登場人物
・久我 叶多《くが かなた》 誕生日4/10
・鷹宮 朔 《たかみや さく》 誕生日 9/4
・瀬尾 悠真《せお ゆうま》 久我と中学からの友達
・今村 隼人《いまむら はやと》 鷹宮と同じサッカー部
・吉田 洸希 《よしだ こうき》 鷹宮と同じサッカー部
____________
『はっ…??』
登校して、靴を履き替えるために靴箱を開けた。
そこには、俺の上靴…
と、その上に乗る小さな箱。
赤の包装紙に光沢のあるベージュのリボン。
今日は2月14日
まって、これバレンタイン?
いやいや、まさか
…あぁ、俺靴箱間違えたかな?
そう思って、靴箱の名前を見た。
久我 叶多《くが かなた》
間違いない、俺の靴箱だ。
誰が入れたのか、周りを見渡す。
見渡す限り、男、男、男…
そりゃそうだ。
ここは男子校だぞ…!!!
いや、まて。これはもしかしたら、仲良い奴からのドッキリかもしれない、どっか陰から見てるんじゃないのか?
「おーい、叶多ー、なにしてんだー」
一緒に登校した 瀬尾 悠真《せお ゆうま》
中学からの同級生。
正直、俺の友達の中で1番こういう悪ふざけをしそうなタイプだ。
『お前、なんかしたか?』
「なんかって?」
『今日は何の日でしょう』
「え、今日??しらねー、お前の誕生日?」
『いや、俺の誕生日4月10日な。そろそろ覚えてくれよ』
「頑張る、頑張る。で?何の日?」
『2月14日だぞ』
「あぁ、悪しき文化のバレンタインか?忘れてたわ」
『無縁だもんな』
「いやお前もだろ」
『それがそうでもないかもしれない』
悠真は、怪訝そうな顔をして俺の靴箱を覗きこんだ。
「え、えっ、おまっ、は?まてまて、え?」
『これやっぱり、バレンタインのやつ?』
「ま、まあ今の時代その、同性愛とか凄くいいと思うんだけども、誰からだよそれ」
そういうのってメッセージカードとか付いてんじゃないのか?
といわれ、箱を手に取るが、とくにそういったものはなさそうだ。
『俺まだお前を疑ってんだけど、違うよな?』
「俺がお前のこと好きってこと?」
『ちげえよ、ドッキリ的な?悪ふざけ的な?』
「いや俺、さっきまで今日がバレンタインであることすら忘れてたんだぞ。」
確かにそうか。
「中身なんだろうな」
『開けてみるか』
「うん、とりあえず場所移動しようぜ」
そう言われ、俺たちは教室へ向かった。
俺らは家が遠く、いつも早めに学校に着いている。
家が近いやつほど遅刻ギリギリなのって何なんだろうな。
やはり今日も、教室には誰もいなかった。
「よし、じゃあ叶多。開けてみよ」
『う、うん。ねぇ、なんかめっちゃ緊張すんだけど』
「わかる、俺もなんか緊張してる」
『それは何でだよ』
リボンを解いて、包装紙を開ける。
その下には小さい箱が。
ゆっくり蓋を開けると、中身は焼き菓子が入っていた。
「あ、え?チョコかと思った」
『何だこれ、マドレーヌ…?』
「2個あんじゃん。一個くれよ」
『まあいいけど』
「ラッキー!」
封を開けると、バターのとてもいい香りがした。
『うんま』
「え、ガチでうまいなこれ」
『てかまじで、誰からだこれ』
「本当に叶多に渡そうとしてたのかな?」
『だとしたら、食ってんの申し訳なさすぎるだろ』
包装紙とか箱とかなんか書かれてないかな〜と思いながら、色々触ってると、ピラッと一枚の紙が包装紙の間から床へ落ちた。
【久我君へ】
それだけが書かれた紙。
えらく字が綺麗だ。
『俺宛だったっぽい、』
「じゃあよかったな、食って大丈夫じゃん」
『いやそこかよ』
ガラガラガラ
誰かが登校してきたらしい。2人の視線が後ろのドアに集まる。
登校してきたのは、鷹宮 朔《たかみや さく》。
高身長、イケメン、スポーツ万能、それに加えて頭がいい。
が、クールで少し話しかけにくい。
今年初めて同じクラスになったが、ほとんど話したことがない。
鷹宮君、学校来るのこんな早くなかったと思うんだけど…
「おぉ!朔!おはよ〜、おまえ今日来るの早くね?」
「はよ、おまえに言われたくねえよ」
ははっと笑いながら席に着く。
『おい、おまえ鷹宮君と仲良いの…?』
できるだけ小声で瀬尾に聞く
「何でそんな小声なんだよ」
『いや、なんか、どうしても話しかけにくいっていうか、何というか?』
「そうか〜?あいつめっちゃいいやつだぞ、話しやすいし」
『無理だなあ』
「わかるよ、あっちはサッカー部で一軍。俺らは帰宅部の三軍。恐れ多いよな」
『そうなんだよ…』
「でも、朔はこんな奴らにも優しいやつだぞ、話しかけてみたら?」
『無理無理無理無理無理』
「なんだよそれ。」
『無理なもんは無理だよ…』
「いやでももう、2月だよ?もうすぐ2年生も終わるし、そろそろ話しかけてみたら?今結構チャンス。」
『なんて話しかけたらいいの』
「まずは挨拶からだな。おはよ〜って。はい、行け。早く行けよ!!」
『んだよ、びっくりしたあ…でっけえ声出すな!』
まあでも確かにまずは挨拶からだよね
『た、鷹宮君おはよう…』
「…おはよ。え?どうした…?」
何話しかけてきてんだよ、って言わんばかりの目。
『いや!ごめんなんでもない!!!』
逃げるように自分の席へ。
「お前、なんか挙動不審だったぞ」
『緊張したあ…』
「挨拶だけだろうが」
『まあでも、1歩前進だろ』
「確かにそうだけどさ、同級生に挨拶するだけであんななる?」
『やっぱり、イケメンって顔怖いよな』
「それは、分かる。」
気づいたら少し人が増えていた。あと10分で朝のHRが始まるというところで、鷹宮君と同じサッカー部の部員たちが登校してきた。
「あれ!?朔今日めっちゃ早くない?」
「え、ほんとだ。いねえと思った」
「今日なんか早起きしちゃったんだよね」
ふ〜ん、そういう事もあるか〜。と口々につぶやくとそれぞれの席に座った。
そうだよね?やっぱり鷹宮君、登校時間こんなに早くなかったよね。
…あのマドレーヌは、鷹宮君…?
