そばにいたのはキミだった


しまった。美味しい卵焼きの味に緊張が緩んだせいか、家庭のことまで話してしまった。この手の話はリアクションしづらいから、学校の人に話さないように気を付けてたのに。

嫌な気持ちにさせちゃったかな…。

「そうなんだ。ありがとう」
「…え?」

ありがとうって…どういうこと?

「香夜くんのこと教えてくれてありがとう」

宵衣くんは優しい笑みを浮かべて、ぽかんとしている俺の口に弁当のウインナーを放り込んできた。

「美味しい?」
「むぐ…っ、美味しい」

ウインナーを頬張っている俺を見て、嫌な気持ちどころかむしろ満足そうな宵衣くん。本当に何を考えているか分からない人だ。知り合ってすぐの俺にこんなにおかずを分けてくれるし、あんな話を聞いてありがとうなんて言ってくるし。

さっき俺がE組の近くにいた時は、雰囲気違って見えたのに…少し不機嫌みたいな。今は終始笑顔というか、ずっと嬉しそうに俺に笑いかけている。


「香夜くんは、家でもコンビニご飯ばっか食べてるの?」
「ああ、いや!毎日じゃないけど…たまにはチャーハンとか焼きそばとか簡単なの作ったりするよ」
「そうなんだ」

そんなの聞いてどうするだろうとは思うが、不思議と居心地は悪くなかった。さっきは少し気まずさを感じていたのに、なんだか心地よくなってきている気がする。

「それにしても、ここポカポカして気持ちいいね」
「うん…そうだね」

そうか、心地いいのはこの陽気のせいか。

タイプが違うのに上手く接していけるかなとか思ってたのに、今はそんな不安を感じていない。

むしろ…

「なんか…心地よくて、眠くなっちゃうかも」

ご飯を食べ終わった時、昨日の寝不足と満腹感も相まって急に睡魔が襲ってきた。緊張が解けたせいもあるかもしれない。

「大丈夫?眠いなら少し寝る?」
「えっ、でも…」
「全然いいよ。時間が迫ってきたら起こしてあげる」
「あ、ほんと…?じゃあ、ちょっとだけ…」

宵衣くんの対応が、この静かな空気感が俺の緊張や不安を溶かしていくみたいで…。