気付けば試験日当日。
時計を見て『もう着いた?』とメッセージを送る。するとすぐに『今キャンパス。寒い』と返ってきた。マンションのエアコンを一度だけ上げる。
自分の試験より人の試験は、なんというかできることがない。居心地が悪くて、時計を見ながら何度か立ったり座ったりを繰り返した。祈ってみても手ごたえなんてないから、ただひたすら時計を見ることしかできなかった。
約束のためキャンパスの門に藤野を迎えに行った。ちょうど向こうからくる藤野を見つけて手を振った。
よくできたのだろう、雰囲気は明るかった、俺を見つけてちょっと、安堵したような、うれしそうな顔を浮かべてくれたのが、かわいい。
「どうだった?」
「うん、うまくいったと思う」
藤野は言葉を飾らないから、本当にうまくできたのだろう。帰り道にスーパーに寄ってマンションについた。藤野は一度足を止めて、マンションを見上げていた。
オートロックの説明をすると、感心したようにうなずいている。
俺が先にキッチンに買ってきたものを置いていると、藤野は引き寄せられるようにリビングテーブルの横にあった座布団に座った。ドンピシャすぎて笑いがこみ上げてくる。藤野はひとつひとつ、確認するように見まわしていた。
一緒に内覧するかと言うと、すぐにうなずいて側に駆け寄ってくる。
俺の後をひよこみたいについてきた。トイレを見て「おー」と言い。おふろを見て「おー」と言い。どっちの部屋がいいかと尋ねると「広い!」ってつぶやいていた。そこはちょっと、算段が外れた。
ここ数日、我が家の昼ご飯がずっと、チャーハンになっていたくらい。練習したチャーハンと卵のすまし汁でもてなす。
「……どう?」
「佐伯君、おいしい」
藤野の眉が下がって、もぐもぐ食べている。
そう言ってもらえてうれしいのに、しつこく見ていたせいか。
「……おいしいよ。ありがとう」
そう、頬を赤くしてにっこりと笑った。
やった。大成功だ! 俺も自分のレンゲを口に運ぶ。頬が緩んでやばい。
そのあと、一番風呂押し付け大会に、押し負け。
リビングで幸せをかみしめていると、風呂上がりの藤野が当たり前に風呂掃除と、洗濯終わらせといたからと報告してくれた。
藤野ってちゃんとしてる。俺がうっかりしても、藤野がいれば大丈夫だなって、まだ家事は修行中で教わることも多そうだ。
「藤野と暮らしたら人間らしい生活できそう。いろいろ教えてね」
なんて情けないけど、本心を告げると、藤野はきょとんとしてうなずいている。
まあ、その後ドキドキするような展開はなかった。布団はリビングに二つ並べて寝たのだが、藤野って寝つきがよくて、寝ると起きない。修学旅行の時もそうだった。俺は一人緊張して何度か寝返りを打った。強引に目をつむっていたら、いつのまにか寝ていた。
玄関で「いってらっしゃい」と、手を振ると。藤野は強くうなずいて「いってきます」と言った。何だろう、全身から受かりたい!ってオーラが出ていて、うれしかった。
扉が閉まると同時に、深くて大きなため息が出た。
こういう生活が、四月からできる。まじか。
俺はまた1日目と同じように、部屋でうろうろして、藤野を迎えに行って地元行きの電車に乗った。
「なんか、うまくいったって顔してる」
隣で車窓を見ている藤野の横顔にそう声をかけた。藤野はゆっくりうなずいた。夕日に照らされて、頬が赤く染まっている。
がんばったな、藤野。
時計を見て『もう着いた?』とメッセージを送る。するとすぐに『今キャンパス。寒い』と返ってきた。マンションのエアコンを一度だけ上げる。
自分の試験より人の試験は、なんというかできることがない。居心地が悪くて、時計を見ながら何度か立ったり座ったりを繰り返した。祈ってみても手ごたえなんてないから、ただひたすら時計を見ることしかできなかった。
約束のためキャンパスの門に藤野を迎えに行った。ちょうど向こうからくる藤野を見つけて手を振った。
よくできたのだろう、雰囲気は明るかった、俺を見つけてちょっと、安堵したような、うれしそうな顔を浮かべてくれたのが、かわいい。
「どうだった?」
「うん、うまくいったと思う」
藤野は言葉を飾らないから、本当にうまくできたのだろう。帰り道にスーパーに寄ってマンションについた。藤野は一度足を止めて、マンションを見上げていた。
オートロックの説明をすると、感心したようにうなずいている。
俺が先にキッチンに買ってきたものを置いていると、藤野は引き寄せられるようにリビングテーブルの横にあった座布団に座った。ドンピシャすぎて笑いがこみ上げてくる。藤野はひとつひとつ、確認するように見まわしていた。
一緒に内覧するかと言うと、すぐにうなずいて側に駆け寄ってくる。
俺の後をひよこみたいについてきた。トイレを見て「おー」と言い。おふろを見て「おー」と言い。どっちの部屋がいいかと尋ねると「広い!」ってつぶやいていた。そこはちょっと、算段が外れた。
ここ数日、我が家の昼ご飯がずっと、チャーハンになっていたくらい。練習したチャーハンと卵のすまし汁でもてなす。
「……どう?」
「佐伯君、おいしい」
藤野の眉が下がって、もぐもぐ食べている。
そう言ってもらえてうれしいのに、しつこく見ていたせいか。
「……おいしいよ。ありがとう」
そう、頬を赤くしてにっこりと笑った。
やった。大成功だ! 俺も自分のレンゲを口に運ぶ。頬が緩んでやばい。
そのあと、一番風呂押し付け大会に、押し負け。
リビングで幸せをかみしめていると、風呂上がりの藤野が当たり前に風呂掃除と、洗濯終わらせといたからと報告してくれた。
藤野ってちゃんとしてる。俺がうっかりしても、藤野がいれば大丈夫だなって、まだ家事は修行中で教わることも多そうだ。
「藤野と暮らしたら人間らしい生活できそう。いろいろ教えてね」
なんて情けないけど、本心を告げると、藤野はきょとんとしてうなずいている。
まあ、その後ドキドキするような展開はなかった。布団はリビングに二つ並べて寝たのだが、藤野って寝つきがよくて、寝ると起きない。修学旅行の時もそうだった。俺は一人緊張して何度か寝返りを打った。強引に目をつむっていたら、いつのまにか寝ていた。
玄関で「いってらっしゃい」と、手を振ると。藤野は強くうなずいて「いってきます」と言った。何だろう、全身から受かりたい!ってオーラが出ていて、うれしかった。
扉が閉まると同時に、深くて大きなため息が出た。
こういう生活が、四月からできる。まじか。
俺はまた1日目と同じように、部屋でうろうろして、藤野を迎えに行って地元行きの電車に乗った。
「なんか、うまくいったって顔してる」
隣で車窓を見ている藤野の横顔にそう声をかけた。藤野はゆっくりうなずいた。夕日に照らされて、頬が赤く染まっている。
がんばったな、藤野。