いやいやまさか。たまたま早く来たんだろ。
俺だって、たまに早起きしちゃう時あるもん。うん。
ほとんど話したこと無かったんだから。
俺にマドレーヌを渡す理由ないし。
心当たりが無さすぎるマドレーヌ。
俺の靴箱に入れましたか?って皆に聞いて回る?
いやアホか。キモすぎるだろ。
ヒントは、【久我君へ】と書かれたこの紙だけ。
めちゃくちゃ字が綺麗だから、割と大ヒントな気がするんだよな〜…
キーンコーンカーンコーン
朝のHRの開始を知らせるチャイムがなった。
「はい、日直挨拶〜」
「きりーつ、礼!」
「おはようございます。早速ですが、皆さん、今月末は定期考査がありますよね」
急にざわざわしだす教室。
みんな忘れようとしてたみたいだな。
俺は勉強なんてしないし、テストがあろうとなかろうと生活は変わらない。
みんな偉いな〜
「今回の定期考査で、赤点をとった人は補講がありますので。皆さんしっかり勉強するように」
…それは聞いてない!!!!
やっべ〜…流石に勉強するか…
「おい、叶多、お前やばいんじゃないか」
『え、ばれた?マジでやばい…』
「まあ、俺は??なにも?問題ないけど?」
『悠真は、前回何個欠点とったんだよ』
「ぜろ〜」
『くっそ…』
「まああと1週間頑張ればどうにかなるって」
『はあ…どうしよ』
「あ、朔に教えて貰ったら?あいつマジで頭いいぞ。」
『無茶言うなよ…』
「おーーい!朔ーー!」
『おっ、おい!』
こいつ、自分のこと三軍とか言ってるけど、自己分析バグってるだろ。
俺から見たら十分カースト上位だっての。
自分の席でスマホを見ていた鷹宮君がゆっくりと立ち上がり近付いてくる
「なに?悠真」
おい、こいつらまじか。名前で呼びあってるじゃん。
めちゃくちゃ仲良いじゃん。
「こいつにさ、勉強教えてやってくんね?」
『いや、ちょ』
「…別にいいけど」
いいんだ…
「おいおい、まてまて、悠真君よ〜」
そういいながら近づいてきたのは、サッカー部の2人組。
確か…背が高くて茶髪っぽいのが、吉田君。背は少し低いけどサラサラ黒髪が今村君。
2人ともイケメンだよ、もちろん。
イケメンで明るい性格。何も敵わない…
「俺らも朔に教えて貰えないと補講確定なんだよ」
「そうだよ、吉田は!ほんとに頭悪いんだから」
「いやまて、こんなこと言ってる今村も補講組最有力だから」
「じゃあ、皆でする?」
「おぉ、朔、ナイスアイデア」
俺は、この陽キャ達に混じって、テスト勉強するらしいです。
絶対に集中できない気がする。
緊張が勝ってしまう気がする。
「じゃあ、とりあえず明日の放課後からで。叶多のこと頼みました。」
「頼まれました。」
「え、じゃあさ、悠真は俺らに教えてくんね?」
「おぉまかせろ、今村と吉田。責任は取れないけどね」
『あ、でも…皆部活…は』
「テスト前1週間は部活休みになるんだよね」
そっか、そうだよね。
ただ、ちょっと待ってくれ
この流れ、俺と鷹宮君マンツーマンじゃん
まずい。
一言も話せる気がしません。
とりあえず、明日か…
緊張して寝れない予感。
________
キーンコーンカーンコーン
ついに来てしまったこの時が。
『ねえ、悠真。今日ほんとにやるのかな…』
「やるに決まってるだろ」
ですよね。
そりゃそうですよね。知ってました。
とりあえず皆で机を動かして、向かいあわせになるようにした。
教えやすいように、悠真は、吉田君と今村君の間。
俺と鷹宮君が隣の席になった。
近い…隣の席ってこんな近く感じるもんだっけ…
「何かわからないことある?」
『正直に言うと、全部、分かりません…』
「嘘でしょ」
『そんな笑わなくてもいいじゃん』
「ごめんごめん」
めちゃくちゃ笑ってくれる。
尚更、昨日の朝は何故あんなに冷たい目だったのか理由が気になってしまう。
「じゃあ、とりあえずここからね」
と、細かく1から教えてくれる。
凄く分かりやすくて、集中して聞くことができた。
『うわあ…なるほどね!めちゃくちゃ分かりやすい…』
「ほんと?ありがとう」
『でもこのやり方、明日になったら忘れてそう』
「え〜…じゃあ、これのやり方簡単にメモにまとめようか」
『ほんとに!?めちゃくちゃ助かる』
鷹宮君は、ノートの1ページをわざわざ破って書いてくれた。
ん…?
『鷹宮君、めちゃくちゃ字綺麗なんだね』
「あっ、うん、」
『違ってたらごめんね、昨日さ』「え、てか!」
吉田君に遮られた。
「君付けって、なんか距離感ない?久我君って呼ぶのもなんだし、叶多って呼んでもいい?」
『あ、それは全然。』
「じゃあ俺も叶多って呼ぼ〜。俺らの事も、隼人、洸希って呼んでよ。」
「え、俺は?」
「あ、あと朔。」
『分かった。努力します。』
「じゃあ俺も下の名前で呼んでいいってこと?!」
「仕方がない、悠真もいいぞ」
「仕方がないってなんだよ」
目の前に紙が差し出された。
「はい、これメモ。家での復習に使って」
『あ、ありがとう、朔…』
「…どういたしまして」
間があった気がする。
確かに名前呼びって中々なれない。違和感あるな。
もらったメモを見る。
やっぱり字が綺麗だ。
昨日の字に似てる気もする。
勇気を出して聞こうとしたのに、タイミングを逃してしまった。
いや〜、でももしこれでほんとに朔が送り主だったとしても、理由は?
ほとんど関わり無かったし。
うーーーん…
「叶多〜、叶多!!」
『うわっ!びっくりした〜』
「集中して、まだ全然範囲終わってないよ」
『はい、すみません』
結構スパルタらしい
これを1週間続けたら、まじで頭良くなる気がする。
マドレーヌのこと気にしてる暇はなさそう
とりあえず1週間は、勉強に集中することにする。
まじで、補習嫌だからね!!
