人形令嬢と半妖のあやかし祓い屋

物心ついた時には、それが見えていた。他の人には見えないそれは、妖怪と呼ばれるものの類だそうで、優子の頭を悩ませる元凶だった。
優子が妖怪という存在を認識したのは、前園家へやって来て少しした頃。新之助が当主となった祝いで行われた、パーティーでのことだった。
「ねぇ、あそこにいるの誰?」
窓の外にいる女性と思われる存在が気になった優子は、小百合にそう問いかけた。
「え?」
優子が指差した先、誰もいないのを見て、小百合は首を傾げる。
「誰もいないわよ?」
「そこよ、そこにいるわ」
小百合は目を凝らし、窓の外をじっと見つめるが、その目には何も見えない。
「やっぱり誰もいないじゃない。嘘つかないの」
「嘘じゃないわ。長い髪をした女の人が、こっちをじっと見てる」
訝しげにする小百合の着物の袖を引き、優子は懸命にそう言うが、小百合は頭を抱えるだけ。
「はぁ……お願いだから、今日は私を困らせないで。前園家の者ならちゃんとしなさい」
「でも、本当にそこにいるんだもの……」
確かにそこにいる。だが、それは自分にしか見えないものだった。それからも、妖怪を見ては小百合や新之助、使用人たちにもその存在を伝えてきたが、誰の目にも見えず、信じてくれる者は誰一人としていなかった。
母親を失った幼い子供が大人の気を引きたくて嘘をついている。大人たちはそんな風にしか思わず、手のかかる子供だと、優子を煙たがるようになった。そのうち、優子が妖怪のことを口にすることはなくなかった。言っても誰にも信じてもらえない。理解してもらえない。その事実は子供だった優子にとって、深い傷を残すこととなった。