「本日は、孫の美月の誕生日パーティーにお越しくださいまして、ありがとうございます」
一縷は集まってくれた招待客たちに向けて、会釈をする。
「半世紀近く頭首として一門を率いてきましたが、私ももうすでに老耄の身。美月も十八になり、一つの節目を迎えた今日、次の世代にバトンを繋ぎたいと思います。伝統に倣い、この場を借りて、次の頭首を発表させていただきたいと思います」
一縷の言葉に、会場の空気が変わる。期待と緊張が、会場を支配し、次の言葉に、全員が息を呑んでいる。
「次の頭首は__青紫。彼にお願いしようと思います」
一縷の言葉に、会場は一気にどよめきだす。
「どうして青紫様を」
「美月様はどうされたんだ」
まさかの決定に、優子も困惑する。
(一体、何がどうなって)
「お祖父様」
青紫も驚きを隠しきれず動揺している様子だ。
「やっぱり、ご自分のお孫さんを選んだんだわ」
「美月様、お可哀想に」
(……え?)
近くに立っていた招待客の言葉に、優子は疑問を抱く。
「あの、それって、どういうことですか」
招待客の二人は顔を見合わせると、言いにくそうに口を開く。
「美月様は、ご頭首様が引き取った養子なのよ」
「養子……」
(それって……血の繋がりがないってことよね)
美月は発表を受け止めきれず、呆然と立っている。
「でも、青紫様は妖怪の血を引いてられるのよ」
「それさえなければ、適任なんだけどな……」
パーティーの招待客たちは混乱し、みな口々に話だし、騒がしくなる。
「お祖父様、一体、どういうことですか」
詰め寄る青紫に、一縷は冷静に言う。
「言った通りだ。次の頭首は青紫、お前だ」
美月はその場にいるのが耐えられず、走り去ろうとする。
「美月……!」
青紫は美月を追おうとするが、鶴岡と共に会場を後にしようとする一縷に足を止める。
「お祖父様、お待ちください。話はまだ終わっていません」
一縷にそう言いながらも、青紫は美月のことが気になり、その場で右往左往してしまう。
「美月は私が」
「優子さん……」
優子は任せてほしいと、青紫の腕に片手を置く。
「大丈夫です。行ってください」
「……分かりました。お願いします」
青紫が一縷を追い、パーティー会場を後にすると、優子も美月の後を追い、会場を離れた。
(美月、どこへ……)
広い屋敷なだけあって、美月の姿はなかなか見つからない。自分の部屋にでもいるのかと思うも、美月の部屋がどこにあるのかさえも知らない。どうしたものかと思っていると、人気のない廊下の隅に、人の足が見えた。角を曲がると、そこにはひっそりと一人座り込む美月がいた。優子は呼吸を整えると、できるだけ明るく、美月に声をかける。
「美月」
俯いていた美月が優子を見て、無理に笑みを浮かべた。なんとも痛々しい笑みに、優子の胸にも棘が突き刺さるようだ。
「優子……。僕を追いかけて来てくれたの?」
「そうよ」
弱々しい美月の声に、優子は静かに美月の隣に腰を下ろした。
「次の頭首が兄さんだなんて、やっぱり、血の繋がりがない僕なんて、お祖父様は好かないよね」
「そんなこと……」
「いいんだ。分かっていたことだし」
「美月……」
あまりにも酷なことを言い、自嘲気な笑みを浮かべる美月に、優子は何も言えなくなってしまう。
「僕には祓い屋の才能があるって、お祖父様は言ってくれた。みんなも、僕が次の頭首になるんだって。兄さんは優秀だけど、半妖だからなれないって」
美月は両足を折り曲げると、自分を抱きしめるかのように、その大きな体をぎゅっと丸める。
「……僕は、期待に応えるために、ずっと頑張ってきた。なのに……これはあんまりだ……」
塞ぎ込む美月に、優子はかける言葉が見つからず、その横顔を見つめることしかできない。
一縷は集まってくれた招待客たちに向けて、会釈をする。
「半世紀近く頭首として一門を率いてきましたが、私ももうすでに老耄の身。美月も十八になり、一つの節目を迎えた今日、次の世代にバトンを繋ぎたいと思います。伝統に倣い、この場を借りて、次の頭首を発表させていただきたいと思います」
一縷の言葉に、会場の空気が変わる。期待と緊張が、会場を支配し、次の言葉に、全員が息を呑んでいる。
「次の頭首は__青紫。彼にお願いしようと思います」
一縷の言葉に、会場は一気にどよめきだす。
「どうして青紫様を」
「美月様はどうされたんだ」
まさかの決定に、優子も困惑する。
(一体、何がどうなって)
「お祖父様」
青紫も驚きを隠しきれず動揺している様子だ。
「やっぱり、ご自分のお孫さんを選んだんだわ」
「美月様、お可哀想に」
(……え?)