仲良くなれそうだし、バレンタインのこと聞く機会はいっぱいあるでしょ。
__________
『やばい、緊張してきた』
今日はついにテスト当日。
起きてから緊張が止まらない。
「叶多大丈夫か?」
『あ、朔おはよう。』
1週間もあれば名前呼びにも慣れてきた。
「もしかして、テスト緊張してる?」
『だって、ここまでしっかり勉強してテスト挑むの初めてなんだよ』
「大丈夫だって、めっちゃ頑張ってたじゃん」
『これで欠点とったら、朔にも申し訳ないし…』
1週間すごく丁寧に教えてくれた。
自分の勉強する時間は取れたんだろうか。
『朔は勉強できた?俺ばっかりに教えてくれて。ごめん、時間取れなかったよね』
「大丈夫だよ、人に教えると自分にも身につくから、むしろありがたかった」
こいつは、人間として出来すぎてる
この顔で性格までいいんだもんなぁ…
「?なに?なんかついてる?」
『あっ!い、いやなんもついてない、ごめん』
「うん?」
だめだ、顔を見つめすぎてたらしい。
テストに集中!!!!
とりあえず、テストが始まる直前まで、朔が作ってくれたメモだけでも見返そう。
_______
「はい、そしたらはじめてくださ〜い」
俺の気合いとは裏腹に、力のこもってない先生の合図でテストが始まった。
テスト用紙をめくると、ずらっと問題が並んでいる。
いつもなら、読まずに飛ばす問題文も1文字も逃すまいとしっかり読む。
…分かる
これも分かる…
めちゃくちゃ分かる…
あ、これ朔が教えてくれたやり方で解ける
朔が出ると思うって予想してたところだ
朔、この問題苦手って言ってたけど大丈夫かな、
うわ〜、朔これ得意って言ってた…いやまて。
朔、朔、朔、朔
俺ずっっと朔のこと考えてないか?
う〜ん、まあでも1週間まじでスパルタ朔先生にみっちり教えられたからな。
そうなっても仕方ない。
朔にいい結果報告できるように、頑張らないと。
_________
キーンコーンカーンコーン
5日に及ぶ定期考査が終了した
正直、めちゃくちゃ手応えある。
こんなにしっかり問題読んで考えて、理解して解いて…
勉強って、楽しいのかもって思えた
『あ、朔!』
「叶多、どうだった…?」
『めっっっちゃ手応えあるんだよね』
「まじで?良かったあ」
そういって心から安心した顔をした朔。
そんなに俺のことを心配してくれてたのかと思うと、なんだかむず痒いような気持ちになった。
『朔のおかげだよ、本当にありがとう。テスト中もさ〜、なんか隙があればずっと朔のこと考えてたんだよね』
「…え?」
『あ、え、?いや、まって、変な意味じゃないからね!ここ、朔が教えてくれたな〜とかそういうやつ!』
「なんだ、そういう事か」
『うん、ごめん変な言い方して』
「別に全然気にしてない」
…なんだ?
なんだって言った?
俺が朔のこと考えてたことが嬉しかったってこと?
いや、嬉しくなくとも嫌ではなかったってこと…?
「お〜い、朔!叶多!」
この声は、洸希だ。
「お前らどうだった?」
隣には隼人もいる。
2人の顔からは、ありえないくらいの達成感が伝わってくる。
うん、手応えあるんだね、良かったな。
『正直めちゃくちゃ手応えあるんだよね』
「え、俺らも!」
「お、じゃあさ、みんな欠点なしだったら、飯行こうぜ」
「おい、悠真たまにはいいこと言うじゃねえか」
「たまにはってなんだよ」
「叶多はどこか行きたいところあるの?」
『う〜ん、どうだろ。朔は?』
「俺めっちゃ焼肉食いたい」
『うわ!あり!』
「じゃあ焼肉にすっか」
「ありあり〜」
「とりま今日は帰って寝ようぜ」
「そうだな、来週のテスト返し楽しみ〜」
確かに楽しみだ。
朔に、いい報告ができる気がする。
神様お願いします!欠点がありませんように!!
________
「はい、じゃあテスト返しはじめるよ〜」
まずは数学。自慢ではないけど、俺は数学で欠点を取らなかったことがない。
「はい、久我〜」
恐る恐る先生の元へ向かう。
「どうした、お前が欠点じゃないの初めて見たぞ」
えっ…!!!!
奇跡の数学欠点回避!!!!
正直数学を乗り越えれば100パーセント欠点無いんじゃないか、と思うほど俺は数学が苦手だ。
朔の方にテスト用紙を見せる。
嬉しそうに笑ってくれた。
なにかお礼しないとな〜、何がいいかな〜
正直俺にできることならなんでもしてしてあげたいくらい。
お礼何がいいか、本人に聞こっと。
___________
今日で全てのテストが返却される
次が最後の一教科だ。
俺はここまで欠点を取っていない。
正直この時点で、この上ないくらいの快挙なんだけどね。
しかも最後の教科は副教科だ。
さすがに欠点ではない!と信じたい!
「はい、久我君〜」
そう言って渡された答案用紙。
この点数で全てが決まる
恐る恐る裏返す。
点数は
63点
この学校は40点からが欠点だ。
俺は、欠点を取らなかった。
全ては朔のお陰。
ありがてえ〜〜!!!!
『お〜い、朔〜』
「あっ、どうだった…?」
『じゃーん、63点!』
「てことは、」
『そうです!欠点なし!!!』
「凄いじゃん」
そういって、俺の頭を撫でた。
『えっ…』
「あ、ごめん!!」
そういうと、飛び跳ねるように俺から離れた。
そこまでしなくても…
『いや、全然大丈夫。ちょっと驚いただけ』
なんなら、ちょっと心地よかったし。
人間って、頭とか髪の毛触られるの、なんたら神経のお陰で落ち着くって聞いたことある。
「うん、ごめん」
めちゃくちゃ気まずい空気が流れる。
「おーい、叶多!!お前どうだったんだよ!」
『あら、悠真君じゃないですか』
「え、まさか」
『ご察しの通り、欠点なしでございます』
「すげぇ!!あのな、俺も隼人も洸希も欠点なし!」
「俺ももちろんないです」
『となると…?』
「焼肉!!!!!」
みんなで焼肉…!
めちゃくちゃ楽しそう。
あ、そうだ
『ねぇ、朔。』
「なに?」
『俺、朔のおかげで補講無しで済んだから何かお返ししたいんだけど』
「おかえし…」
『そう、お礼にね。焼肉奢らせてよ』
「いいよ、いいよ、俺も楽しかったし気にしないで」
『いや、何かしないと俺の気が済まない』
「ん〜、でも奢って貰うのはちょっと申し訳ないから」
『じゃあ何がいい?なんでもいいよ?』
「なんでもいいの?」
『俺にできることだったら!』
じゃあ…
とやけに次の言葉をためる朔。
「俺とデートして?」
『でっ!?』
デート!?デートってあの男女がふたりでイチャコラしながら過ごす、あのデート??
