優子が車に戻った数分後、青紫が戻っていた。
「忘れ物はありましたか?」
「ええ」
青紫が後部座席に、座ると、車が発進する。
「今から森に行きましょう」
「……森に?」
「あなたに会わせたい者がいます」
笑みを浮かべそう言った青紫を、優子は不思議そうにして見ていた。
車は神社の前に止まる。石階段を上がると、青紫は木々が立ち並ぶ森の奥へどんどん突き進む。その後ろを優子は付いて行った。
「黒羽さん、一体、誰に会わせようとして、もう教えてくれてもいいんじゃないですか?」
「もうすぐですから」
木々を抜けると、広い空間が広がっていた。真ん中には、人ひとりが隠れられそうなほどの大きな岩がある。
こんなところに、一体誰が待っていると言うのか。
すると、岩の後ろから、ちょこんと、小さな妖怪が顔を出した。その妖怪に、優子は大きく目を見開いた。
「……ウサギ……?」
ウサギは後ろめたさそうに岩から姿を見せる。
「おいらは会わない方がいいって言ったんだけど、その八咫烏がおいらを探しに来て、優子に会えって……」
ウサギは優子を一瞥すると、気まずそうにまた顔を俯かせた。
ウサギだ。ウサギがそこにいる。
優子は一歩二歩と足を前に出すと、両の目に涙を浮かべながら、ウサギの元へ一直線に走り出す。そして、膝をつき、小さなウサギを掬い取るように両手に乗せると、頬に寄せ涙を流した。
「ウサギ……ウサギ……ウサギ……っ! ずっと……会いたかった……っ」
何度も自分の名を呼び涙を流す優子に、ウサギの目にも涙が浮かび、溢れ出た。
「ごめんっ……!! あの時、お前を置き去りにして……!!」
ウサギは大粒の涙を流しながら、優子の頬に両手を添え、擦り寄り謝る。
「いいの……もう、いいのよ……あなたが無事で、よかった……」
涙でいっぱいになった優子の顔に、笑みが浮かぶ。
「優子……」
「会いに来てくれて、ありがとう……」
うさぎは鼻水を流しながら、大声を上げ、子供のように泣いた。
「まったく……」
そんなウサギを見て、呆れた様子の青紫は、優子の隣にしゃがみ込むと、懐からハンカチを取り出し、ウサギに差し出す。ウサギは大きなハンカチを手に取ると、グシュンっと音を立て、盛大に鼻をかむ。
「あなたも妖怪なら、少しは威厳というものを保つべきかと。こんな子供のように泣きじゃくって……」
「ええいうるさいっ! これが泣かずにいられるか!」
言いながら、ウサギは青紫を睨む。ウサギと青紫のやりとりに笑う優子。そして、何かを思い出したかのように、優子はあっとした顔をする。
「そうだ、名前……名前を教えてほしいの」
「名前って、おいらのか……?」
優子は頷く。
「私たち、友達でしょ?」
「友達……」
優子の言葉に、ウサギは目を輝かせる。
「おいらは、ヨモギ」
「ヨモギ……素敵な名だわ」
笑顔でそう言った優子に、ウサギは嬉しそうにすると、また大粒の涙を流す。あの時、流した涙は大きな悲しみの涙だったが、今は大きな喜びの涙と変わった。
「改めて、これからよろしくね、ヨモギ」
「おう! よろしく、優子!」
微笑む優子に、ヨモギも微笑んだ。
「忘れ物はありましたか?」
「ええ」
青紫が後部座席に、座ると、車が発進する。
「今から森に行きましょう」
「……森に?」
「あなたに会わせたい者がいます」
笑みを浮かべそう言った青紫を、優子は不思議そうにして見ていた。
車は神社の前に止まる。石階段を上がると、青紫は木々が立ち並ぶ森の奥へどんどん突き進む。その後ろを優子は付いて行った。
「黒羽さん、一体、誰に会わせようとして、もう教えてくれてもいいんじゃないですか?」
「もうすぐですから」
木々を抜けると、広い空間が広がっていた。真ん中には、人ひとりが隠れられそうなほどの大きな岩がある。
こんなところに、一体誰が待っていると言うのか。
すると、岩の後ろから、ちょこんと、小さな妖怪が顔を出した。その妖怪に、優子は大きく目を見開いた。
「……ウサギ……?」
ウサギは後ろめたさそうに岩から姿を見せる。
「おいらは会わない方がいいって言ったんだけど、その八咫烏がおいらを探しに来て、優子に会えって……」
ウサギは優子を一瞥すると、気まずそうにまた顔を俯かせた。
ウサギだ。ウサギがそこにいる。
優子は一歩二歩と足を前に出すと、両の目に涙を浮かべながら、ウサギの元へ一直線に走り出す。そして、膝をつき、小さなウサギを掬い取るように両手に乗せると、頬に寄せ涙を流した。
「ウサギ……ウサギ……ウサギ……っ! ずっと……会いたかった……っ」
何度も自分の名を呼び涙を流す優子に、ウサギの目にも涙が浮かび、溢れ出た。
「ごめんっ……!! あの時、お前を置き去りにして……!!」
ウサギは大粒の涙を流しながら、優子の頬に両手を添え、擦り寄り謝る。
「いいの……もう、いいのよ……あなたが無事で、よかった……」
涙でいっぱいになった優子の顔に、笑みが浮かぶ。
「優子……」
「会いに来てくれて、ありがとう……」
うさぎは鼻水を流しながら、大声を上げ、子供のように泣いた。
「まったく……」
そんなウサギを見て、呆れた様子の青紫は、優子の隣にしゃがみ込むと、懐からハンカチを取り出し、ウサギに差し出す。ウサギは大きなハンカチを手に取ると、グシュンっと音を立て、盛大に鼻をかむ。
「あなたも妖怪なら、少しは威厳というものを保つべきかと。こんな子供のように泣きじゃくって……」
「ええいうるさいっ! これが泣かずにいられるか!」
言いながら、ウサギは青紫を睨む。ウサギと青紫のやりとりに笑う優子。そして、何かを思い出したかのように、優子はあっとした顔をする。
「そうだ、名前……名前を教えてほしいの」
「名前って、おいらのか……?」
優子は頷く。
「私たち、友達でしょ?」
「友達……」
優子の言葉に、ウサギは目を輝かせる。
「おいらは、ヨモギ」
「ヨモギ……素敵な名だわ」
笑顔でそう言った優子に、ウサギは嬉しそうにすると、また大粒の涙を流す。あの時、流した涙は大きな悲しみの涙だったが、今は大きな喜びの涙と変わった。
「改めて、これからよろしくね、ヨモギ」
「おう! よろしく、優子!」
微笑む優子に、ヨモギも微笑んだ。
