今日は謝ってばかりだ。今日、というか社会人になってからずっと。
すみません。申し訳ありません。こちらに非があります。ご期待に添えず申し訳ないです。
謝るために生まれてきたんだっけ?って思うくらいに頭を下げて、そのたびに謝罪の言葉を覚えた。
今日もそう、今日は部長に謝った。
俺が悪いときもある。俺が悪くないときもある。
それでも同じように同じ熱意で同じだけの誠意を込めて謝る。ソレがオトナ。
ああ、虚しい。
手に持ったビニールがカサカサと音を立てる。
仕事帰り、深夜のコンビニ。
誘惑しかない場所。
身近なテーマパーク、にしては地味。
コンビニで一個300円とか、下手したら4〜500円するスイーツを大量買いする。ソレもオトナ。
これはちょっと贅沢。
一人暮らしの部屋は1人を感じすぎるからこの贅沢には向かない。
だからなんとなく普段使わない階段を音を立てないように登る。
「あっ」
「え?あ、」
先客が居た。
「すいません。帰ります」
「え、いや通らないんですか?」
「目的地、ここなんで」
「・・・」
いや、きまずい。そりゃそうだ。踊り場が目的地って変なやつでしょ。
どうしよう管理会社に連絡されたら。
「あの、座ります?タバコ嫌っすかね?」
「え?」
「お兄さんなんか食べるんじゃ?」
「あ、まあ」
「なんか最近帰り遅いっすね」
「え・・・キモっ」
「え?」
「あ、すいません」
「あったしかに、キモいわ。キモいっす。すいません」
「いや、俺こそすいません」
「いや、俺が悪いんで。すいません」
ペコペコと謝りあって目があった瞬間互いに少し吹き出した。
くだらない。
「部屋となりなんすよ、俺」
「え?・・・あ、あぁ」
「あんますれ違ったりしないけど」
「あぁ、よく覚えてますね」
「一回挨拶した人の顔忘れないんで」
そう言ってタバコの火を消したそのひとは一瞬腰を浮かして少し横にズレたあと
「どうぞ」
といって隣を指さした。帰んねぇのかよ。
まあせっかくあけてもらったスペースをつかわないのも失礼か、なんて思って隣に腰を下ろした。
ビニール袋の中にはおしぼりとプリン。プラスチックのスプーン。期間限定のシュークリーム。
手を拭いてプリンとスプーンを取り出したら隣から「あー、意外」なんて聞こえて少し笑えた。
シュークリームは一旦袋に入れたまま。
スプーンの袋を破いたら小さくカサリと音がなった。
プリンの蓋はなんとも開けにくくて、しばらく戦ったら急にカポッと外れた。
「いただきます」
「・・・」
うん、うまい。プリンだ。
「・・・あの」
「はい」
「名前、」
「名前?」
「き、こうと思ったんだけど。先に年を聞いてもいいです、かね」
「・・・あぁ、20です。高校卒業してすぐ大工なりました」
「へぇ・・・俺27です。会社員です」
「あ、知ってます。スーツきてるんで」
「ですよね」
気まずかった。
多分、聞かなくていいことだったかもしれない。
そんななかで口に運んだプリンは甘くてお前はブレねぇな、と何となく思う。
「あの、プリンさんって呼んでいいっすか?」
そうきたか。わけぇな。斜め上だな。発想が。
「このあとシュークリーム食べますけど」
「でもプリンからいったんで」
なんだそれ。変なやつ。
「じゃあ、大工さんで」
「そのまますぎでしょ」
「えぇ・・・じゃあ、あ、クマサンで」
「なんで?」
不思議そうに眉を寄せる仕草がまだ幼く見えて、まだ20だもんなと思う。
「服、クマのプリントなんで」
「あぁ。寝間着なんすよこれ」
・・・意外とかわいい趣味してんね、あんた。
「じゃあ俺、帰りますね」
えー、マジ?
いや、別にいいんだけど。クマサン帰るの?