「うん、デート」
そうやってにっこり微笑む朔。
どういう状況だこれ。
「とりあえず、日程は連絡するね。俺の部活が休みの日になると思う」
『わ、分かった。』
何が 分かった だよ。
何も分かってないだろ。
どういうつもりで言ったんだ。
でも、もしあのマドレーヌが朔からだとしたら、辻褄は合う
ん〜〜。とりあえず、デー…ふたりで遊びに行く日に聞いてみようかな
_________
ピロン
《テスト勉強グル》
あの5人のグループだ。
内容は焼肉の日程決め。
どうやらサッカー部は、毎週金曜日がオフらしい。
焼肉は3月7日金曜日の放課後に行くことになった。
ピロン
《鷹宮 朔》
朔からもメッセージが来た。
グループと同じく内容は日程決めだが、
問題は2人で遊ぶということ。
〈焼肉の次の週、14日の金曜日とかどう?〉
《いいね!空いてるよ》
〈じゃあ、その日の放課後ね。俺見たい映画あるんだけど〉
《あり。映画にしよ。》
〈決まり、楽しみにしてる〉
《うん、俺も楽しみ》
なんか、付き合いたてのカップルみたいでちょっと照れる。
…俺は何を考えてるんだ。
何がカップルだ。
恥ずかしすぎるだろ!!!!
俺は枕に顔を埋めて、恥ずかしさを紛らわせるように叫んだ。
_________
「よっしゃー!!!焼肉ぅ!!!」
『隼人、うるさいぞ』
「ごめーん」
俺は、隼人を注意したが、内心楽しみでたまらなかった。
肉が食える〜!肉だ〜!
「あ、てか席どうする?」
「おれ悠真の隣〜」
隼人が一番奥に座り、その横に悠真。
じゃあ俺も先生に肉焼きまくるわ〜といって、洸希はその隣に座った。
てことは…
「じゃ、また隣よろしくね」
『あ、うん…』
ですよね。
「よおし、食うぞ!」
「先生、どうぞ!食ってください!」
「苦しゅうない」
なんかこの3人芸人みたいだな。
『あ、朔も食って食って』
「ありがとう」
俺も食おう。
うんまあ〜〜〜。
タレとご飯ってなんでこんな合うんだろ。
先人達天才すぎるだろ。
「あ、」
『ん?』
「ついてるよ」
そういって、朔は俺の口元を拭った
「みて、ご飯粒」
『うわ、まじか。ごめんありがとう』
と言って、前を向き直すとあまりにもにやけている3人が
「アツアツだなあ」
「ラブラブですなあ」
「イチャイチャするなよお」
『やめろ』
といって、隣の朔を見るとなぜか満更でもなさそうな表情だった。
『なんで満更でも無さそうなんだよ』
「あれ、ほんと?」
自覚なしでした。
「そんな顔してた?」
『なんかね、デレっとしてたよ』
「…」
朔は頭を抱えてしまった
『頭抱えてないで食え』
「食います」
___
「食いすぎた…」
と、悠真がうなだれる。
そりゃそうだ。
隼人、洸希がありえないペースでお前の皿に肉盛ってたもんな
よく食いきれたわ。
「大満足」
『そうだね、まじでお腹いっぱい』
「叶多は、駅だよね?」
『そだね、俺と悠真は駅』
「ちょっと暗くなってきたけど、帰れる?」
『帰れるよ、何歳だと思ってるの』
過保護の親かよ
なんなら俺の親でも言わない。
「おーーい!叶多!帰るぞ〜」
『はいはい〜』
こっからちょっと遠いの憂鬱。
今すぐにでも寝てしまいたい。
「じゃあまたあした!」
「明日学校休みだろ」
「そうだった!バイバイ」
「お疲れ様〜」
「ばーいばーい!」
『お疲れ〜』
寝み〜と思いながら駅までの道を歩く
「美味かったな」
『それな、久々食ったわ』
分かる〜とか、あまりにも中身のない会話をしながらダラダラ進んでいた
「てかさ、マジで予想だよ?」
『うん?』
「あのマドレーヌさ、あいつじゃね?朔」
『…やっぱり?』
「お前も感じてた?」
『いや、うん、まあ』
悠真は意外と鋭い
「だって、なんも意識してない相手に急にデートとか言うか?」
『いや、言わないと思います。てか聞こえてたんだ』
「当たり前だろ、俺目の前にいたぞ」
確かに
今気づいた。急に飛び出したデートという言葉に気を取られすぎてた。
そういえば、あの時目の前にこいついたわ。
「で、デートはいつなの?」
『来週の今頃には行われています』
「その時に聞けよ」
『俺もそのつもり』
「お前聞けんの?」
『怪しいっすね』
挨拶もろくにできないような俺が聞けるのか
自分でも気になるところ
「でも、もし、本当に朔だったとしてどうする?」
『え〜…いや、お返ししないとでしょ。丁度ホワイトデーだし』
「確かにそうなんだけど」
『うん』
「本命…なんじゃねえの?」
ほん、めい…
"本命"
いやいやいや、まさか!!
今の時代、友チョコとか?あるし?
義理チョコとか?なんかいろいろ?あるし?
本命って、本命って!!ないないない。
「怖いって。1人で暴れるな」
『お前が怖いこと言うからだろ』
「いやいや、あくまでも予想ね?」
そうだよね、そうだよ。
まだ本命だと決まったわけじゃない。
「まあ、とりあえず来週 デート のあと聞かせろよ。どうだったか」
やけに、デートの3文字を誇張してくる。
『はいはい。デート のあとしっかり報告しますう〜』
その後、電車に乗り家に帰りつくまでは一切朔の話は出ず、いつもの俺らみたいなしょうもない話で盛り上がった。
「じゃ、また月曜な〜」
『おー。おやすみ〜』
そう言って解散した。
やはり、1人になるとあまり良くないみたいだ。
今日の恥ずかしかったことが脳裏に蘇ってくる。
クラスのイケメンに顔に着いたご飯粒を拭ってもらう。
いや、少女漫画かよ。
しかも結構、古めの展開じゃねえかよ。
本当は叫び出したいくらい恥ずかしかったが、さすがに住宅街で叫ぶ訳にもいかなかったため、とりあえず全力疾走で家に帰ってみた。
だいぶスッキリしました。
・久我 叶多《くが かなた》 誕生日4/10
・鷹宮 朔 《たかみや さく》 誕生日 9/4
・瀬尾 悠真《せお ゆうま》 久我と中学からの友達
・今村 隼人《いまむら はやと》 鷹宮と同じサッカー部
・吉田 洸希 《よしだ こうき》 鷹宮と同じサッカー部
____________
『はっ…??』
登校して、靴を履き替えるために靴箱を開けた。
そこには、俺の上靴…
と、その上に乗る小さな箱。
赤の包装紙に光沢のあるベージュのリボン。
今日は2月14日
まって、これバレンタイン?
