『6歳女子! 多発外傷で、頭部打撲、瞳孔不動が見られます! 腹部損傷、四肢骨折、肩の脱臼、頭部外傷、胸部損傷の可能性あり! 出血性ショックのため、輸血を開始しました! 呼吸状態は遅く、チアノーゼも確認できます! 意識レベルは、300!』
『原因は、保護者のシートベルト確認不足です……!』
……え。
空気が、一瞬で凍った。
……まだ、あたしが生きている時の半分ぐらいしか生きていない子が、なんで命の危険にさらされるの?
誰かの口から、ギリッと歯ぎしりがこぼれる。
「……了解、こっちでは次なる輸血準備と開胸・開腹手術の準備を行う。来子と快斗は、直ちに看護師として動くように」
「「了解」」
やるせない気持ちのまま、あたしは無理矢理体を動かした。
……過ぎたことを憎んでも、二度と健康体は戻らない。
だから、感じていること全てをこらえて、最善の選択をする。
それがMJTRの、課された仕事だから。
……たぶんその子は、後方座席の真ん中に座っていたんだ。
そして、事故が起きた。
その子の前の障害物はフロントガラスしかなくて、フロントガラスに叩きつけられた。
もしかしたらガラスを突き抜けて、道路に放り出されたかもしれない。
車にひかれそうになった可能性もある。
歩きながらはおった、青い手術服。
その色は、血をずっと見るあたしたちの目を、少しでも疲れさせないようにしてくれる。
でもさ、着たくないよ。
となりの快斗と目を合わせて、うなずく。
快斗が機械出し看護師で、あたしが外回り看護師。
執刀医はたぶん隼輝で、麻酔科医は杏ちゃん。
そして杏ちゃんへの指示者が、小児科の真知かな。
麻酔の量は、子供と大人ではずいぶん違う。
しかも1年違うだけで、変わってしまうこともあるんだ。
そんな微量を、いちいち全員が覚えられてるわけがない。
だから小児科医の真知が、子供の麻酔の量を全部覚える。
そしてその知識が必要になった時は、真知が指示して杏ちゃんが行動するんだよ。
ちっちゃい子がなにもしてないのに死んじゃうのは、信じられない。
絶対に、成功させる。
「患者があと10分で来る。急ごう」
2人でまたうなずいて、走り出した。
〜解説〜
多発外傷…あちこちにケガをしている状態
頭部打撲…頭を強く打って、腫れたり内出血を起こしている状態
腹部損傷…お腹の中が傷つけられている状態
四肢骨折…うでや足が骨折している状態
頭部外傷…頭にキズがある状態
胸部損傷…胸の中が傷つけられている状態
出血性ショック…血が体の外に流れ出すぎて、ショック状態になっている
ショック状態…血圧が下がって、命をおびやかす状態
チアノーゼ…酸素が足りずに、皮膚の一部が青ざめている
快斗&隼輝
「意識レベルというのは、意識状態を数値化したもの。300だったら、痛み刺激に全く反応しないという、かなり危ない状態だ」
「その方法は、JCSって言うよ。他にも方法はあるけど、日本でけっこう使われてるのはJCSだね〜」
「はあぁ……車の中で1番危ない席、知ってるか?」
「助手席だと思ったでしょー? 違うんだよなぁ〜。答え言っちゃおっかな〜?」
「早く言え」
「焦らすぐらいよくない? 正解は、後方座席の真ん中でしたー!」
「逆に助手席には、エアバッグがついている。そっちはかなり安心だが、絶対にシートベルトしろよ」
「で、看護師とかの説明。なんか細かいけどいくよ!」
「俺に押し付けんな……機械出し看護師は、執刀医に必要な機械を、タイミングよく手渡す看護師だ」
「今から快斗がやる役割だよー」
「外回り看護師は、全体の進行をサポートする。麻酔科医の手伝い、物品管理もな」
「今、来子ちゃんがやるよー」
「で、執刀医。それから……」
「え!? オレの役割説明をスルーするのひどくない!?」
「普通にわかるだろ。メスを握るヤツのこと」
「よし」
「それから麻酔科医。麻酔の量を調節したり、健康状態によって薬を投入する」
「これくらいかな? じゃあオレ、執刀医の準備あるから先行くわ」
「俺も忙しいんだよ、別にすんな」
「わー、来子ちゃんがいないからってトゲトゲしてる〜」
「あ゛?」
『原因は、保護者のシートベルト確認不足です……!』
……え。
空気が、一瞬で凍った。
……まだ、あたしが生きている時の半分ぐらいしか生きていない子が、なんで命の危険にさらされるの?
