あの日、君は黄昏空の下で微笑んだ。



「じゃあまず、科学部の見解に賛同する者は挙手〜」

 久保田を間にして左に櫻井、右にみのりが立つ。ふたりが抜けているので挙手をするのは八人となるわけだが、科学部五人にオカルト部が三人。

 普通の多数決でいけばオカルト部が人数的に不利になりそうだが、あくまでもどちらの発表が響いたか、なのだ。

 科学部としては透明人間の仕業ではなく黒一色で闇に紛れた悪戯っ子が、夜の理科室で実験器具を掲げて悪ふざけをしていたという見解だ。

 いったい誰がそれを目撃し、噂を流したのかはさておき。科学部らしく、ただの悪戯とせずカムフラージュを利用し意図的に作り出した現象としたことが、どう評価されるかだろう。

「お、意外な結果だな」

 手を挙げたのは四人だった。しかもその内のひとりに朔夜がいる。みのりはむぅと頬を膨らませていたが、朔夜の考えとしてはこれが霊的なものかそうではないかの判断に過ぎない。もちろんオカルト探求部としては前者を推すべきだが……。

(いや、どう考えてもこっちだろ! ポルターガイストとか起こるような場所じゃないし!)

 色んな意味で現実主義者だった。

「半々か。ちなみに俺はポルターガイスト説推しなんで、今回はオカルト部の勝ち〜」
「やったー。先生わかってる!」
「先生も参加するなんて、聞いてませんけど⁉︎」

 なぜか久保田が参加したせいで、引き分けから一変して逆転となる。

「ほら、引き分けとかモヤモヤするだろ?」
「それはそうですが……、」

 ちらっと嬉しそうに飛び跳ねているみのりを見やり、櫻井はぐっと堪える。

「引き分けの時だけ俺も参加するってことで」

 と言うことで、事後にではあるが特別ルールが設けられた。よし、じゃあ次はグラウンド行くぞ〜と久保田は全員を促す。

 みのりが朔夜たちの方へ合流し、「さっくんのツンデレ〜」と腕に軽くパンチしてきた。陽の腕に掴まりながら立ち上がった優羽は、ふたりの後ろ姿を眺めながら人知れず嘆息する。こんな怪我をしていなければ、朔夜と一緒に回れたのに……。

(違うか……怪我をしなかったら、ふつーにバスケしてたかな)

 そう、怪我をしていなければいつも通り部活をしていただろう。横の先輩とくっついて歩くこともなかった。にしても、不思議だ。触れているだけで痛みが引くとか。このひとはいったいどういうひとなのだろうか。朔夜もよくわかっていないらしい。

(そんな怪しい先輩なのに、朔くんはなんであんなに楽しそうなの? 三年生って何組? 教室に行かないで図書室にいるっていうのも変だよね?)

 もしかして怪異? 幽霊? だったらなんで自分たちにも見えているのか。触れられるのか。ただの思い過ごしだろうか。とにかく、これは陽という先輩のことを知る良い機会だ。

(朔くんは神隠しの時にこのひとと一緒だった。信頼するのは当然かも)

 所謂、吊り橋効果というやつだ。

 優羽たちは一番後ろを歩いており、陽はずっとなにか言いたげだった。

「日上センパイ。もしかして(まじな)いの犯人、わかったりするんです?」

 賑やかな廊下。科学部とオカルト探求部。一見すると異質な組み合わせだが、いつの間にか朔夜もみのりも他の部員たちと楽しげに会話をしている。そんな中、優羽は陽に対して疑問をひとつ提示する。

「……そうだな。望めば呪詛を返すことも可能だが、どうしたい?」
「いやいや。そんな中学生いないでしょ? なに? センパイって陰陽師とかそういうやつ? それとも、ただの中二病?」

 自分たちの認識としては中三だけど。

「チュウニビョウ? とはなんだ?」
「……センパイ、ホントは何歳?」

 会話をしてみたものの、謎が増えただけだった。