いやいや、まさか
…あぁ、俺靴箱間違えたかな?
そう思って、靴箱の名前を見た。
久我 叶多《くが かなた》
間違いない、俺の靴箱だ。
誰が入れたのか、周りを見渡す。
見渡す限り、男、男、男…
そりゃそうだ。
ここは男子校だぞ…!!!
いや、まて。これはもしかしたら、仲良い奴からのドッキリかもしれない、どっか陰から見てるんじゃないのか?
「おーい、叶多ー、なにしてんだー」
一緒に登校した 瀬尾 悠真《せお ゆうま》
中学からの同級生。
正直、俺の友達の中で1番こういう悪ふざけをしそうなタイプだ。
『お前、なんかしたか?』
「なんかって?」
『今日は何の日でしょう』
「え、今日??しらねー、お前の誕生日?」
『いや、俺の誕生日4月10日な。そろそろ覚えてくれよ』
「頑張る、頑張る。で?何の日?」
『2月14日だぞ』
「あぁ、悪しき文化のバレンタインか?忘れてたわ」
『無縁だもんな』
「いやお前もだろ」
『それがそうでもないかもしれない』
悠真は、怪訝そうな顔をして俺の靴箱を覗きこんだ。
「え、えっ、おまっ、は?まてまて、え?」
『これやっぱり、バレンタインのやつ?』
「ま、まあ今の時代その、同性愛とか凄くいいと思うんだけども、誰からだよそれ」
そういうのってメッセージカードとか付いてんじゃないのか?
といわれ、箱を手に取るが、とくにそういったものはなさそうだ。
『俺まだお前を疑ってんだけど、違うよな?』
「俺がお前のこと好きってこと?」
『ちげえよ、ドッキリ的な?悪ふざけ的な?』
「いや俺、さっきまで今日がバレンタインであることすら忘れてたんだぞ。」
確かにそうか。
「中身なんだろうな」
『開けてみるか』
「うん、とりあえず場所移動しようぜ」
そう言われ、俺たちは教室へ向かった。
俺らは家が遠く、いつも早めに学校に着いている。
家が近いやつほど遅刻ギリギリなのって何なんだろうな。
やはり今日も、教室には誰もいなかった。
「よし、じゃあ叶多。開けてみよ」
『う、うん。ねぇ、なんかめっちゃ緊張すんだけど』
「わかる、俺もなんか緊張してる」
『それは何でだよ』
リボンを解いて、包装紙を開ける。
その下には小さい箱が。
ゆっくり蓋を開けると、中身は焼き菓子が入っていた。
「あ、え?チョコかと思った」
『何だこれ、マドレーヌ…?』
「2個あんじゃん。一個くれよ」
『まあいいけど』
「ラッキー!」
封を開けると、バターのとてもいい香りがした。
『うんま』
「え、ガチでうまいなこれ」
『てかまじで、誰からだこれ』
「本当に叶多に渡そうとしてたのかな?」
『だとしたら、食ってんの申し訳なさすぎるだろ』
包装紙とか箱とかなんか書かれてないかな〜と思いながら、色々触ってると、ピラッと一枚の紙が包装紙の間から床へ落ちた。
【久我君へ】
それだけが書かれた紙。
えらく字が綺麗だ。
『俺宛だったっぽい、』
「じゃあよかったな、食って大丈夫じゃん」
『いやそこかよ』
ガラガラガラ
誰かが登校してきたらしい。2人の視線が後ろのドアに集まる。
登校してきたのは、鷹宮 朔《たかみや さく》。
高身長、イケメン、スポーツ万能、それに加えて頭がいい。
が、クールで少し話しかけにくい。
今年初めて同じクラスになったが、ほとんど話したことがない。
鷹宮君、学校来るのこんな早くなかったと思うんだけど…
「おぉ!朔!おはよ〜、おまえ今日来るの早くね?」
「はよ、おまえに言われたくねえよ」
ははっと笑いながら席に着く。
『おい、おまえ鷹宮君と仲良いの…?』
できるだけ小声で瀬尾に聞く
「何でそんな小声なんだよ」
『いや、なんか、どうしても話しかけにくいっていうか、何というか?』
「そうか〜?あいつめっちゃいいやつだぞ、話しやすいし」
『無理だなあ』
「わかるよ、あっちはサッカー部で一軍。俺らは帰宅部の三軍。恐れ多いよな」
『そうなんだよ…』
「でも、朔はこんな奴らにも優しいやつだぞ、話しかけてみたら?」
『無理無理無理無理無理』
「なんだよそれ。」
『無理なもんは無理だよ…』
「いやでももう、2月だよ?もうすぐ2年生も終わるし、そろそろ話しかけてみたら?今結構チャンス。」
『なんて話しかけたらいいの』
「まずは挨拶からだな。おはよ〜って。はい、行け。早く行けよ!!」
『んだよ、びっくりしたあ…でっけえ声出すな!』
まあでも確かにまずは挨拶からだよね
『た、鷹宮君おはよう…』
「…おはよ。え?どうした…?」
何話しかけてきてんだよ、って言わんばかりの目。
『いや!ごめんなんでもない!!!』
逃げるように自分の席へ。
「お前、なんか挙動不審だったぞ」
『緊張したあ…』
「挨拶だけだろうが」
『まあでも、1歩前進だろ』
「確かにそうだけどさ、同級生に挨拶するだけであんななる?」
『やっぱり、イケメンって顔怖いよな』
「それは、分かる。」
気づいたら少し人が増えていた。あと10分で朝のHRが始まるというところで、鷹宮君と同じサッカー部の部員たちが登校してきた。
「あれ!?朔今日めっちゃ早くない?」
「え、ほんとだ。いねえと思った」
「今日なんか早起きしちゃったんだよね」
ふ〜ん、そういう事もあるか〜。と口々につぶやくとそれぞれの席に座った。
そうだよね?やっぱり鷹宮君、登校時間こんなに早くなかったよね。
…あのマドレーヌは、鷹宮君…?
