藤野は強く拒絶しないだろう。それが分かっているから、つい藤野にまとわりつくようになった。「背後霊」とか、「リードのついていない犬」と言われているのは気づいている。
それに、理転することを決めた。物理的な距離は埋めてしまいたい。
担任は、俺の固い決意に折れてくれて手続きをしてくれた。その代わり、必ず国立受かれよと念を押された。
その報告をすると藤野が心配そうに理系って言っても二クラスあるんだよと、諭すように言ってきた。
「俺は、ぜったい同じクラスになるって思ってるから」
すごく堂々と自信満々に。
「……なんで?」
「俺が藤野のそばにいるって決めたからな」って言うと、藤野はポカンとしている。
そして予想の通り、藤野と同じクラスになれた。
同じクラスになれたならもう決めた。迷わない……反省もない。
後悔もないように進むだけだ。
「お前やりすぎ」
三好が俺をにらんで、ため息をついている。藤野がいない時にだけ、本性を現すこの男は、俺が藤野にくっついているのを見て怒っているようだ。
「だって、藤野は拒否してない」
たぶん、藤野自身、戸惑っている感じは受けるが、俺が「なんか、くっついてないと寂しくて」とうつむくと、そうだよねって、同情してくれる。こんなにちょろくて大丈夫かと思う反面、俺相手ならどれだけでもちょろくあってほしいと思う。
「そういう三好だって、藤野くらいだぞ? わかってないの」
やけに距離の近い三人組を睥睨する。三好は気まずそうに頭を掻いた。そう、三好の彼氏はこのいつも三人で固まっている残り白石と、森川だ。
「藤野って、鈍感だから」
三好はそう言いつつもまた優しい顔をした。
「あいつがいるおかげで俺らは普通の高校生でいられる。だから壊したくないんだよ」
三好の弱音に言葉が出なかった。そうか、どんなに自信満々に見えても、俺たちはマイノリティだ。
「……分かった」
小さく答えると、三好はにやりと笑った。あれ? 今の三好の手のひらで転がされた?
そうしていると、藤野が席に戻ってくる。自販機で買ってきた人数分のパックジュースを机に並べる。俺がオレンジジュースを取ると「それだと思った」と藤野が無邪気に笑う。藤野だっていちご牛乳を持っている。俺も「それだと思った」ニヤニヤしていると、近くで三好のため息が聞こえた。
今日もおいしそうにいちご牛乳を飲んでいる藤野を見るとほっこりする。
三年になるとテストを受けるごとに進路を確認される。中間テスト後、配られた進路調査。部活は早々に引退して、放課後は藤野の家で勉強するようになっていた。
今日はいつにもまして藤野が浮かない顔をしていた。そういえば、藤野って受験についてあまり相談してくれない。見ていると第一希望にK大と書いていた。
「え、藤野……志望、K大なの?」
「うん、家から近いし」
その答えで何となく、藤野がそこにすごく行きたいわけではないことを察してしまった。これは何かを隠している。俺も、わざと進路調査にK大と書いて見せた。案の定、藤野は怒り出した。
「ちょっと、佐伯君……それはどうかと思うよ。ただでさえ、体育教師になるのは文系だって分かってるのに、理転しているし。そうやって、将来を他人の意見で決めるのはよくないよ」
藤野は自分のことよりも、人のことで怒るタイプだ。
「藤野が言ったんだ。叶えたいことのために勉強がある。って俺の叶えたいことは藤野のそばにいることだよ」
単刀直入に切り込んでみると、藤野は目を見開いてぐっと息をのんだ。
藤野の手が俺の頬を挟んだ。いつもより大胆な行動だ。でも藤野は真剣な目をしていた。
「あのね。一緒にいるのが目標になったらおかしくないかな。佐伯君は将来どういう形で僕と一緒にいたいの? 僕は体育教師になって、子供たちに学校の楽しさを教えてるかっこいい佐伯君が見たい」
人のことはちゃんと見えている。なのに、自分のこととなるとちゃんと見えていない。
それに、藤野の未来に俺がいることに気付いて言っているのかな。
「……その言い方はずるい」
俺だって、藤野が自分で選んで、胸を張っている姿が見たいんだよ。どうしたら、相談してくれるだろう。おまじないをかけるように藤野の手を取って手首にキスを落とした。内心やっちまった!って思ったけど。俺は真剣な顔を崩さなかった。
