今年のサッカー部は二回戦で負けた。今年、藤野は応援に来なかった。去年食べたおにぎりおいしかったな。応援席は去年よりも埋まっているのに、空いている席ばかり見てしまった。
双葉祭も表面上はたぶん、うまくとりつくろえた。クラスも一位になったし。
ただ、去年のほうが夢中になれた。二日あった文化祭の間はほとんど、教室に引きこもってダラダラしていた。
思ったより、二組と六組は遠かった。
強引だったにせよ、せっかく二人で班を組めたのに、修学旅行の話を何一つできなかった。藤野は少し積極的に、三好たちと楽しそうにしている。俺のいた場所が、あいつらで埋められているようで焦りと、寂しさで胸が詰まった。
中間が終わって、待ちに待った修学旅行。
集合場所であるグラウンドには、同級生たちがぽつぽつと仲のいいもの同士で集まっていた。
「佐伯」
そう声をかけてきたのは三好だ。俺は答えずじっと見つめた。
「もうスーツケース預けた?」
うなずくと、三好はため息をついた。
「なんで、今日まで教室に会いに来なかったの?」
相変わらず単刀直入で刺してくる。俺のふがいなさを見透かされているようでうつむいた。
「藤野。俺たちと同じグループ。部屋も……一日目は〇〇〇号室」
驚いて三好を見ると、もう、背中を見せて自分のクラスのほうへ向かっていた。
バスに乗り込んで、飛行機に搭乗して修学旅行が始まった。
驚くほどあっさりと、気づけば一日目の旅程は終わり、俺はもう、ホテルにいた。いや、しおりを見返せば、メモを取っていたり、写真フォルダをのぞけば撮った写真が残っていたので、それなりにちゃんと参加していた。
それでも、なんだかいつの間にかここに立っていると思うほどに、気もそぞろだった。
今、三好に教えられた部屋番号の前で、立ち尽くしている。
ここまでは来れたのに最後の一歩が踏み出せない。どれくらいそこにいたのか。部屋の扉が開いて、三好がぎょっとした顔で俺を見た。だがすぐに、それは楽しげな色に染まった。
「よう、ヘタレ」
三好は小さな声で俺をからかうと、振り返って藤野に判断をゆだねた。
「ごめん。行ってて」
藤野は三好たちにそう言って俺との時間を優先してくれた。俺がまたにやけそうになっていると、三好が強い力で肩を叩く。すれ違う彼が小さく「間違うなよ」そう言ったのを聞いてにやけた顔を引き締めた。
「部屋入る?」
藤野がそう言って扉を抑えている。俺はうなずいて、藤野に案内されたベッドに座った。ああ、このベッドは今夜、藤野が寝るベッドだ。なんて、思っていたらポケットに入れていたパックジュースの角が太ももに刺さった。手ぶらなのはどうかと買ってきたやつだ。
「どっちがいい」
それを取り出して、藤野の前に差し出せば、藤野はうれしそうにいちご牛乳を取って「ありがとう」と言った。俺は手元に残ったオレンジジュースを握りしめた。
せっかく二人で話す機会なのに、一向に話し出せない俺に気遣って、藤野が「修学旅行の話でしょ」と話を向けてくれる。
俺が……俺が言いたいのは……。
「ずっと、藤野と話したかった」
どの口がとののしられても仕方がない。だけど、
「……そっか」 と、藤野は小さく息をついて。
「僕も話したかったよ」と言ってくれた。
その瞬間俺は自分のふがいなさとか。ダメさとか。狡さとか。そういうものに埋もれていた心に、まっすぐ手をさしだされた気がした。「かなわないな」本当に藤野って。藤野って。
降参だったベッドに倒れこんで天井を仰ぐ。
「本当にごめん」
俺はやっと謝罪を口にすることができた。
双葉祭も表面上はたぶん、うまくとりつくろえた。クラスも一位になったし。
ただ、去年のほうが夢中になれた。二日あった文化祭の間はほとんど、教室に引きこもってダラダラしていた。
思ったより、二組と六組は遠かった。
強引だったにせよ、せっかく二人で班を組めたのに、修学旅行の話を何一つできなかった。藤野は少し積極的に、三好たちと楽しそうにしている。俺のいた場所が、あいつらで埋められているようで焦りと、寂しさで胸が詰まった。
中間が終わって、待ちに待った修学旅行。
集合場所であるグラウンドには、同級生たちがぽつぽつと仲のいいもの同士で集まっていた。
「佐伯」
そう声をかけてきたのは三好だ。俺は答えずじっと見つめた。
「もうスーツケース預けた?」
うなずくと、三好はため息をついた。
「なんで、今日まで教室に会いに来なかったの?」
相変わらず単刀直入で刺してくる。俺のふがいなさを見透かされているようでうつむいた。
「藤野。俺たちと同じグループ。部屋も……一日目は〇〇〇号室」
驚いて三好を見ると、もう、背中を見せて自分のクラスのほうへ向かっていた。
バスに乗り込んで、飛行機に搭乗して修学旅行が始まった。
驚くほどあっさりと、気づけば一日目の旅程は終わり、俺はもう、ホテルにいた。いや、しおりを見返せば、メモを取っていたり、写真フォルダをのぞけば撮った写真が残っていたので、それなりにちゃんと参加していた。
それでも、なんだかいつの間にかここに立っていると思うほどに、気もそぞろだった。
今、三好に教えられた部屋番号の前で、立ち尽くしている。
ここまでは来れたのに最後の一歩が踏み出せない。どれくらいそこにいたのか。部屋の扉が開いて、三好がぎょっとした顔で俺を見た。だがすぐに、それは楽しげな色に染まった。
「よう、ヘタレ」
三好は小さな声で俺をからかうと、振り返って藤野に判断をゆだねた。
「ごめん。行ってて」
藤野は三好たちにそう言って俺との時間を優先してくれた。俺がまたにやけそうになっていると、三好が強い力で肩を叩く。すれ違う彼が小さく「間違うなよ」そう言ったのを聞いてにやけた顔を引き締めた。
「部屋入る?」
藤野がそう言って扉を抑えている。俺はうなずいて、藤野に案内されたベッドに座った。ああ、このベッドは今夜、藤野が寝るベッドだ。なんて、思っていたらポケットに入れていたパックジュースの角が太ももに刺さった。手ぶらなのはどうかと買ってきたやつだ。
「どっちがいい」
それを取り出して、藤野の前に差し出せば、藤野はうれしそうにいちご牛乳を取って「ありがとう」と言った。俺は手元に残ったオレンジジュースを握りしめた。
せっかく二人で話す機会なのに、一向に話し出せない俺に気遣って、藤野が「修学旅行の話でしょ」と話を向けてくれる。
俺が……俺が言いたいのは……。
「ずっと、藤野と話したかった」
どの口がとののしられても仕方がない。だけど、
「……そっか」 と、藤野は小さく息をついて。
「僕も話したかったよ」と言ってくれた。
その瞬間俺は自分のふがいなさとか。ダメさとか。狡さとか。そういうものに埋もれていた心に、まっすぐ手をさしだされた気がした。「かなわないな」本当に藤野って。藤野って。
降参だったベッドに倒れこんで天井を仰ぐ。
「本当にごめん」
俺はやっと謝罪を口にすることができた。