いやいやまさか。たまたま早く来たんだろ。
俺だって、たまに早起きしちゃう時あるもん。うん。
ほとんど話したこと無かったんだから。
俺にマドレーヌを渡す理由ないし。
心当たりが無さすぎるマドレーヌ。
俺の靴箱に入れましたか?って皆に聞いて回る?
いやアホか。キモすぎるだろ。
ヒントは、【久我君へ】と書かれたこの紙だけ。
めちゃくちゃ字が綺麗だから、割と大ヒントな気がするんだよな〜…
キーンコーンカーンコーン
朝のHRの開始を知らせるチャイムがなった。
「はい、日直挨拶〜」
「きりーつ、礼!」
「おはようございます。早速ですが、皆さん、今月末は定期考査がありますよね」
急にざわざわしだす教室。
みんな忘れようとしてたみたいだな。
俺は勉強なんてしないし、テストがあろうとなかろうと生活は変わらない。
みんな偉いな〜
「今回の定期考査で、赤点をとった人は補講がありますので。皆さんしっかり勉強するように」
…それは聞いてない!!!!
やっべ〜…流石に勉強するか…
「おい、叶多、お前やばいんじゃないか」
『え、ばれた?マジでやばい…』
「まあ、俺は??なにも?問題ないけど?」
『悠真は、前回何個欠点とったんだよ』
「ぜろ〜」
『くっそ…』
「まああと1週間頑張ればどうにかなるって」
『はあ…どうしよ』
「あ、朔に教えて貰ったら?あいつマジで頭いいぞ。」
『無茶言うなよ…』
「おーーい!朔ーー!」
『おっ、おい!』
こいつ、自分のこと三軍とか言ってるけど、自己分析バグってるだろ。
俺から見たら十分カースト上位だっての。
自分の席でスマホを見ていた鷹宮君がゆっくりと立ち上がり近付いてくる
「なに?悠真」
おい、こいつらまじか。名前で呼びあってるじゃん。
めちゃくちゃ仲良いじゃん。
「こいつにさ、勉強教えてやってくんね?」
『いや、ちょ』
「…別にいいけど」
いいんだ…
「おいおい、まてまて、悠真君よ〜」
そういいながら近づいてきたのは、サッカー部の2人組。
確か…背が高くて茶髪っぽいのが、吉田君。背は少し低いけどサラサラ黒髪が今村君。
2人ともイケメンだよ、もちろん。
イケメンで明るい性格。何も敵わない…
「俺らも朔に教えて貰えないと補講確定なんだよ」
「そうだよ、吉田は!ほんとに頭悪いんだから」
「いやまて、こんなこと言ってる今村も補講組最有力だから」
「じゃあ、皆でする?」
「おぉ、朔、ナイスアイデア」
俺は、この陽キャ達に混じって、テスト勉強するらしいです。
絶対に集中できない気がする。
緊張が勝ってしまう気がする。
「じゃあ、とりあえず明日の放課後からで。叶多のこと頼みました。」
「頼まれました。」
「え、じゃあさ、悠真は俺らに教えてくんね?」
「おぉまかせろ、今村と吉田。責任は取れないけどね」
『あ、でも…皆部活…は』
「テスト前1週間は部活休みになるんだよね」
そっか、そうだよね。
ただ、ちょっと待ってくれ
この流れ、俺と鷹宮君マンツーマンじゃん
まずい。
一言も話せる気がしません。
とりあえず、明日か…
緊張して寝れない予感。
________
キーンコーンカーンコーン
ついに来てしまったこの時が。
『ねえ、悠真。今日ほんとにやるのかな…』
「やるに決まってるだろ」
ですよね。
そりゃそうですよね。知ってました。
とりあえず皆で机を動かして、向かいあわせになるようにした。
教えやすいように、悠真は、吉田君と今村君の間。
俺と鷹宮君が隣の席になった。
近い…隣の席ってこんな近く感じるもんだっけ…
「何かわからないことある?」
『正直に言うと、全部、分かりません…』
「嘘でしょ」
『そんな笑わなくてもいいじゃん』
「ごめんごめん」
めちゃくちゃ笑ってくれる。
尚更、昨日の朝は何故あんなに冷たい目だったのか理由が気になってしまう。
「じゃあ、とりあえずここからね」
と、細かく1から教えてくれる。
凄く分かりやすくて、集中して聞くことができた。
『うわあ…なるほどね!めちゃくちゃ分かりやすい…』
「ほんと?ありがとう」
『でもこのやり方、明日になったら忘れてそう』
「え〜…じゃあ、これのやり方簡単にメモにまとめようか」
『ほんとに!?めちゃくちゃ助かる』
鷹宮君は、ノートの1ページをわざわざ破って書いてくれた。
ん…?
『鷹宮君、めちゃくちゃ字綺麗なんだね』
「あっ、うん、」
『違ってたらごめんね、昨日さ』「え、てか!」
吉田君に遮られた。
「君付けって、なんか距離感ない?久我君って呼ぶのもなんだし、叶多って呼んでもいい?」
『あ、それは全然。』
「じゃあ俺も叶多って呼ぼ〜。俺らの事も、隼人、洸希って呼んでよ。」
「え、俺は?」
「あ、あと朔。」
『分かった。努力します。』
「じゃあ俺も下の名前で呼んでいいってこと?!」
「仕方がない、悠真もいいぞ」
「仕方がないってなんだよ」
目の前に紙が差し出された。
「はい、これメモ。家での復習に使って」
『あ、ありがとう、朔…』
「…どういたしまして」
間があった気がする。
確かに名前呼びって中々なれない。違和感あるな。
もらったメモを見る。
やっぱり字が綺麗だ。
昨日の字に似てる気もする。
勇気を出して聞こうとしたのに、タイミングを逃してしまった。
いや〜、でももしこれでほんとに朔が送り主だったとしても、理由は?
ほとんど関わり無かったし。
うーーーん…
「叶多〜、叶多!!」
『うわっ!びっくりした〜』
「集中して、まだ全然範囲終わってないよ」
『はい、すみません』
結構スパルタらしい
これを1週間続けたら、まじで頭良くなる気がする。
マドレーヌのこと気にしてる暇はなさそう
とりあえず1週間は、勉強に集中することにする。
まじで、補習嫌だからね!!