なんとなく、多分次会ったときも「あっ」「ちわっす」くらいになるんだろうなとおもう。
いいけどね。仲良くしたいわけじゃないし。
ただ、なんとなく、隣人だし。今後一生会わない相手じゃないし。
「・・・これ、いる?」
「え?いいんすか?」
「いいよ。シュークリーム、あげる」
「え、いくらっすか?」
「要らないよ。じゃあね、クマサン」
「ッス。おやすみなさい、プリンさん」
そんだけ。そんだけの話。
でも、だけど。残ったプリンを食べ終わって立ち上がったとき、少しだけ思った。
もしかしたらまたいつか、クマサンとこうやってなんとも言えない時間を過ごすかもしれないと。でもソレ以外でなにか関係が変わることはないだろうとも。
「さてと、明日も頑張りますか」
ガチャガチャ。
「あれ?」
ガチャ、カチャリ。
「あ、いけた」
鍵の通りが悪い。
これは、今日は多分運が悪い。
ふと隣の表札を見た。
【犬飼】
「あ、犬だったか」
大工の朝ってなんでこんなに早いんだろう。
昼に食べるおにぎりを買うためにコンビニに寄って、何となくいつものおかかおにぎりを手に取る。
いつものルーティーン。
でも今日はなんとなく、昨日のことを思い出してスイーツコーナーを通ってみる。
「あ、プリンさんのやつ」
「プリンさん?誰ソレ」
「え?あ、いやうちの隣の部屋の人っす」
「なんでプリン?」
「内緒っす。あ、おれクマサンなんすよ」
「犬飼だろ」
「そうだけど」
すみません。申し訳ありません。こちらに非があります。ご期待に添えず申し訳ないです。
謝るために生まれてきたんだっけ?って思うくらいに頭を下げて、そのたびに謝罪の言葉を覚えた。
今日もそう、今日は部長に謝った。
俺が悪いときもある。俺が悪くないときもある。
それでも同じように同じ熱意で同じだけの誠意を込めて謝る。ソレがオトナ。
ああ、虚しい。
手に持ったビニールがカサカサと音を立てる。
仕事帰り、深夜のコンビニ。
誘惑しかない場所。
身近なテーマパーク、にしては地味。
コンビニで一個300円とか、下手したら4〜500円するスイーツを大量買いする。ソレもオトナ。
これはちょっと贅沢。
一人暮らしの部屋は1人を感じすぎるからこの贅沢には向かない。
だからなんとなく普段使わない階段を音を立てないように登る。
「あっ」
「え?あ、」
先客が居た。
「すいません。帰ります」
「え、いや通らないんですか?」
「目的地、ここなんで」
「・・・」
いや、きまずい。そりゃそうだ。踊り場が目的地って変なやつでしょ。
どうしよう管理会社に連絡されたら。
「あの、座ります?タバコ嫌っすかね?」
「え?」
「お兄さんなんか食べるんじゃ?」
「あ、まあ」
「なんか最近帰り遅いっすね」
「え・・・キモっ」
「え?」
「あ、すいません」
「あったしかに、キモいわ。キモいっす。すいません」
「いや、俺こそすいません」
「いや、俺が悪いんで。すいません」
ペコペコと謝りあって目があった瞬間互いに少し吹き出した。
くだらない。
「部屋となりなんすよ、俺」
「え?・・・あ、あぁ」
「あんますれ違ったりしないけど」
「あぁ、よく覚えてますね」
「一回挨拶した人の顔忘れないんで」
そう言ってタバコの火を消したそのひとは一瞬腰を浮かして少し横にズレたあと
「どうぞ」
といって隣を指さした。帰んねぇのかよ。
まあせっかくあけてもらったスペースをつかわないのも失礼か、なんて思って隣に腰を下ろした。
ビニール袋の中にはおしぼりとプリン。プラスチックのスプーン。期間限定のシュークリーム。
手を拭いてプリンとスプーンを取り出したら隣から「あー、意外」なんて聞こえて少し笑えた。
シュークリームは一旦袋に入れたまま。
スプーンの袋を破いたら小さくカサリと音がなった。
プリンの蓋はなんとも開けにくくて、しばらく戦ったら急にカポッと外れた。
「いただきます」
「・・・」
うん、うまい。プリンだ。
「・・・あの」
「はい」
「名前、」
「名前?」
「き、こうと思ったんだけど。先に年を聞いてもいいです、かね」
「・・・あぁ、20です。高校卒業してすぐ大工なりました」
「へぇ・・・俺27です。会社員です」
「あ、知ってます。スーツきてるんで」
「ですよね」
気まずかった。
多分、聞かなくていいことだったかもしれない。
そんななかで口に運んだプリンは甘くてお前はブレねぇな、と何となく思う。
「あの、プリンさんって呼んでいいっすか?」
そうきたか。わけぇな。斜め上だな。発想が。
「このあとシュークリーム食べますけど」
「でもプリンからいったんで」
なんだそれ。変なやつ。
「じゃあ、大工さんで」
「そのまますぎでしょ」
「えぇ・・・じゃあ、あ、クマサンで」
「なんで?」
不思議そうに眉を寄せる仕草がまだ幼く見えて、まだ20だもんなと思う。
「服、クマのプリントなんで」
「あぁ。寝間着なんすよこれ」
・・・意外とかわいい趣味してんね、あんた。
「じゃあ俺、帰りますね」
えー、マジ?
いや、別にいいんだけど。クマサン帰るの?
なんとなく、多分次会ったときも「あっ」「ちわっす」くらいになるんだろうなとおもう。
いいけどね。仲良くしたいわけじゃないし。
ただ、なんとなく、隣人だし。今後一生会わない相手じゃないし。
「・・・これ、いる?」
「え?いいんすか?」
「いいよ。シュークリーム、あげる」
「え、いくらっすか?」
「要らないよ。じゃあね、クマサン」
「ッス。おやすみなさい、プリンさん」
そんだけ。そんだけの話。
でも、だけど。残ったプリンを食べ終わって立ち上がったとき、少しだけ思った。
もしかしたらまたいつか、クマサンとこうやってなんとも言えない時間を過ごすかもしれないと。でもソレ以外でなにか関係が変わることはないだろうとも。
「さてと、明日も頑張りますか」
ガチャガチャ。
「あれ?」
ガチャ、カチャリ。
「あ、いけた」
鍵の通りが悪い。
これは、今日は多分運が悪い。
ふと隣の表札を見た。
【犬飼】
「あ、犬だったか」
大工の朝ってなんでこんなに早いんだろう。
昼に食べるおにぎりを買うためにコンビニに寄って、何となくいつものおかかおにぎりを手に取る。
いつものルーティーン。
でも今日はなんとなく、昨日のことを思い出してスイーツコーナーを通ってみる。
「あ、プリンさんのやつ」
「プリンさん?誰ソレ」
「え?あ、いやうちの隣の部屋の人っす」
「なんでプリン?」
「内緒っす。あ、おれクマサンなんすよ」
「犬飼だろ」
「そうだけど」