誰かの口から、ギリッと歯ぎしりがこぼれる。
「……了解、こっちでは次なる輸血準備と開胸・開腹手術の準備を行う。来子と快斗は、直ちに看護師として動くように」
「「了解」」
やるせない気持ちのまま、あたしは無理矢理体を動かした。
……過ぎたことを憎んでも、二度と健康体は戻らない。
だから、感じていること全てをこらえて、最善の選択をする。
それがMJTRの、課された仕事だから。
……たぶんその子は、後方座席の真ん中に座っていたんだ。
そして、事故が起きた。
その子の前の障害物はフロントガラスしかなくて、フロントガラスに叩きつけられた。
もしかしたらガラスを突き抜けて、道路に放り出されたかもしれない。
車にひかれそうになった可能性もある。
歩きながらはおった、青い手術服。
その色は、血をずっと見るあたしたちの目を、少しでも疲れさせないようにしてくれる。
でもさ、着たくないよ。
となりの快斗と目を合わせて、うなずく。
快斗が機械出し看護師で、あたしが外回り看護師。
執刀医はたぶん隼輝で、麻酔科医は杏ちゃん。
そして杏ちゃんへの指示者が、小児科の真知かな。
麻酔の量は、子供と大人ではずいぶん違う。
しかも1年違うだけで、変わってしまうこともあるんだ。
そんな微量を、いちいち全員が覚えられてるわけがない。
だから小児科医の真知が、子供の麻酔の量を全部覚える。
そしてその知識が必要になった時は、真知が指示して杏ちゃんが行動するんだよ。
ちっちゃい子がなにもしてないのに死んじゃうのは、信じられない。
絶対に、成功させる。
「患者があと10分で来る。急ごう」
2人でまたうなずいて、走り出した。
〜解説〜
多発外傷…あちこちにケガをしている状態
頭部打撲…頭を強く打って、腫れたり内出血を起こしている状態
腹部損傷…お腹の中が傷つけられている状態
四肢骨折…うでや足が骨折している状態
頭部外傷…頭にキズがある状態
胸部損傷…胸の中が傷つけられている状態
出血性ショック…血が体の外に流れ出すぎて、ショック状態になっている
ショック状態…血圧が下がって、命をおびやかす状態
チアノーゼ…酸素が足りずに、皮膚の一部が青ざめている
快斗&隼輝
「意識レベルというのは、意識状態を数値化したもの。300だったら、痛み刺激に全く反応しないという、かなり危ない状態だ」
「その方法は、JCSって言うよ。他にも方法はあるけど、日本でけっこう使われてるのはJCSだね〜」
「はあぁ……車の中で1番危ない席、知ってるか?」
「助手席だと思ったでしょー? 違うんだよなぁ〜。答え言っちゃおっかな〜?」
「早く言え」
「焦らすぐらいよくない? 正解は、後方座席の真ん中でしたー!」
「逆に助手席には、エアバッグがついている。そっちはかなり安心だが、絶対にシートベルトしろよ」
「で、看護師とかの説明。なんか細かいけどいくよ!」
「俺に押し付けんな……機械出し看護師は、執刀医に必要な機械を、タイミングよく手渡す看護師だ」
「今から快斗がやる役割だよー」
「外回り看護師は、全体の進行をサポートする。麻酔科医の手伝い、物品管理もな」
「今、来子ちゃんがやるよー」
「で、執刀医。それから……」
「え!? オレの役割説明をスルーするのひどくない!?」
「普通にわかるだろ。メスを握るヤツのこと」
「よし」
「それから麻酔科医。麻酔の量を調節したり、健康状態によって薬を投入する」
「これくらいかな? じゃあオレ、執刀医の準備あるから先行くわ」
「俺も忙しいんだよ、別にすんな」
「わー、来子ちゃんがいないからってトゲトゲしてる〜」
「あ゛?」