仲良くなれそうだし、バレンタインのこと聞く機会はいっぱいあるでしょ。
__________
『やばい、緊張してきた』
今日はついにテスト当日。
起きてから緊張が止まらない。
「叶多大丈夫か?」
『あ、朔おはよう。』
1週間もあれば名前呼びにも慣れてきた。
「もしかして、テスト緊張してる?」
『だって、ここまでしっかり勉強してテスト挑むの初めてなんだよ』
「大丈夫だって、めっちゃ頑張ってたじゃん」
『これで欠点とったら、朔にも申し訳ないし…』
1週間すごく丁寧に教えてくれた。
自分の勉強する時間は取れたんだろうか。
『朔は勉強できた?俺ばっかりに教えてくれて。ごめん、時間取れなかったよね』
「大丈夫だよ、人に教えると自分にも身につくから、むしろありがたかった」
こいつは、人間として出来すぎてる
この顔で性格までいいんだもんなぁ…
「?なに?なんかついてる?」
『あっ!い、いやなんもついてない、ごめん』
「うん?」
だめだ、顔を見つめすぎてたらしい。
テストに集中!!!!
とりあえず、テストが始まる直前まで、朔が作ってくれたメモだけでも見返そう。
_______
「はい、そしたらはじめてくださ〜い」
俺の気合いとは裏腹に、力のこもってない先生の合図でテストが始まった。
テスト用紙をめくると、ずらっと問題が並んでいる。
いつもなら、読まずに飛ばす問題文も1文字も逃すまいとしっかり読む。
…分かる
これも分かる…
めちゃくちゃ分かる…
あ、これ朔が教えてくれたやり方で解ける
朔が出ると思うって予想してたところだ
朔、この問題苦手って言ってたけど大丈夫かな、
うわ〜、朔これ得意って言ってた…いやまて。
朔、朔、朔、朔
俺ずっっと朔のこと考えてないか?
う〜ん、まあでも1週間まじでスパルタ朔先生にみっちり教えられたからな。
そうなっても仕方ない。
朔にいい結果報告できるように、頑張らないと。
_________
キーンコーンカーンコーン
5日に及ぶ定期考査が終了した
正直、めちゃくちゃ手応えある。
こんなにしっかり問題読んで考えて、理解して解いて…
勉強って、楽しいのかもって思えた
『あ、朔!』
「叶多、どうだった…?」
『めっっっちゃ手応えあるんだよね』
「まじで?良かったあ」
そういって心から安心した顔をした朔。
そんなに俺のことを心配してくれてたのかと思うと、なんだかむず痒いような気持ちになった。
『朔のおかげだよ、本当にありがとう。テスト中もさ〜、なんか隙があればずっと朔のこと考えてたんだよね』
「…え?」
『あ、え、?いや、まって、変な意味じゃないからね!ここ、朔が教えてくれたな〜とかそういうやつ!』
「なんだ、そういう事か」
『うん、ごめん変な言い方して』
「別に全然気にしてない」
…なんだ?
なんだって言った?
俺が朔のこと考えてたことが嬉しかったってこと?
いや、嬉しくなくとも嫌ではなかったってこと…?
「お〜い、朔!叶多!」
この声は、洸希だ。
「お前らどうだった?」
隣には隼人もいる。
2人の顔からは、ありえないくらいの達成感が伝わってくる。
うん、手応えあるんだね、良かったな。
『正直めちゃくちゃ手応えあるんだよね』
「え、俺らも!」
「お、じゃあさ、みんな欠点なしだったら、飯行こうぜ」
「おい、悠真たまにはいいこと言うじゃねえか」
「たまにはってなんだよ」
「叶多はどこか行きたいところあるの?」
『う〜ん、どうだろ。朔は?』
「俺めっちゃ焼肉食いたい」
『うわ!あり!』
「じゃあ焼肉にすっか」
「ありあり〜」
「とりま今日は帰って寝ようぜ」
「そうだな、来週のテスト返し楽しみ〜」
確かに楽しみだ。
朔に、いい報告ができる気がする。
神様お願いします!欠点がありませんように!!
________
「はい、じゃあテスト返しはじめるよ〜」
まずは数学。自慢ではないけど、俺は数学で欠点を取らなかったことがない。
「はい、久我〜」
恐る恐る先生の元へ向かう。
「どうした、お前が欠点じゃないの初めて見たぞ」
えっ…!!!!
奇跡の数学欠点回避!!!!
正直数学を乗り越えれば100パーセント欠点無いんじゃないか、と思うほど俺は数学が苦手だ。
朔の方にテスト用紙を見せる。
嬉しそうに笑ってくれた。
なにかお礼しないとな〜、何がいいかな〜
正直俺にできることならなんでもしてしてあげたいくらい。
お礼何がいいか、本人に聞こっと。
___________
今日で全てのテストが返却される
次が最後の一教科だ。
俺はここまで欠点を取っていない。
正直この時点で、この上ないくらいの快挙なんだけどね。
しかも最後の教科は副教科だ。
さすがに欠点ではない!と信じたい!
「はい、久我君〜」
そう言って渡された答案用紙。
この点数で全てが決まる
恐る恐る裏返す。
点数は
63点
この学校は40点からが欠点だ。
俺は、欠点を取らなかった。
全ては朔のお陰。
ありがてえ〜〜!!!!
『お〜い、朔〜』
「あっ、どうだった…?」
『じゃーん、63点!』
「てことは、」
『そうです!欠点なし!!!』
「凄いじゃん」
そういって、俺の頭を撫でた。
『えっ…』
「あ、ごめん!!」
そういうと、飛び跳ねるように俺から離れた。
そこまでしなくても…
『いや、全然大丈夫。ちょっと驚いただけ』
なんなら、ちょっと心地よかったし。
人間って、頭とか髪の毛触られるの、なんたら神経のお陰で落ち着くって聞いたことある。
「うん、ごめん」
めちゃくちゃ気まずい空気が流れる。
「おーい、叶多!!お前どうだったんだよ!」
『あら、悠真君じゃないですか』
「え、まさか」
『ご察しの通り、欠点なしでございます』
「すげぇ!!あのな、俺も隼人も洸希も欠点なし!」
「俺ももちろんないです」
『となると…?』
「焼肉!!!!!」
みんなで焼肉…!
めちゃくちゃ楽しそう。
あ、そうだ
『ねぇ、朔。』
「なに?」
『俺、朔のおかげで補講無しで済んだから何かお返ししたいんだけど』
「おかえし…」
『そう、お礼にね。焼肉奢らせてよ』
「いいよ、いいよ、俺も楽しかったし気にしないで」
『いや、何かしないと俺の気が済まない』
「ん〜、でも奢って貰うのはちょっと申し訳ないから」
『じゃあ何がいい?なんでもいいよ?』
「なんでもいいの?」
『俺にできることだったら!』
じゃあ…
とやけに次の言葉をためる朔。
「俺とデートして?」
『でっ!?』
デート!?デートってあの男女がふたりでイチャコラしながら過ごす、あのデート??
