相澤直のお節介は今に始まった事ではないが、正直な話、いつもそれに助けられていたりする。いったいどこまで気付いているのやら……。
「怪我したって、大丈夫なのか?」
心配そうに朔夜が見上げてくる。荷物を押し付けられただけでなく優羽自身も押し付けられ、迷惑をかけてしまっている感しかない。しかしながら右足首の痛みはだんだんと増していて、ただの捻挫とは思えなくなってきた。
「さっくん、私がその荷物持ってあげるから優羽くんに肩貸してあげて?」
「俺の肩で良かったらいくらでも貸すけど……あと数歩で着いちゃうが?」
「あと数歩でも貸してくれたら嬉しいな、」
「······まあ、別にいいんだけど。ほら、」
「ありがと、朔くん。めちゃくちゃ助かる」
三枝姉弟は朔夜を真ん中にしてアイコンタクトをしていたが、朔夜が気付くことはない。数歩だけだが左肩を借りて、優羽は自宅に辿り着く。ほんの一分ほどのことだったが、なんだか癒やされたのは事実。そしてその時だけは足の痛みが不思議と消えていたのだが、これは多分気のせいだろう。
「ちゃんと病院行けよ? 合宿もあるって聞いたし。少しでも早く治さないとな、」
「うん。なんかかっこわるいな、俺。最近特にツイてなくて。あ、でも今日は朔くんに会えたからラッキーだったかも」
「いやいや、全然ラッキーなんかじゃないだろ? あ、もし数日休むなら、オカルト探求部に顔出せばいいんじゃないか? 明日からは科学部と合同で学校の七不思議を調べるんだ。優羽の友だちに科学部の子いたよな? 気晴らしになるかも?」
「……考えとく」
そういえば、あの学校に七不思議なんてあっただろうか? という疑問がふと浮かんだが、楽しそうなのでまあいいかと優羽は軽い気持ちで参加をほぼ決める。
病院で診察をしてもらった結果、ただの捻挫だが一週間くらいは安静にするようにと言われた。その時は治療を受けたおかげか痛みが和らいでいたが、寝る頃には痛みが戻って来ていた。
朝。ほとんど眠れていないせいか酷い顔をしていたのだろう。遅れて起きてきたみのりに心配された。右足首が熱い。リビングでソファに座り、湿布を取り替えようとテーピングをほどいて状態を確認してみる。
「……なんだこれ、痣?」
青痣ならわかるが、優羽が目にしたのは黒い痣だった。しかも模様のようにも見えるそれに、目を細める。そこにみのりがやって来て、隠すヒマもなくガン見された。
「優羽くん、これ……もしかして、」
「なに? なんかやばいヤツ?」
その場にしゃがみ、いつになく真面目な顔で見上げてくるみのりに、嫌な予感を覚える。
「怪我した時、どういう状況だったの?」
みのりのその問いに、優羽はあの時のことを話すことにした。他人に話しても信じてくれないだろうあの奇妙な出来事も、みのりなら信じてくれるだろう。なんならこちらが言わずとも、これは絶対になにかある! と息巻くのが目に見えている。
「さっくんがね、気になることがあるって、あの後私に連絡くれたんだよ」
「朔くんが? なんで?」
みのりが言うには、優羽が病院に行っている頃に朔夜から連絡が来て、
『なんかわかんないけど、優羽のあの怪我、本当にただの怪我か? あいつに肩に触れられた時、俺、実は微妙に気持ち悪くなってさ。あの時はなんでもないフリしてみせたけど、ちょっと気になって。もし変わったことがあったら連絡して?』
と言っていたそうだ。単純に自分に触られて嫌だったってわけではなさそうだが、今のこの痣を見てしまえば頷ける。つまりは普通の怪我ではなく、怪異かなにかの仕業ってこと?
「こういうのに詳しいひとがいるから、一緒にみてもらおう」
優羽はなんとなくそれが誰なのかを察するが、あえて口にしなかった。


