あの日、君は黄昏空の下で微笑んだ。



 十五分後。

「さて、話はまとまったか? じゃあ科学部から発表してくれ」

 はい、と部長の櫻井誠が代表して黒板の前に立った。科学部唯一の三年生である櫻井は、眼鏡の真ん中をくいと上げてオカルト探求部の方に、というよりはみのりに視線を向けた。

「まず、透明人間について。物体が見えなくなる概念として、光を透過させる物体は屈折率が周囲とほぼ同じであれば見えなくなるという説があり、実際、授業で水の中に入れたガラスが見えにくくなるという実験をしたことがあるだろう?」

 反射、屈折、吸収。そのどれも起こらなければ見えなくなる、という原理を透明化の根拠としているとある著者の物語があったりもする。しかし実際は条件付きであり、そもそも暗い部屋で人間だけが透明になったというのはおかしな話である。

「我々科学部の見解としては、透明人間説よりもカムフラージュ説を推したいと思う」

 カムフラージュ。つまり迷彩。虫が葉っぱに擬態したり、周りの景色や色と同化しているように見える現象だ。フラスコや実験器具が浮いているように見えたのは、暗闇に同化するような黒い服と手袋、マスクなどを着用した状態の誰かの仕業であると櫻井は続ける。

「つまりこの理科室の七不思議はただの悪戯であり、いくらでも捏造可能な噂と言えるだろう。ちなみに透明マントという道具を耳にすることがあると思うが、あれはファンタジーであり、現在の技術では再現不可能とされている。科学的に透明化を証明できるが、そもそもこの条件下では難しいだろう。よって、これはただの悪ふざけと結論づけた」

 パチパチと科学部オカルト探求部関係なく、発表が終わったことに対しての拍手をする。久保田は「櫻井、戻っていいぞ〜」と気の抜けた声で言い、「次、オカルト探求部」とみのりたちの方に向かって代表者が前に出るように促した。

「はい、私が行きます!」

 元気よく右手を挙げて、みのりが立ち上がった。当然だが、オカルトに関してはにわか知識しかない朔夜たちには荷が重い。ホンモノに関してならいくらでも語れるが、ただの妄想と言われるのがオチだ。ちなみに(ハル)はオカルトの知識はないが、この町に昔からある噂や怪異、それの対処法などは説明できるが、ここでは役に立たないだろう。

「では、今度はオカルトの観点からこの噂を証明してみせましょう」

 言って、意気揚々と黒板の前に立つ。肩くらいまでの長さのナチュラルボブで、可愛らしい顔をしているみのりは、普通にしていれば絶対にモテる明るく元気な女子だ。声もハキハキしていてよく通り、これからオカルトについて語れるからか表情も生き生きとしていた。

 朔夜はみのりがなにを話すのか少しだけ気にはなっていた。先ほどの科学部の発表に思わず納得していた自分がいて、みんなが頷くような話をみのりはできるのだろうか、と。

 しかしそんな朔夜の考えは、杞憂に終わる。