「うん、デート」
そうやってにっこり微笑む朔。
どういう状況だこれ。
「とりあえず、日程は連絡するね。俺の部活が休みの日になると思う」
『わ、分かった。』
何が 分かった だよ。
何も分かってないだろ。
どういうつもりで言ったんだ。
でも、もしあのマドレーヌが朔からだとしたら、辻褄は合う
ん〜〜。とりあえず、デー…ふたりで遊びに行く日に聞いてみようかな
_________
ピロン
《テスト勉強グル》
あの5人のグループだ。
内容は焼肉の日程決め。
どうやらサッカー部は、毎週金曜日がオフらしい。
焼肉は3月7日金曜日の放課後に行くことになった。
ピロン
《鷹宮 朔》
朔からもメッセージが来た。
グループと同じく内容は日程決めだが、
問題は2人で遊ぶということ。
〈焼肉の次の週、14日の金曜日とかどう?〉
《いいね!空いてるよ》
〈じゃあ、その日の放課後ね。俺見たい映画あるんだけど〉
《あり。映画にしよ。》
〈決まり、楽しみにしてる〉
《うん、俺も楽しみ》
なんか、付き合いたてのカップルみたいでちょっと照れる。
…俺は何を考えてるんだ。
何がカップルだ。
恥ずかしすぎるだろ!!!!
俺は枕に顔を埋めて、恥ずかしさを紛らわせるように叫んだ。
_________
「よっしゃー!!!焼肉ぅ!!!」
『隼人、うるさいぞ』
「ごめーん」
俺は、隼人を注意したが、内心楽しみでたまらなかった。
肉が食える〜!肉だ〜!
「あ、てか席どうする?」
「おれ悠真の隣〜」
隼人が一番奥に座り、その横に悠真。
じゃあ俺も先生に肉焼きまくるわ〜といって、洸希はその隣に座った。
てことは…
「じゃ、また隣よろしくね」
『あ、うん…』
ですよね。
「よおし、食うぞ!」
「先生、どうぞ!食ってください!」
「苦しゅうない」
なんかこの3人芸人みたいだな。
『あ、朔も食って食って』
「ありがとう」
俺も食おう。
うんまあ〜〜〜。
タレとご飯ってなんでこんな合うんだろ。
先人達天才すぎるだろ。
「あ、」
『ん?』
「ついてるよ」
そういって、朔は俺の口元を拭った
「みて、ご飯粒」
『うわ、まじか。ごめんありがとう』
と言って、前を向き直すとあまりにもにやけている3人が
「アツアツだなあ」
「ラブラブですなあ」
「イチャイチャするなよお」
『やめろ』
といって、隣の朔を見るとなぜか満更でもなさそうな表情だった。
『なんで満更でも無さそうなんだよ』
「あれ、ほんと?」
自覚なしでした。
「そんな顔してた?」
『なんかね、デレっとしてたよ』
「…」
朔は頭を抱えてしまった
『頭抱えてないで食え』
「食います」
___
「食いすぎた…」
と、悠真がうなだれる。
そりゃそうだ。
隼人、洸希がありえないペースでお前の皿に肉盛ってたもんな
よく食いきれたわ。
「大満足」
『そうだね、まじでお腹いっぱい』
「叶多は、駅だよね?」
『そだね、俺と悠真は駅』
「ちょっと暗くなってきたけど、帰れる?」
『帰れるよ、何歳だと思ってるの』
過保護の親かよ
なんなら俺の親でも言わない。
「おーーい!叶多!帰るぞ〜」
『はいはい〜』
こっからちょっと遠いの憂鬱。
今すぐにでも寝てしまいたい。
「じゃあまたあした!」
「明日学校休みだろ」
「そうだった!バイバイ」
「お疲れ様〜」
「ばーいばーい!」
『お疲れ〜』
寝み〜と思いながら駅までの道を歩く
「美味かったな」
『それな、久々食ったわ』
分かる〜とか、あまりにも中身のない会話をしながらダラダラ進んでいた
「てかさ、マジで予想だよ?」
『うん?』
「あのマドレーヌさ、あいつじゃね?朔」
『…やっぱり?』
「お前も感じてた?」
『いや、うん、まあ』
悠真は意外と鋭い
「だって、なんも意識してない相手に急にデートとか言うか?」
『いや、言わないと思います。てか聞こえてたんだ』
「当たり前だろ、俺目の前にいたぞ」
確かに
今気づいた。急に飛び出したデートという言葉に気を取られすぎてた。
そういえば、あの時目の前にこいついたわ。
「で、デートはいつなの?」
『来週の今頃には行われています』
「その時に聞けよ」
『俺もそのつもり』
「お前聞けんの?」
『怪しいっすね』
挨拶もろくにできないような俺が聞けるのか
自分でも気になるところ
「でも、もし、本当に朔だったとしてどうする?」
『え〜…いや、お返ししないとでしょ。丁度ホワイトデーだし』
「確かにそうなんだけど」
『うん』
「本命…なんじゃねえの?」
ほん、めい…
"本命"
いやいやいや、まさか!!
今の時代、友チョコとか?あるし?
義理チョコとか?なんかいろいろ?あるし?
本命って、本命って!!ないないない。
「怖いって。1人で暴れるな」
『お前が怖いこと言うからだろ』
「いやいや、あくまでも予想ね?」
そうだよね、そうだよ。
まだ本命だと決まったわけじゃない。
「まあ、とりあえず来週 デート のあと聞かせろよ。どうだったか」
やけに、デートの3文字を誇張してくる。
『はいはい。デート のあとしっかり報告しますう〜』
その後、電車に乗り家に帰りつくまでは一切朔の話は出ず、いつもの俺らみたいなしょうもない話で盛り上がった。
「じゃ、また月曜な〜」
『おー。おやすみ〜』
そう言って解散した。
やはり、1人になるとあまり良くないみたいだ。
今日の恥ずかしかったことが脳裏に蘇ってくる。
クラスのイケメンに顔に着いたご飯粒を拭ってもらう。
いや、少女漫画かよ。
しかも結構、古めの展開じゃねえかよ。
本当は叫び出したいくらい恥ずかしかったが、さすがに住宅街で叫ぶ訳にもいかなかったため、とりあえず全力疾走で家に帰ってみた。
だいぶスッキリしました。

