滞在できる程度。窓が少し開いていて換気されているおかげだ。宵衣くんが開けてくれたんだろうか。


俺も宵衣くんの机を挟んだ目の前、ここに座れと言わんばかりに置かれている椅子に腰掛けた。

「じゃあ、まず返事を書くんだよね。この便箋使って」

「え、いいの?私物?」

「前に使ったものが鞄に入ってたんだ。でも綺麗だよ」

「おお、ありがとう!」

薄茶色のビンテージっぽい便箋を手渡され、自分の筆箱から一番書きやすいボールペンを取り出した。


「ええと、まずは名前か…」
「園原ね。字は公園の園に原っぱの原」
「分かった、ええと…そのはらさま…この度は…」
「…ふはっ、いやいや。そんな畏まらなくて大丈夫だと思うよ」
「えっ!?」


目の前で、宵衣くんが肩を震わせて笑っている。困ったように眉毛を下げて口を手で覆っていた。


この人、こんな風に笑うんだ。さっき怖いって思ったのが嘘みたいな。子供みたいな可愛らしい笑顔だった。


「あ、そ、そうか。俺手紙なんて書くのも久しぶりで…」
「いや。面白いね、香夜くんって」
「え、そう?何も面白いことなんてできないけど…」
「ほんと…そういうとこだよ」


笑っているのに困っているような、そんな表情に変わった。

陽キャは怖いって思ってたけど、この人はそんなことないのかも…。

「文は香夜くんが考えた方がいいから、何か分からないことあったら聞いて?」
「あ、うん…」


でも、なんでこんなに書いてるとこ見てくるんだ…!?
視線が刺さって仕方ない…!


チラッと顔を上げてみると、宵衣くんは頬杖つきながら相変わらず俺を見ていた。そしてニコッと口角を上げて首を傾げる。


なんだろう。思わず目を慌ただしく逸らしてしまった。睨まれてるというよりも、見守られてるような…変な感じだ。