そばにいたのはキミだった


次の日。
手紙のことが気になって全然眠れなかった…。

4時間目の時点で、既に限界を迎えそう。現国の授業が子守唄にしか聞こえなくて困る。


「香夜、おい。大丈夫か?」
「あぇ?だ、大丈夫…」
「今完全に寝てただろ。気を付けろよ、原セン急に目つけてくるから」
「うん。サンキュー」


もう手紙読まれたかな。変に思われていないか心配になってしまう。

ヴーーヴーーー

「あっ…」


そう考えながら、また机に突っ伏そうとした時だった。ポケットに入れていた携帯が振動し始めた。


先生の目を盗んで通知を開くと、宵衣くんからLINEが来ていた。そこには「手紙渡したよ。すごく喜んでた。早速日記を書いたみたいだから、今日渡すね。昼休み会える?」と書かれている。


一生懸命書いた手紙、喜んでくれたんだ…!よかった!


内容にホッと一安心して、こそこそと返信を送った。隣で慧人が何してんだよ、と口パクで言っているがピースで返しておいた。


もう授業の内容が入ってこないくらい、自分でもウキウキしているのが分かる。


ついに今日から交換日記が始まるんだ…!
このままいくと、本当に初彼女ができるかもしれないのか…!


授業が終わり、俺は鞄から昼用に買ったおにぎりとパンが入った袋を取り出し席を立った。


「慧人、今日外で食べてくる!」
「おー分かった。てかさっきのピース何?」
「内緒!」


慌ただしく教室を出て、約束した屋上へ行こうとした時。ふと、E組の方へ足を向けていた。


こっち向かえばE組に行けるし…やっぱりちょっと気になる。
話しかけられないにしても、相手が一体どんな子なのか見てみたい…。


廊下を引き返して、E組の教室へと足を進めた。俺が宵衣くんに声をかけると周りがざわつくかもしれないから、こっそり遠目から覗いてみよう。


E組の近くに来て遠くから中を覗いたが、そこであることに気付いた。


「あっ、見ただけじゃ園原さんがどの人か分からない…!」


そうだ、面識がないのを忘れていた。どっちみち宵衣くんに聞かないと分からないんだ。


はーっとため息を吐いて元来た道を戻ろうとした時だった。

「香夜くん」
「ぅわっ!!!?」


振り返ると、至近距離に宵衣くんの胸元があった。シャツの隙間からネックレスが見えている。驚いて跳ねた俺は、後ろによろけてしまった。


「おっと…!危な、大丈夫?」
「あ、ありがとう…」


だけど宵衣くんが腕を掴んでくれたから、倒れずに済んだ。手が大きくて、引き寄せられる力が思ったより強い。


「なにしてんの?うちのクラスに用?」
「あ、えっと…つい、園原さんってどんな子か見てみたくなって…」
「あー…そういうことね」


あれ、掴まれた手が離されない。


「うーん、今いないね。購買に行ったのかも」
「あ、そっか…」
「茶髪のロングヘアだよ。もし見かけたら教えるね」
「そうなのか、ありがとう…」


やっと手が離されると、握られていた場所にスーッと冷たい空気を感じた。体温高いんだな…。


「じゃあ、屋上行こっか」
「あ、そうだね」


園原さんを見られなかったのは残念だけど、俺には交換日記がある!