近くに立っていた招待客の言葉に、優子は疑問を抱く。
「あの、それって、どういうことですか」
招待客の二人は顔を見合わせると、言いにくそうに口を開く。
「美月様は、ご頭首様が引き取った養子なのよ」
「養子……」
(それって……血の繋がりがないってことよね)
美月は発表を受け止めきれず、呆然と立っている。
「でも、青紫様は妖怪の血を引いてられるのよ」
「それさえなければ、適任なんだけどな……」
パーティーの招待客たちは混乱し、みな口々に話だし、騒がしくなる。
「お祖父様、一体、どういうことですか」
詰め寄る青紫に、一縷は冷静に言う。
「言った通りだ。次の頭首は青紫、お前だ」
美月はその場にいるのが耐えられず、走り去ろうとする。
「美月……!」
青紫は美月を追おうとするが、鶴岡と共に会場を後にしようとする一縷に足を止める。
「お祖父様、お待ちください。話はまだ終わっていません」
一縷にそう言いながらも、青紫は美月のことが気になり、その場で右往左往してしまう。
「美月は私が」
「優子さん……」
優子は任せてほしいと、青紫の腕に片手を置く。
「大丈夫です。行ってください」
「……分かりました。お願いします」
青紫が一縷を追い、パーティー会場を後にすると、優子も美月の後を追い、会場を離れた。
(美月、どこへ……)
広い屋敷なだけあって、美月の姿はなかなか見つからない。自分の部屋にでもいるのかと思うも、美月の部屋がどこにあるのかさえも知らない。どうしたものかと思っていると、人気のない廊下の隅に、人の足が見えた。角を曲がると、そこにはひっそりと一人座り込む美月がいた。優子は呼吸を整えると、できるだけ明るく、美月に声をかける。
「美月」
俯いていた美月が優子を見て、無理に笑みを浮かべた。なんとも痛々しい笑みに、優子の胸にも棘が突き刺さるようだ。
「優子……。僕を追いかけて来てくれたの?」
「そうよ」
弱々しい美月の声に、優子は静かに美月の隣に腰を下ろした。
「次の頭首が兄さんだなんて、やっぱり、血の繋がりがない僕なんて、お祖父様は好かないよね」
「そんなこと……」
「いいんだ。分かっていたことだし」
「美月……」
あまりにも酷なことを言い、自嘲気な笑みを浮かべる美月に、優子は何も言えなくなってしまう。
「僕には祓い屋の才能があるって、お祖父様は言ってくれた。みんなも、僕が次の頭首になるんだって。兄さんは優秀だけど、半妖だからなれないって」
美月は両足を折り曲げると、自分を抱きしめるかのように、その大きな体をぎゅっと丸める。
「……僕は、期待に応えるために、ずっと頑張ってきた。なのに……これはあんまりだ……」
塞ぎ込む美月に、優子はかける言葉が見つからず、その横顔を見つめることしかできない。