それから、藤野ずっと考え込んでいた。
それに、理転することを決めた。物理的な距離は埋めてしまいたい。
担任は、俺の固い決意に折れてくれて手続きをしてくれた。その代わり、必ず国立受かれよと念を押された。
その報告をすると藤野が心配そうに理系って言っても二クラスあるんだよと、諭すように言ってきた。
「俺は、ぜったい同じクラスになるって思ってるから」
すごく堂々と自信満々に。
「……なんで?」
「俺が藤野のそばにいるって決めたからな」って言うと、藤野はポカンとしている。
そして予想の通り、藤野と同じクラスになれた。
同じクラスになれたならもう決めた。迷わない……反省もない。
後悔もないように進むだけだ。
「お前やりすぎ」
三好が俺をにらんで、ため息をついている。藤野がいない時にだけ、本性を現すこの男は、俺が藤野にくっついているのを見て怒っているようだ。
「だって、藤野は拒否してない」
たぶん、藤野自身、戸惑っている感じは受けるが、俺が「なんか、くっついてないと寂しくて」とうつむくと、そうだよねって、同情してくれる。こんなにちょろくて大丈夫かと思う反面、俺相手ならどれだけでもちょろくあってほしいと思う。
「そういう三好だって、藤野くらいだぞ? わかってないの」
やけに距離の近い三人組を睥睨する。三好は気まずそうに頭を掻いた。そう、三好の彼氏はこのいつも三人で固まっている残り白石と、森川だ。
「藤野って、鈍感だから」
三好はそう言いつつもまた優しい顔をした。
「あいつがいるおかげで俺らは普通の高校生でいられる。だから壊したくないんだよ」
三好の弱音に言葉が出なかった。そうか、どんなに自信満々に見えても、俺たちはマイノリティだ。
「……分かった」
小さく答えると、三好はにやりと笑った。あれ? 今の三好の手のひらで転がされた?
そうしていると、藤野が席に戻ってくる。自販機で買ってきた人数分のパックジュースを机に並べる。俺がオレンジジュースを取ると「それだと思った」と藤野が無邪気に笑う。藤野だっていちご牛乳を持っている。俺も「それだと思った」ニヤニヤしていると、近くで三好のため息が聞こえた。
今日もおいしそうにいちご牛乳を飲んでいる藤野を見るとほっこりする。
三年になるとテストを受けるごとに進路を確認される。中間テスト後、配られた進路調査。部活は早々に引退して、放課後は藤野の家で勉強するようになっていた。
今日はいつにもまして藤野が浮かない顔をしていた。そういえば、藤野って受験についてあまり相談してくれない。見ていると第一希望にK大と書いていた。
「え、藤野……志望、K大なの?」
「うん、家から近いし」
その答えで何となく、藤野がそこにすごく行きたいわけではないことを察してしまった。これは何かを隠している。俺も、わざと進路調査にK大と書いて見せた。案の定、藤野は怒り出した。
「ちょっと、佐伯君……それはどうかと思うよ。ただでさえ、体育教師になるのは文系だって分かってるのに、理転しているし。そうやって、将来を他人の意見で決めるのはよくないよ」
藤野は自分のことよりも、人のことで怒るタイプだ。
「藤野が言ったんだ。叶えたいことのために勉強がある。って俺の叶えたいことは藤野のそばにいることだよ」
単刀直入に切り込んでみると、藤野は目を見開いてぐっと息をのんだ。
藤野の手が俺の頬を挟んだ。いつもより大胆な行動だ。でも藤野は真剣な目をしていた。
「あのね。一緒にいるのが目標になったらおかしくないかな。佐伯君は将来どういう形で僕と一緒にいたいの? 僕は体育教師になって、子供たちに学校の楽しさを教えてるかっこいい佐伯君が見たい」
人のことはちゃんと見えている。なのに、自分のこととなるとちゃんと見えていない。
それに、藤野の未来に俺がいることに気付いて言っているのかな。
「……その言い方はずるい」
俺だって、藤野が自分で選んで、胸を張っている姿が見たいんだよ。どうしたら、相談してくれるだろう。おまじないをかけるように藤野の手を取って手首にキスを落とした。内心やっちまった!って思ったけど。俺は真剣な顔を崩さなかった。
それから、藤野ずっと考え込んでいた。
